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225. 楽園?

「赤井教授からの報告によると天宮君の何かがトリガーになったのは間違いない、とのことです。教授は現在その何か、を特定しようとしていますが、まだ結論には至っていないようです」 皆の視線を肯定するように言ってから、所長が望を見た。


「天宮君はこの件について何か考察がありますか?」


「残念ながらトリガーについては全く見当もつきません。僕は少し植物、特に木との相性が良いので、あの種も他の木と同じ様にすぐ発芽しました、特に他と変わっている感じは受けませんでした」 隣でミチルが(少し?)と呟いていたが無視した。


「それではこの件は赤井教授の研究結果待ちということですね。場合によっては駆除も考慮することになるかもしれません」 所長の言葉に望はぎょっとしたが、何も言わなかった。



 会議の後、望は部屋で夏休みに仕上げる予定の研究論文に取り組むから今日はでかけない、と言ってミチルと別れた。しばらく論文に集中しようとしたが、思うように捗らず、こっそりカリと一緒に地下に向かった。リトリートのコントロールルームに入った望は、ヘッドギアを装着すると、今朝見た夢を思い出しながら目を閉じた。


 「望、ここにいたのですね。姿が見えないから心配しました」 プリンスの柔らかい声に、望は目を開けた。


 「望、今日は部屋にいるって言ってたくせにこんなところで寝てるなんて」 プリンスと一緒に来たらしいミチルが文句を言った。


 「寝てないよ。忘れないうちに記録しておこうと思っただけだよ」 


 「記録?」 プリンスが首を傾げた。


 「今朝すごくリアルな夢を見たので...」


 「どんな夢だったのですか?」 プリンスは興味を惹かれたらしい。


 「うまく再現できてるかどうかわからないけど、見てみる?」 望の問いにプリンスが頷いた。


 望は作ったばかりのプログラムをオンにしてから、2人を連れてリトリートへ入った。


 「何これ?嵐?」 中はひどい嵐で見通しが悪かった。風の音がひどく、横殴りの雨が降っていた。もっとも、望達は全く濡れないし、風も感じなかった。嵐の中を何事もなく進むのは不思議な感じだった。


 「ホロイメージの設定しかしていないから、触ったりできないんだ」 


 「この景色ですと、その方が有難いですよ」 


 話しながら進んで行くとそこが小さな島だと言うことがわかった。大波が海岸から陸地の方へと襲っている。海岸には赤や黄色の木が島を囲むように立っていたが今はどの木も根元の上まで海に浸かり、強い風で幹は大きく撓っていた。よく見るとその木々の上には小さな動物達が必死にしがみついていた。ずぶ濡れの動物を助けようとしている人間の姿も見えた。しかしやってきた大波に腕に抱いた動物ごと攫われて行く。思わず手を伸ばそうとした瞬間、海の中から大きな影が現れた。タコのようにも見えるその動物は2本の長い腕に人間と、小さな動物を抱えて、そっと陸の上に置くと、海の中に消えて行った。そんなことを数回繰り返すうちに風が弱くなり、辺りが明るくなってきた。


 「地球、じゃないわね?」 薄い紫色の空に見える3つの白い月を見て、ミチルが言った。


 「そうですね。私は、地球より美しい惑星があるなどと想像したこともありませんでしたが...」 銀色の海、色とりどりの木々、そっと木から降りて来た白や緑の小さな者達を見ながらプリンスがため息交じりに言った。

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