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19. 襲撃事件の顛末?

8月1日


プリンスはすぐに連れ帰ろうとする祖父を、なんとか説得して予定通り夏休みを望達と一緒に過ごせる事になった。ただし、護衛隊は倍の4個隊になっている。マックの秘書の不祥事でもあり、マックの家にも護衛が滞在している。プリンスは申し訳ながったが、マックは苦笑しながら気にしないように、と言った。


 取り調べの結果、彼らの狙いがプリンスではなく、望であったことも、なんとか許可をもぎ取れた原因である。望と一緒でない限り、絶対に帰国しないと珍しくプリンスが強硬に言い張ったのが、一番であるが。


「ごめんね、僕のせいでみんなを危険な目に合わせてしまって」

自分がターゲットだったと聞かされた望は、マックに関係したことだ、という以外理由がわからないままに、とにかく申し訳なさでいっぱいだった。みんなに先に帰国するように勧めたが、ミチルは勿論、プリンスもリーも聞く耳をもたない。


「私だけ先に帰ったら、家に入れてもらえるわけないじゃないの」とミチル。

(自分のアパートに帰るんだから家に入れてもらう必要はないんじゃ)


「俺が不死身なのはわかっただろう?こんな面白そうなことから帰れるか」とリー。

(いやいや、不死身は言い過ぎじゃない?)


「望、君が私の立場だったら、私を置いて帰るかい?」悲しそうに問うプリンス。

(.........)


何も言えなくなった望をほうっておいて、3人は襲撃の理由について話し合っている。


「プリンスとミチルは襲撃してきたやつらの尋問には立ち会ったんだろう?何かわからないのか?」

リーがミチルに尋ねる。


「彼らは何も知らない様子でした。誰かに雇われて、半金を受け取り、望を殺すように依頼を受けたと言うだけでした。嘘をついている様子ではありません」プリンスが答えた。


「エリオットが雇ったのか?」


「それはわからないけど、かなりの大金が支払われたみたいよ。秘書に支払えるような金額なのかしら。まあ、エリオットが手引きしたのは間違いないわ」


「望、エリオットは君に何を話したんだい?」プリンスが望の顔を覗き込んで尋ねた。



望は最後にエリオットの希望で彼と話したときのことを思い出していた。


「何故だ?私は悪い連中とつるんで、対抗するマフィアに殺されそうになっていたとき、マックに出会った。彼は私をマフィアの手から救い、軍事学校に行かせてくれた。幸い、私には向いていたと見えて、そこで優秀な成績を収めることができた。いろいろな道が開けたけれど、私はマックに頼んで彼の秘書にしてもらったんだ。彼のそばにいたほうが余程勉強になるし、何より彼のそばにいたかった。私はこれまでの人生のすべてを彼に捧げてきた。誰がなんと言おうと、彼はこの世界に必要な人間だ。何故彼が死ぬのだ? 何故君を選んだのだ?」


 エリオットは最後まで襲撃の理由や、背後に誰がいるのかを話さなかった。自分の言いたいことだけをいうと、口をつぐんでしまった。


 望はエリオットの言ったことを伝えた。


「望が死ねば、マックが死ぬのをやめると思ったのかしら?」ミチルがあきれたように言った。


「望に何かあれば、確かにラストドリームは完成しないだろうけど、それで望を殺してしまおうというのはあまりに短絡的じゃないか?」


「そうですね。ただもし、マックにそれだけ心酔している人間に、誰かが、望さえいなければマックは死ぬのをやめるとそそのかしたとしたら、その手引きをすることを承知することは、あるかもしれませんね」


プリンスの言葉にミチルとリーは納得がいかない、という顔をした。望はなるほど、と感心している。


「『何故、君を選んだのだ?』と言ったんですね?」


「うん。僕を選んだのはマックのラストドリームに僕のイメージが最適だったから、というのは、エリオットが一番良く知っているはずなのに変なことを言うなあと思ったから、間違いないよ」


「本当にそれだけの意味なのでしょうか」プリンスは何かを考えているようで、首をかしげたが、


「まあ、いずれにせよ、黒幕がわからないのですから望は絶対に一人にならないように」と真剣な顔で望を見た。


「そうよ。もともと勝手にこんな仕事を引き受けた望がいけないんだから、これ以上何かあったら、他人の手を煩わす前に、私が望を始末するわよ」とミチル。かなり本気である。




 4人の襲撃者はブラックマーケットを通して雇われため雇い主を知らなかった。

 その誰かにエリオットもまた、あの場所まで誘導することを依頼されたという。

 警察の取り調べにエリオットは、襲撃は一瞬で終わる予定で、エリオットとガイドが気が付いた時には手遅れのはずだったという。ところが、思ったより長くかかり、異変に気が付いたガイドのカイルがヘリを出て助けに行こうとしたため、思わず撃ってしまった、本当に殺すつもりはなかった、と供述したという。

 ただ、長年マックの腹心だったエリオットが何故そんな計画に加担したのかは、金に目がくらんだためだろう、という結論に落ち着いた。


 プリンスもミチルも、リーも、全く納得していない。望だけは、エリオットがマックに死んで欲しくなくてこの襲撃に加担したのだろう、と思っている。


 マックは、連行されるエリオットを悲しそうに見ただけで、何も言わなかった。

 



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