185.パートナー誕生
プリンスの言葉に望はう~んと首を傾げた。
「植物研究所をここに建てるの?日が当たらないのに?」
発電所の入り口は山の中腹に埋められており、出入りの時だけ入り口が出現するようになっている。そのため今回の噴火でもほとんど被害がなかった。そこから地下に繋がっている広大な施設があった。地下とは言えところどころに木が植えてあり、人間にとってもそう殺風景ではない。気温は一年中暖かで湿度も一定にコントロールされている。しかし、日光があたらない。以前の日当たりの良い植物研究所を思うと、植物達にはどうかと思ったのだ。
「この場所が異次元に近いというなら、その研究をするための施設を作りたいと思いますが、まさか正直にそう言うわけにもいきませんから、地上に植物研究所を作って、地下に異次元探索のための施設を作ったらどうでしょう。かなり莫大な費用がかかるでしょうからもう少しもっともらしいテーマを掲げなくてはなりませんけれど」
「異次元研究所?そうだな。あんまり表沙汰にしないほうが良い研究だろうな」 いつも面白そうなことにはすぐに乗るリーが意外にも真面目に言った。
「そうね。この場所には確かになにかあると思うけど、グリーンフーズの評判にもかかわるものね」
「プリンス、もしできたら、なんだけど…」 しばらく考えていた望がためらいがちに口を開いた。
「僕がここに研究所を持つことはできないかな?勿論資金はすべて出すし、何か使えそうな成果が上がったら共有するよ」
望の提案に今度はプリンスが考え込んだ。
「この場所はうちのマグマ発電所が長期に借りているのですが、その間の使用については最大限の自由度が認められています。敷地の一部を又貸しすることはできると思います。しかし、できればうちと望の会社、フューチャープラニングの共同研究ということにしませんか?そうすれば難しい手続きも必要ないでしょうし、私も是非この研究には関わりたいのです」
「もしそれでグリーンフーズに迷惑をかけないのなら…」
「よし、それならやるか」何故かリーがやる気になっている。
「それにしても異次元研究所じゃなくて、何か他の名前にしなさいよ」
「そうですね。 地上に植物研究所を作って、そこから地下の異次元研究所に繋げる、という形でどうでしょうか?グリーンフーズとフューチャープラニングの共同開発研究ということにすれば施設が大きくてもそう違和感はないでしょう?」
「それじゃあ僕はA&Aから誰か派遣してもらうことにする。ハチ、A&Aの研究所に次元の研究をしている科学者がいなかったっけ?」
「マスターウォルターは次元研究に興味を持っていらっしゃいましたので、専門の部門がございます。現在は14人研究者がおります」
「専門の部門?そんなのがあったっけ?じゃあ、その中からここに来てもらえそうな人を何人か選んでくれないかな?」 望はハチに丸投げした。
「かしこまりました」
「それでは私は研究所の設計と建築に取り掛かりましょう。これからはパートナーですね」 プリンスはそう言って望に手を差し出した。
「宜しく、パートナー」 望はそう言うとプリンスの手をしっかりと握り返した。




