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248.地球外生物のようです

「やっときたか」赤井教授はそう言うと望の腕を掴んで歩き出した。


 大事をとれとミチルとプリンスに言われて、目が覚めてから更に3日間休んだ望は漸く登校を許され、キャンパスにやってきたが、校舎に入った途端赤井教授に捕まってしまった。あまりの早業にミチルが望を取り戻す前に研究室に引っ張り込まれた。


「休んで申し訳ありません」望はとりあえず授業を休んだことを謝った。


「そんなことはどうでもいい。それよりニュースは本当なのか?どうやったのだ?」 矢継ぎ早の質問を、仕方なく後ろからついてきたプリンスが手を上げて止めた。どうやらアルハンの件を聞いたらしい。


「赤井先生、その件は連邦政府との間で機密事項となっておりますので、質問はご容赦願います」プリンスがいかにも政府に機密を守るように要請されたかのように言った。正確には政府にも秘密を明かさないという許可を貰ったわけだが、言っていることは嘘ではないので、それを他人がどう解釈してもしょうがない。


「オルロフ君、君は別に来なくていいよ。早く教室へ行き給え。急がないと授業に遅れるぞ」 うるさそうにプリンスを見た教授がそう言ってドアを指さした。


「教授、僕も授業があるのですが?」望がそう言ってそっとドアを目指そうとした。


「君は良いよ。私の研究助手として登録してあるから私の研究の手伝いをしている時間は出席になるからね」


「研究助手?僕まだ一年ですし、研究のお手伝いはしましたが、助手なんて無理ではないでしょうか?」お手伝いと言ったって殆ど血を取られただけだし、助手と言うよりどう見ても実験動物扱いではないだろうか。望がそう抗議の声を上げるが、教授には完全に無視された。


「アカについていくらかわかったこともあるし、それについての報告もしたいんだ。君だって知りたいだろう?」 気を引くように言う教授に望の興味が惹かれた。


「アカについて何かわかりましたか?」 プリンスも興味を惹かれたらしい。


「おや、オルロフ君、まだいたの?」教授はプリンスとミチルがまだいたのに初めて気が付いた素振りをした。


「教授、アカの研究についてはグリーンフューチャーとして研究資金を提供していますので、何か進展がありましたら私にも知る権利がありますので」プリンスが幾分強いな口調で言った。


「そうだったね。じゃあ君達も一緒に来たまえ。ただし、授業が出席になるのは天宮君だけだからね」 教授は仕方なさそうにそう言って望の腕を掴んだまま研究室の奥へと向かった。プリンスとミチルは顔を見合わせて苦笑いすると後に続いた。


一ダースほどのホロスクリーンが展開された一角で立ち止まった教授は望の腕を放した。そこには見慣れたDNAの構図が描かれていた。


「アカのDNA分析の結果からどの種に近いか特定しようとしていたのだが」教授はそう言って幾つかのスクリーンを指し示した。


「現存の木、記録にある古代の木、すべてと比較した。更に他の植物と比較し、最後には他の生物と比較した。結論から言うと、どの種にも属していないし、近い種もなかった」


「というと、どういうことでしょうか?アカが新種の木だというのは間違いないと思っていますが」今更新しい種類だと言われても驚けない。


「どの種にも属していない、と言ったんだよ。地球上で生まれたものであればどこかの時点まで遡れば共通の祖先があり、どの体系に属するかわかるはずだ。15億年も遡れば人とその辺の草も同じ祖先を持っている。しかし、アカはどこまでいってもどの生物とも共通祖先を見つけられなかった。つまりアカは少なくとも現在発見されている植物とは祖先を共有していない」


「ということは地球で生まれた生物ではない、と?」 プリンスが確認するように訊いた。


「まあ、そういうことになるかな。そのほかの仮説もあるが、ちょっと確率が低すぎて現実的とは言えない」


「そうですか」 どこかでやはり、という気持ちがあった。


「おや、天宮君は驚かないね?わかってたのか?」赤井教授が訝しむように望を見た。


「いえ、驚いてます」 望は慌てて言い返した。


「どうだかね。まあ、それは良い。こちらの報告は終わったから、そちらの報告を聞こうじゃないか」 教授はそう言うと獲物を前にした猛獣のような目付きで望を見た。




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