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155. ライ家の事情

「本日朝9時にリー ライ様の父親 ユアン ライ氏は中国地区警察によって事情聴取のために拘束されました。長男のダオユアン氏は拘束はされていませんが、任意出頭を求められています。もし出頭しなければ多分拘束されることとなるようです。次男のリー ライ様には現在なんの沙汰もされておりません」


「拘束?何のために?」 望は驚いて立ち上がった。


「容疑は中国地区政府への謀反です」 


「謀反?そんな馬鹿な。リーのお父様は中国政府の代表じゃないか。誰に対して謀反を起こすっていうの?」望の疑問にプリンスが頷いた。


「そこが曖昧で、いろいろな噂が飛び交っています。中にはとても信じられないような話もありますが、もっともらしい話もあります。政治家にとってはこのような噂だけでも痛手は大きいでしょう」


「曖昧って、大した証拠もなくて政府代表を拘束なんてできるの?」


「そんなことができるわけないでしょ。それなのに拘束されたから、誰もが何かはっきりした証拠があるに違いないって騒いでいるのよ」 ミチルが忌々しそうに言ってから、ハチを見た。


「ハチ、一体どんな証拠があってリーのお父様が拘束されているのかわかる?」ミチルの質問に頷いてハチが答えた。


「はい。ユアン ライ氏は中国山岳地帯のテロ組織との関連が疑われています。先日行われた組織への攻撃で、かなりの組織構成員を逮捕したのですが、その際にライ氏からの資金の流入があったという証拠が見つかりました。もっとも、ライ氏は、自分が誰に対して資金を出したのか知らなかった可能性もあるのですが、生憎と現在の警察長官はライ氏の政敵シャリー ワン氏の息子ルイジ ワン氏であるためすぐに拘束されたと考えられます」


「成程。拘束してしまえばいろいろな噂が飛び交って、それだけで失脚する可能性がありますし、政敵としては絶好のチャンスでしょうね」 プリンスが納得している。


「そんなこと言って、政敵が取調べをしてるんじゃ大変じゃないか。リーはどうしているんだろ。僕全然気が付かなかった。いつもどおり元気に見えたから」 


「元気なふりをしていただけよ。よく見たらわかるはずよ。望はもう少し人間の感情にも敏感になったほうが良いわ。動物や植物には気を使うくせに」 ミチルが八つ当たり気味に言ったが、望は何も気づかなかった自分に落ち込んで項垂れた。


「リーはきっと私達に心配をかけたくなくて元気な振りをしていたのでしょうから、気が付いていないふりをした方が彼にとっては有難かったと思いますよ」 プリンスが慰めてくれたが、望は別に気が付かないフリをしていたわけじゃないので、猶更落ち込んだ。


「ライ氏は一筋縄ではいかない老練な政治家です。何故そんな証拠があるのかはわかりませんがきっと対策は既にとっているでしょう」 自信あり気なプリンスの言葉に望が期待するようにプリンスを見た。


「そうだよね。きっと大丈夫だよね。何か僕達に出来る事ないかな?」


「もう少し詳しい情報がわからないと返って邪魔になるでしょうから、今は静観するしかないと思います」 そう言いながらもプリンスは執事姿のハチを見た。


「何か役に立つ情報があれば別ですが」


「ハチ、もっと詳しいことは調べられないの?」


「それは、中国警察のネットワークに侵入して構わないと言うことで、宜しいでしょうか?」どうも以前ハチが気軽に機密ネットワークに侵入することに望が文句を言った事を少し皮肉っているようだ。


「これは緊急事態だからね」 


「わかりました。バレなければ大丈夫でございますね?」


「そういうわけじゃないんだけど、まあそうかな?」 望が自信なさそうに言うのを歯痒そうに遮ってミチルがハチに訊いた。


「それで、何かわかったの?」


「はい、取り調べでは主に組織が行っていた人体実験への関与を調べられています」


「人体実験?」


「以前中国地区で行われていた優秀な人間を作る実験は勿論違法となって廃棄されましたが、その資料をこのテロ組織が引き継いでいたようです。より強い兵隊を作るために実験を重ねていたらしく、実験結果の兵隊も確保されているようです」


「遺伝子操作?」 望だけでなく、ミチルとプリンスも青ざめた。


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