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166. 神々からの鉄槌??

「キラウエアが噴火?そんなことになったらあの子達はどうなるの?」 矢継ぎ早に指示を出しながら急ぎ足で部屋を出ていく大統領を見送って、望が悲痛な声をあげたが、プリンスにも答えることはできなかった。人間を避難させるのに必死の状況で木の移動は頼めない。


「キラウエアのマグマ発電所には幾つもの安全装置が取り付けてあります。テロ行為への予防措置も勿論あります。滅多なことはないと思いますが、下級とはいえ、内部の技術者が関わっていたのが気がかりです」 

 プリンスは何とか研究所と連絡をとろうとしているようだが、柔らかい女性の声で現在応答できないのでメッセージを残すようにと繰り返すだけだった。


 ハワイ島のマグマ発電は主にキラウエア火山の浅いマグマ溜まり近くで行われている。同時にマウナロア火山のマグマを少しずつ離れた場所に誘導して噴火を防いでいる。殆どの作業はAIと高温高圧に耐えられる作業用ロボットが行っているが、メインテナンスにはAIだけではなく、人間の技術者も常駐している。AIと人間のどちらも応答しないというのは間違いなく異常事態だ。


「万が一キラウエアの噴火に刺激されてマウナロアが噴火したら被害はハワイ列島だけでは収まらないでしょう」プリンスの珍しく焦ったような声に望が息を飲んだ。その時、部屋に設置してあるプロジェクターから声が流れ始めた。


「全世界の過剰な人類に告ぐ。連邦政府の我々に対する弾圧への抗議として、本日ハワイ島の火山を噴火させる。この通告が流れる頃にはすでに第一段階の噴火が始まっている。これはほんの始まりだ。すぐに第2段階の噴火が起こる。増えすぎた人類に神々からの鉄槌を!」


続いて緊急ニュースが流れた。


「世界的テロ組織VHRより犯行声明が流されました。現在連邦政府はハワイ島の避難を進めています。連邦政府発表によると避難はすでに80%終了しているとのことです」


「この短時間に80%も避難させられたのなら、避難は間に合いそうね」ミチルが自分を安心させるかのように呟いた。


「ハチ、マグマ発電所と連絡をとることはできないの?」 望がすがるようにハチに訊いたが、ハチからの返答は芳しくなかった。


「先ほどからコンタクトを試みておりますが、システムが完全にシャットダウンしています。人間従業員のLCへのコンタクトも行っておりますが返答がございません。LCから生命反応が感じられません」


「生命反応が?」 ハチの言葉にプリンスが目を閉じた。


「君達、大丈夫かい?」 望はハワイ島の木に呼びかけた。


『お母さん、すごく震えてるの。もう立ってられないの』 怯えたような声に胸が痛んだ。何とかしてあげたいが、望にはどうすることもできない。無力感に頭が空っぽになった。


『どうしたの、私の子?どうしたの?』 


「マザー?!」 望は目を見開いた。 望はマックのラストドリームから目覚めた後数回、夢を通してマザーとコンタクトしていた。 それが、望の夢なのか、本当に異次元のマザーとの通信なのか、自信が持てずに誰にも言えずにいた。カリの成長によるものなのか、この頃マザーの声は随分はっきりとしてきていたが、完全に目覚めている日中に聞こえたのは初めてだった。


「マザー…」 望は素早く現在の状況をマザー知らせた。言葉にしている時間が惜しかったので思念で送った。


『わかりました。その発電所の機械をコントロールできれば助かるのですね?そして、私の子の助手がその機械と繋がることができればそれができるのですね?』 マザーは素早く状況を理解してくれたようだ。


「僕の助手?ああ、ハチのことだね。そうなんだ。もしハチが発電所をコントロールできれば、多分なんとかできるんじゃないかと思うんだけど、システムが切られていて、ここからではコンタクトできないんだ」 


『成程。私の子、あなたの中で、貴方の助手と私を繋げてちょうだい。それから、その島に根付いている貴方の子達を私と繋げて』


「マザーとハチを繋げる?どうやって?」 望は慌てた。どうしたらいいのか見当もつかなかった。


『私の子、貴方は既にできていますよ。貴方の側にいつもいる子が、貴方と他の子を繋いでいるでしょう?』

 そう言われて望はカリが望と他の木を繋ぐ感覚を思い出した。あれを、今度は望がやればいいのか。その感覚を思い出しながらマザーとハチ、マザーとハワイ島の子達を繋げるように脳の中でイメージした。すると、何かが嵌ったような感覚がした。


「できた!かな?」 


「望様、これは…」 ハチの戸惑ったような声が聞こえた。


「わかりました。彼らを通じて発電所のシステムに侵入すれば宜しいのですね?」ハチはすぐにマザーの意図を理解したらしい。


「侵入成功しました」 数分後、ハチの勝ち誇ったように聞こえる声がした。



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