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173. 大統領のプリンス宅訪問

「お招きいただいて有難う」 帽子とサングラスをとって魅力的な笑顔でそう言ったキング大統領にミチルはうっすらと頬を染めた。プリンスとリーは(誰が招いた)と内心で突っ込んでいるのがわかる顔をしている。望は(いつお招きしたっけ?)と首をかしげた。


「朝早くから悪いね。コージからこの家の事はいろいろと聞いていて、是非一度見たいと思っていたんだが、なかなか時間ができなくて、やっと伺えて嬉しいよ」


(ブレナン博士、貴方のせいか!)と全員が心のなかで叫んだ瞬間だった。


「特に珍しい家でもございませんが、よろしければご案内します」 プリンスが完璧なホストスマイルで申し出た。


「ああ、お願いするよ。特に木の苗を育てているテラスと、新しいプログラムを備えたリトリートが素晴らしいと聞いている」にこにこと機嫌よく言う大統領に逆らえず、プリンスはまずテラスに向かった。

最初に育てた苗はもう立派な木になって各地に文字通り根を張っている。今テラスの温室にいるのは望が自分の好みを優先して育てている多種多様の苗だ。現在実をつけている木も何本かあった。


「ほお、これがマナフルーツとなる木か。この赤い実はどんな味だい?」 生っている実の中でも小粒で鮮やかな赤色の実を指さして大統領が訊いた。


「よろしかったら召し上がってみますか?」 もう収穫しても良いことを確認した望が訊くと、大統領は嬉しそうに頷いた。


「良いのかい?実は朝食がまだなんだよ」 そう言われて、赤い実の他にも幾つか食べごろの実を収穫して、テラスのテーブルについた。 ミチルとリーが望の部屋のオートシェフから人数分のコーヒーを持ってきた。望達がコーヒーを飲む横で大統領とビルが果物を楽しんだ。


「これは、イチゴだったのか!しかし私の知っているイチゴよりよほど瑞々しくて美味しいな」 早速赤い実を齧った大統領が感心して言った。


「大統領、これを食べてみて下さいよ。チョコレートですよ。果物でチョコレート味が楽しめるなんてダイエットの最強の味方じゃないですか」 ビルがダークブラウンの実を食べながら興奮して大統領に勧めている。


「いやあ、美味しかったですね、大統領」


「ああ、コージが戻ってきたがらないわけだ」 一通り食べて満足した大統領とビルを連れて一行は地下のリトリートへ向かった。大統領はブレイブ ニューワールドには行ったことがないので、リトリート自体が初めてらしい。


「ほう、これは素晴らしい。ホロゲームには入ったことがあるが、これ程鮮やかなものは見たことがない」 リトリートに足を踏み入れた大統領は辺りを見回して感心している。


「あちらに湖があります。向こうは森になっています。どちらに行きますか?」プリンスの問いに大統領はちょっと考えてから逆に問いかけた。


「コージが言うには、ここに特別な木があるのでそれを私にも見て欲しいというんだが。どの木かわかるかね?」


「はい。それはこちらです」 プリンスの案内に続きながら望は、何故ブレナン博士が大統領にマザーのレプリカを見せたいと思ったのかなあ、と内心で首を傾げていた。


「これは…」 七色の葉をつける木の前に立った大統領は木を見上げたまま暫く動かなかった。


「なんというか、心が洗われる、というのはこういう経験を言うのかもしれん。不思議な木だ」 やがて振り返って望を見た大統領はため息をつきながらそう言った。


「この木は芸術ですねえ」 ビルはそう言ってのんびりと木の周りを歩いている。大統領に与えたほどの感動は受けなかったようだ。 


「この木の側でなら私も初心に返って君達と話すことができるような気がする」 大統領はそう言って皆を促して木の下に座った。

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