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198. ハワイ島に集合

12月10日、肌寒いネオ東京からハワイ島へやってきた望、ミチル、プリンス、リーの4人は研究所の入り口でドミニクに出迎えられた。


「ドミニク、元気そうだね?何だか前より若返ったみたい」望の挨拶にドミニクは嬉しそうに顔を綻ばせた。


「もしかして若返りのトリートメントを受けたのか?」 リーが遠慮のない質問を投げかけ、ミチルがリーをつついた。


「久しぶりだね。トリートメント?どこにそんな暇があると思うんだ?もし若返って見えるとしたら若い子と暮らしてるせいだな」 ニヤっと笑ったドミニクに望が首を傾げた。ドミニクって誰かと暮らしてたっけ?


「若い子?」


「ああ、やっと芽が出てね。毎日ぐんぐん伸びてるぞ。望も後でみてやってくれ」どうやらマザーの実から出た苗の話らしい。


「なんだそっちか」 リーががっかりしている。何の話だと思ったんだろう。


「私にも是非見せて下さい。私の苗はまだ小さいので。その分すごく元気ですが」 プリンスがそう言った。プリンスの苗は望達もよく見ている。それほど大きくはないが元気に溢れている。


「やっぱりここは環境が良いんだろうな」ちょっと自慢そうにドミニクが言った。ドミニクはキラウエア火山の中腹に作られたグリーンフューチャーの建造物の中に住んでいる。海を見下ろす日当たりの良い部屋だ。

 ドミニクとプリンスは育てている苗木の話をしながら建物の中に入っていく。その後に続きながらミチルとリーが小声で話している。


「まるっきり子供自慢をする親馬鹿同士の会話だな」 「そうよね」


 呆れたようにいいながらも羨ましさが感じられると望は思った。



12月15日、午前10時、キラウエア火山中腹にあるグリーンフューチャーの入り口には選ばれた100人弱が集まっていた。全員ペアで招待されており、単独できている者はほとんどいなかったが、今日の地下研究所へは当選者本人のみという条件だ。


「なんでパートナーを連れてきちゃ駄目なんだい?僕の彼女、自分が招待されないのでがっかりして困ったよ」木の弱そうな若い男性が受付にいた女性に聞いている。


「申し訳ございません。今回100人近い当選者の方をお招きしたので会場が手狭になりまして、とても同伴の方まではお入りいただけないのです。パーティなどは別にホテルのほうで行いますので、そちらの方はどうぞパートナーの方とご一緒にお楽しみください」 予想された質問だったらしく女性はスムースに返答している。


 全員を地下の異次元研究所の入り口に案内すると係の女性は入り口を開けて入る様に促した。


「ここは当社の異次元研究所でございます。あちらの小道から矢印に従って進んでいただければアマミヤが待っております」 彼女はそう言ってから退室した。


 研究所の中は昔あったような田舎の風景だ。草むらに、細い小道が続いており、木で作られた矢印がある。しばらく歩くと森の中に入った。あまり深い森ではなくて、明るかった。時々ちらりと小動物が横切っていく。鳥のさえずる声も聞こえた。辺りを見回しながら全員が黙って歩いた。皆不思議そうな顔をしている。直に森を抜け、少し小高くなっている草原に出た。草原には小さな白い花が一面に咲いていた。その花が時々少し動いて何かがいるのを知らせている。

 小高い丘のてっぺんには大きな1本の木が立っていた。

 その木は花ではなくて七色の葉をつけていた。その葉が風にゆれると軽やかな鈴の音にも聞こえた。


「なんて美しい木だ」 誰かが思わず呟いた。


「本当にきれいな木。何だか懐かしいわ」


「あれはノゾム アマミヤの初期の作品だ。本当に美しいな」


 小声でささやきながら人々は大きな木の下まで歩いた。その木の下に望がいた。


「ようこそいらっしゃいました。ご存知の方もいらっしゃるようですが、これは僕が子供の頃に創った木です。この木にはモデルがあります」


 望のその言葉に大きなざわめきがおこった。


「こんな美しい木が実在しているのか?本当ならば何としてもその木を見たい」 ある男性の声が皆の心を代表していたらしく、誰もが頷いて望を見た。


「どこにあるか、と言うご質問にお答えする前にこの世界を見てどう思われたか聞かせていただけますか?」


 

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