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193. 悪い子にお仕置き

 望の個展はネオ東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントン、マイアミ、ロンドン、バルセロナ、モスクワ、ミラノ、カイロ、ヨハネスブルグ、ケープタウン、ルアンダ、サンパウロ、バース、メルボルン、シドニー、香港、北京、ニューデリーで同時にオープンした。

 会場の約半数は各都市の地下で既に営業しているブレイブ ニューワールドの一室を借りている。残りはグリーンフーズとフューチャープランニングの持っている建物の中にギリアンのチームがリトリートの簡易型を設置した。


 「それで、結局どうやってぴったりな人を見つけるんだ?」 ネオ東京の地下にあるブレイブニューワールドで最終チェックをするという望について来てくれたリーが訊いた。ミチルは何か用事があるらしく後で合流することになっている。望は一人でも大丈夫だと言ったが、心配性のミチルはリーに護衛の代わりを頼んだらしい。もっとも、ブレイブニューワールドに来るチャンスを逃すリーではないから、頼まれなくても多分ついてきたに違いない。


 「いろいろな案があったんだけど、結局ウィルソン所長の案に落ち着いたんだ。これを見て」 会場に入った望がフロアの真ん中に置かれている木を指し示した。それはマザーをそのまま小さくしたような木で、直径5センチ程の円形の実が5個、ついていた。5個とも色は違っていてそれぞれ異なる輝きを放っている。


 「会場に来た人すべてにこの実をそっと触って貰うんだ。ここに説明書きがあるように、そっと触れてもし実が落ちてきたら当たりで、すべての経費を含めてハワイ島のリトリートへご招待する、ということになってる。宝くじ?みたいなものと思って貰えればいいんだけど」


 「そんなのちぎられたらどうすんだ?」


 「ちぎっても落ちないよ。これは本物の木じゃないし、実自身がこの人ならと思って自分から枝を放さない限り落ちないようになってるから」


 「何人来るか知らないけど、結構な数の人がくるんだろ? いくらそっとでも毎日そんなに触られたらすり減りそうだな」


 「カリが大丈夫だって言ってるから、多分大丈夫だと思うんだけど」望がちょっと心配そうに言った。


 「一応目立たないようにセキュリティロボットを配置してあるから」 望が指さす方に目をやるとそこにあるのは子供位の大きさがあるウサギのぬいぐるみだった。


 「これがセキュリティロボット?戦えるの?」 耳をちょっと引っ張りながら疑わし気にリーが訊いた。次の瞬間耳を引っ張っていた手をひねり挙げられた。


 「良い子の皆さん、こちらの会場内では、タッチ許可の表示がない物には手を触れないようにと言われましたよね?お約束を守れないのはどの子かな?」 ぬいぐるみの手なのにしっかりと握られていてリーが引っ張っても離すことができない。


 「わかったよ!手を離してくれ」


 「悪いことをしたときはまずごめんなさいをしましょうね」ウサギが優しい声で諭した。


 「… ごめんなさい」 顔を赤くしながらリーが謝った。


 「はい、よくできました。今度から気をつけましょうね」 そう言ってウサギはリーの手を離した。


 「ウサギをいじめる悪い子なんて最低ね」 いつ来たのか後ろにミチルとプリンスが立っていた。


 「げっ、ミチル」 後ろを振り向いたリーが首をすくめた。


 「げっ?そんな悪い言葉を使う子にはもっとお仕置きが必要ね」 ニヤニヤとしか言えない表情でミチルが言った。これはどうやら後でマーシャルアーツのトレーニングだろうな、とちょっと同情するようにリーを見ていた望に、ミチルが望はこの頃運動不足だから一緒にトレーニングね、と宣告した。

 救いを求めてプリンスを見る望とリーにプリンスが微笑みながら言った。 

  

 「良いですね。私もここしばらく忙しくて碌にトレーニングしていません。では、今日は久しぶりに全員で汗を流しましょうか?」 

 

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