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176. カリとハチ

「お役にたてるかどうかわかりませんが」 望がためらいがちに口を開くと、大統領は嬉しそうにビルを振り返った。


「よし、なるべく早く向かいたいが私の予定はどうなっている?」


「残念ながら今日はこの後すぐに中国政府との会談があります。もうそろそろ向かわなくてはなりません。その後も幾つか外せない約束が詰まっております。なんとかなりそうなのは1週間後、来週の土曜日ですね」


「もっと早くならないのか?少しならどれかを後回しにしてもいいだろう?」 大統領の拗ねたような声にビルが困ったような顔をした。


「あの、大統領、僕も月曜から金曜までは学校がありますので、土曜日の方が助かります」 望の声にビルが感謝したような笑みを向けた。


「学校か。それでは仕方がないな。では、来週の土曜日の朝、迎えに来よう」


「いいえ、こちらからお伺いします。カリフォルニアのどこに行けば良いのかコーディネイトだけ教えて下さい」 望の慌てたような声に大統領は渋々同意した。 その後、ビルに急き立てられるように慌ただしく去った大統領を見送って、4人はほっと息をついた。まだ午前中だというのになんだか一日が終わったように疲れた気がした。


「ねえ、カリ、どう思う?古い木が僕とお話してくれるかな?」 部屋に戻った望はカリに大統領が言った事を説明してから、カリの意見を訊いてみた。


『お母さんは誰とでもお話できる。お話したくない子がいたらカリがやっつける』 カリはちょっと好戦的なところがあるみたいだ。

「カリ、やっつけなくても良いよ。僕はすすんでお話してくれた方が嬉しいからね」 望が慌てて釘をさした。 カリが本当に相手をやっつけることができるかどうかはわからないが、念の為だ。


『カリ様、すぐに暴力に訴えるのは良くありません』 ハチがインターフェイスを通じて言った。


『ハチは少し賢くなったけど、弱いの。カリの言う通りにするの』 カリが言い返した。


「カリ、ハチ、君達何時からお話できるようになったの?」 望が驚いて訊いた。


「望様がカリ様とシナプスを繋げて下さいましたので、情報の交換が可能になりました」 ハチが声に出して返事をした。


「そんなことになってたんだ」 望はなんだか空恐ろしい気がした。

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