9.防護服
ユージーンが持ち上げたのは彼が来ているのと同じような白のユニフォームのような上下だった。ゆったりとして楽そうではあるが、防護機能があるのだろうか?と望が首をかしげた。
「これはナノファイバーによる衣服ですが、従来型とは違い、LCとの連携で自由に外観が変えられるだけでなく、かなりの攻撃に耐えられるような強度になっております」
「かなりの攻撃とは?」ミチルが身を乗り出した。
「試してご覧になりますか?」
「ええ、宜しければ」
「では、全力で私を攻撃してみてください」
「全力で?本当に宜しいの?」ミチルがにっこりと笑って聞いた。ああ怖い。思わずリーと顔を見合わせて止めようと口を開きかけるが、すでにミチルの腕が上がり、ユージーンのみぞおちを突いていた。
「うっ」と声をあげたのはリーだった。いつもやられているからね。
ユージーンは何も感じないかのように立っていた。突きを放ったミチルは、不思議そうな表情である。
「固くはないのね。まるで衝撃をすべて吸収しているようね」
「その通りです。では、これで、撃ってみてください。強度は最大で構いませんよ」そう言ってこんどはリーにレーザーガンを手渡した。
「最大?本当にいいのか?」リーは楽しそうにレーザーガンをいじりながらユージーンに念を押す。
「どうぞ」ユージーンが自信たっぷりに答えた。
「では遠慮なく」いうが早いかリーが撃った。全くためらいがない。
リーの狙ったのは肩のあたりだったが、命中した部分がかすかに赤くなっただけで、すぐに元の色に戻った。ユージーンは全く何も感じていないようだ。
「エネルギーが吸収された?」プリンスが呟いた。
「はい、物理的衝撃と、レザーガンなどの熱線、双方に対応できる防護服と言えます。材質はご覧のように一見普通の布地ですので、色やデザインは自由に変えられます。ユニフォーム、スポーツウエアなど普段の使用に不自然でないようにご用意できます」