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3.マックからのメッセージ

「まず、最初に謝っておこう。まだ学生の君にこのような重い荷物を負わせてしまったことに。言い訳をさせてもらうと、最初はそんなつもりはなかったんだ。君たちと話したように、私には、まだこの地球でやり残したことがあり、わずかながら、私という存在が人類の未来に意義がある、と思っていた。しかし、君のホロイメージであの樹を見た時、どうしようもなく惹かれた。もうこちらの世界にそれほどの興味を持てなくなってしまった。私は、わがままな人間だ。自分のやりたいようにしかできない。それでも、君に会うまでは、まだ迷っていた。もう少しここで為すべきことをしてから、とも思っていた、しかし、君や、君の友達と会い、意見を交わしてみて、思ったのさ。自分はもうお役御免ではないか、とね。ここに自分が必要だ、などというのは、とんだ思い上がりで、とっくに”老害”になっていたのではないか、とね。


 君達のおかげで、私は心置きなく次の冒険へと旅立てる。君達が、この世界の未来をより良い方向に導いてくれると信じて。


 望、私は君に私のやってきたことを引き継いで欲しいわけでは決して、ない。君は、君の思うように進んで欲しい。私の知識はこのLCにすべて搭載してある。疑問があったら訊くと言い。シミュレーションを使い、幾つかの状況を想定し、念のために私からのアドバイスを入れておいたが、必要がなければ、聞くこともないだろう。

 望、私は今、心から幸せだ。こんな胸の躍るような興奮は200年ぶりだよ。君のおかげだ。本当に有難う。私達は繋がっている。非科学的だと笑われるだろうが、いつかまた君と、会えるような気がする。だからさよならは言わない。健闘を、祈る」


マックは満足そうに笑い、イメージが消えた。最後の笑顔は若々しくて、マザーの世界で出会った父さんのようだった。


「僕の思うようにって、マックったら」深いため息をつきながら、慰めるように膝に乗って来たゴーストを撫ぜる。ゴーストのつやつやした毛皮に顔を埋めつぶやいた。


「僕は、何をしたらいいんだろう」


「どの件についての問いでしょうか」


「ハチ、今のは質問ではないよ」


「なるほど。レトリカルクエスチョンでございますね。大変、失礼いたしました」


「構わないよ。マックの他のメッセージはまだプレイできないんだね?」


「はい、まだ条件が整っておりません」


「じゃハチ、君は僕がまず何をしたらいいと思う?」


「私は”思う”ことはございませんが、望様の目的をおっしゃっていただければ、データを元に最良と”思われる”方法を計算することはできます」


(その目的がわからないから困っているんじゃないか)と表層意識に出さない部分でぼやいた。それを読んだのか、わからなかったのか、ハチは沈黙している。


「そうだな。まずどうしたら安全に過ごせるか。ただし、何もかもを政府に譲る、とかはしたくない。僕は、考える時間が欲しい。知らないことが多すぎて、マックの望んだことも良くわからないし、何が正しいかもはっきりしない。いろんなことを学ぶ時間が必要だと思うけど、おじい様が言うように、このままでは危険だ、というのもわかってる。僕だけではなく、僕の周りの人達にも危険が及ぶかもしれないし。みんなの安全を守りながら、考える時間が欲しいんだ」


「現在、最良と思われる行動は、望様の希望と、不安を、ご友人の3名と話し合うことです。なお、安全については、望様の研究室に幾つか相応しいアイテムがございますので、なるべく早くご覧になることをお勧めいたします」瞬時にハチが答えた。


「僕の研究室? 僕研究室なんて持ってないけど...あぁ、マックの家の地下にあるやつ?」


「はい。現在すべては望様のものです」


「そうか。どっちみちマックの家には行ってみるつもりだったんだ。君の言うように、皆に相談してみるのが一番だね。よし、皆で行けるか、聞いてみるよ。アドバイスを有難う」とりあえず方針が決まって、少し気持ちが軽くなった。


「私の役目です。感謝は必要ございません」


「そんなこと言わないの。有難う、と言われたら、どういたしまして、と言えばいいんだよ」


「了解いたしました」

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