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7.望の決断

望はスコーンを皿にとって、目の前に置いてあるバターをたっぷりつけ、ほおばった。


「やっぱり美味しい!」この家で出た食事はすべて美味しかったが、特に乳製品を使ったパンやバターが凄く美味しくて、家で食べるパンではどうにも満足できなくなっていた。


「本当に香りも味わいも違いますね」プリンスも小さなクロワッサンにバターをたっぷり乗せてを食べながら同意した。 リーは食べるのに忙しくて、親指を立てて同意を示している。結構な量があったトレーの半分以上が空になっている。殆どリーのお腹に収まったようだ。


「果物も、香りが連邦のとは全く違うわね」ミチルが小さく切り分けられたマンゴーを味わってから同意した。


「それに、あの絵は、本物ですよね?」プリンスがハチに聞いた。


「はい、こちらに飾られた絵画はすべてオリジナルでございます」


「それは凄いですね。オリアリ―の本物なんて美術館でも見たことがないです」プリンスが、緑と紫が微妙に配置され、森のようにも、海底のようにも見える絵を見ながら言った。


「オリアリ―? 本当だ。あの色使い。これがオリジナルなの?」こんなとこに陳列しておいていいのだろうか。


「この部屋は、完璧な温度、湿度管理がされており、通常は使用されません。マスターウォルターは、考え事をするのに良い部屋だ、とおっしゃっていました」


そう言われてみれば、絵画のテーマはどこか懐かしいような自然が多く、多分とんでもない価値があるのだろうとは思うが、そんな俗っぽいことさえ考えなければ、心が癒されるような空間だった。


しばらくそれらの絵を眺めていた望が、仲間の方を向いて、頭を下げた。


「みんな、僕のせいで危険な目に合わせることになってごめん」


「何をいまさら」とミチルがぼやいた。


「それじゃ、望、決めたんだね?」プリンスが確認するように問いかけた。リーは最後のサンドイッチを詰め込んでいる。


「うん、僕にはまだ全く先行きも、何をするべきかもわからないけれど、マックが世界の均衡を保つために頑張って来た、ということだけはわかった。僕には、それをどこかに売り渡して、彼が守ってきたこの世界を危険にさらすことはできないよ。例え、自分やみんなの安全のためでも。彼は僕に今まで彼がやってきたことを引き継いで欲しいわけじゃない、と言っていた。そんなこと、僕にはできないしね。マックは、僕の思うようにやって欲しい、そう言い残したんだ。マックの言葉には、僕だけじゃなくてみんなも含まれていた。マックは、僕たちみんなにこの遺産を残したんだと思う。僕は、もし君達さえよければみんなで一緒に考えて、僕たちの良いと思うやり方でマックの遺産を引き継いで行きたい。危険は避けられないけれど、ハチが言うにはここの研究室には防衛のための道具もあるらしいから、それも後で見に行こう」


「ここの研究室?」慌ててサンドイッチを飲み込んだリーが、のどを詰まらせかけて紅茶で流し込んだ。


「もう、一体いくつになったのよ」ミチルが呆れたように咎めた。


「だってこの前見せてもらった研究室には便利ガジェットばかりだったから、防衛関係があるということは、もっと地下の研究室に行けるってことだろ?」


「もっと地下?」望は地下8階までだと思っていた。


「ああ、屋敷の探検をしたときにもっと地下に行けるエレベーターがあるのを見つけたんだ。セキュリティもかかってたし、流石に勝手に見に行ったりはしてないよ」


「してない、じゃなくて、できなかった、の間違いでしょ」ミチルが鋭く突っ込んだ。望のしらないところで、何をしてたんだ、リー。


「ハチ、この家は地下何階まであるの?」


「格納庫まで含めますと、地下25階までございます」


「「25階!」」プリンスも驚いているところをみると、知らなかったようだ。ミチルとリーはどうやら知っていたらしい。 









小説中に出てくる名前はすべて架空の名前です。

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