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206. 結局一緒に住みます

12月23日、ハワイ島


「サクラ、ここにいる」 この1週間ですっかり望とカリに懐いたサクラが望の足に縋り付いて泣き声でねだっていた。


「サクラ、望おにいちゃんを困らせたら駄目だよ。サクラがお家に帰らないとお母さんが寂しいって泣いちゃうよ」 父親が一生懸命になだめている。


「お母さん、泣いちゃう?」 


「そうだよ。いい子にしていたらまた望お兄ちゃんに会えるからね」


「カリにも?」


「カリにも会えるよ」望もそう約束した。


『サクラ、また会えるよ』 カリもそう約束してなんとかサクラを宥め、待っている飛行機に乗せた。これで全員だ。




「カリ、お疲れ様。頑張ったね」 離陸していく飛行機に手を振ってから、望はカリの鉢が入ったバスケットを持って自分の部屋へと戻った。集まった人達との交流は楽しかった。これからマザーの子供達を通じてもっと親しくなるだろう。大変意義のある集まりだったと思うが、やはり疲れた。

 そして、今日はこれから進学先についての最終決定を行う予定だ。


 望達が通うTSNTでは、成績優秀者の多くが同じネオ東京にあるTSA( 東京科学アカデミー)に進む。望も漠然とTSAに行くものだと思っていたが、何を学びたいのか特に決めていなかった。昨年植物関連の学問をしたいと思うようになって、そのことをプリンスにも話した。どうやらプリンスはそれからいろいろな資料を見て、どこがいいのか考えていてくれたらしい。


「TSAにもい先生はいらっしゃるみたいだけど、僕は京都にあるKSA(京都科学アカデミー)の赤井教授の研究が面白そうだと思うんだけど、皆はどう?」


「赤井教授というと古代生物の遺伝子を研究していらしゃる方ですね?」 LCに提示させた資料を見ながらプリンスが訊いた。


「うん。あんまりメジャーな研究ではないけど、面白そうだと思って」


「京都ですか。私は構いませんよ」 プリンスはそう言ってからミチルを見た。


「私も場所が京都なら問題ないわ」


「では早速KSAへの手続きをしましょう」 プリンスはそう言ってLCに命じた。望も慌ててハチに手続きを頼んだ。


「それでね、KSAは僕の実家から通えるから、良かったらプリンスも僕の家から通わない?」おじい様は普段は本社ビルに住んでいるので家の方は殆ど空き家だ。古い家だが、広さだけはあるので何人来ても大丈夫である。勿論プリンスが住むとなったらセキュリティを大幅に改善しなくてはならないが、どうせやるつもりだったので問題はない。


「良いのですか?」 プリンスは嬉しそうにしてから、遠慮がちに訊いた。


「凄く古い家だから不便な事もあるとおもうけど」 何度か手は入っているが築1000年以上の家だ。


「望の家は文化財ですからね。あすこに住めるのは光栄です」 


「いいなあ。ミチルはどうするんだ?実家の側だろ?」


「そうだけど、望の実家に住むことになると思うわ。あの家広すぎて、隣でもいざと言うとき遠すぎるもの」 ミチルも住むのか...


「それじゃ、俺もそうさせてもらうかな」 リーの言葉にミチルが眉をしかめた。


「リーは冒険大学とやらにいくんじゃないの?京都にはそんな学校ないわよ」


「冒険大学ってなんだよ。俺はOIT(大阪工科大学)に行って宇宙船の構造やら操縦やらを学ぶつもりだ。望の実家からならちょっと遠いけど通えるな」 


 結局全員一緒に住むことになった。



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