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239. 侵入者

『望様、侵入者です』 ぐっすり眠っていた望の頭の中にハチの声が響いた。びっくりして目を開けると、目の前にハチがいたが、いつもの執事姿ではなく、何故か黒の戦闘服のようなものを着ている。ハチはホロイメージだからそんな恰好をしても実際に戦闘できるはずはないんだけど、とぼんやり考えた。


「ハチ、どうしたの?侵入者?」 ハチの姿に驚いたが、すぐに侵入者、という言葉が頭に入ってきて慌てて飛び起きた。


「セキュリティには連絡した?」手近にあった服を着ながら訊いた。


「はい、現在セキュリティに捕獲のため見張らせています。ミラー隊長、プリンス、ミチル様には連絡済みです」 ハチが言い終わるより前にミチルが部屋に入ってきた。ハチの格好を見て、一瞬ぎょっとしたが何も言わずに望を見た。


「今ハチから聞いたよ。また侵入者だって?」 防御服にもなっている黒いユニフォームを着終わってミチルに訊くとミチルが頷いた。何だか機嫌が良い。


「そうよ。今何をするか見張らせてるのよ。それが終わってから捕まえるわ」


「そんなこと言って、機密を盗まれたらその後で捕まえてもダメなんじゃない?」 一度内部に入れてデータを盗まれたら侵入者を捕まえても被害が出るだろう。


「対策済みだから大丈夫よ。ハチとプリンスが望の安全を確保しろって言うから、迎えに来たのよ。望は念のためにセーフルームで見ていて頂戴」


「セーフルームで?それ程危ないわけ?」望もここにセーフルームがあることは知っていたが、使うことなどないと思っていた。


「私はそうは思わないけど、相手の人数も多いし、みんな望には過保護だからしょうがないわ」ミチルは肩をすくめると、望を急き立てた。 望はカリの鉢を掴むと慌ててミチルの後に続いた。




『お母さん、悪いやつ?』 セーフルームの中で望が研究所の入り口を開けようとしている侵入者の様子をスクリーンで見ていると隣にいたカリが訊いた。


「そうだね。黙って入ってくるんだから悪い人だろうね」スクリーンに気を取られて上の空で望が答えた。


『お母さん、カリが悪い人やっつけてあげる』 何か考えていたカリがそう言った。


「おチビちゃんに何ができるのかしら」 カリの自信あり気な言葉に後ろにいたミチルが鼻で笑った。


『カリはミチルより強い。ミチルは悪い人、カリはミチルをやっつける』


「なんで私が悪い人になるわけ?それにカリが私より強いわけないじゃない」スクリーンから目を離さずにミチルが言った。


『黙って入って来るのは悪い人。ミチルはいつも黙って入って来るから悪い人』 カリが勝ち誇ったように言った。ミチルは一瞬言葉に詰まったが、スクリーンの侵入者がドアを開けたのを見ると部屋の出口へ向かった。


「カリじゃああの悪い人達を捕まえることはできないでしょうから私が行ってくるわ。あなた達はここで大人しくしていてね。私が迎えに来るまで絶対に外に出ては駄目よ」

 ミチルはカリを馬鹿にするように見てから、怖い顔で望に念を押して、慌てたように部屋を出て行った。多分戦闘のチャンスを逃したくないに違いない。ミチルは絶対に生まれる時代を間違えたよね。


『お母さん、カリも悪い人捕まえられるの』 ミチルに言われた言葉が気に触ったのか、カリが怒っている。カリは生まれる種族を間違えたのかも、と望は思った。


 侵入者は全部で7人いた。前回は人型ではないロボットが含まれていたが、今回はすべて人型で、動きを見る限りアンドロイドなのか人間なのかはっきりわからなかった。全員光を吸収するような黒の上下を着て、頭と顔を覆っており、影に入られると目を凝らさないと見えない。入り口をどうやったのか開け、地下の研究室へのエレベーターに迷わず乗った一行はリトリート内の異次元研究所ではなく、その下の植物研究所で降りた。植物研究所を囲む果樹園に思わず足を止めそうになった者が二人いたが、残りがまっすぐ研究所に向かったので慌ててあとを追いかけた。もしかしたら二人は人間だろうか、と望は思った。


 「部屋に入ったじゃないか」 侵入者達は2名を外に残して研究所の中に入って行った。研究室のメインコンピュータールームに侵入し、一番背の低い黒服が操作を始めた。情報を何処かに送っているに違いない。本当に大丈夫なのだろうか。望が心配になって立ち上がった時、スクリーンの中の部屋に明かりがついた。驚いて立ち尽くす5人は既に数人のセキュリティチームと横長のセキュリティロボットに包囲されていた。4人は抵抗しようとしたが、戦力の差は明らかで、すぐに床にくずおれた。背の低い黒服は抵抗しなかった。マスクを剥がされたが、満足そうに微笑んでいた。侵入の目的は果たしたと言わんばかりである。どうやら女性らしいな、と思って見ているとミチルが部屋に入ってきて、セキュリティチーフのジェイソンに外の二人の無力化を報告した。別のスクリーンにミチルにやられて床に転がっている2体のアンドロイドがいた。


「カリの助けがなくても大丈夫だったみたいだよ」 望がそう言うとカリが不満そうに葉を揺らした。






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