148. 待機とは?
「待機って、いつまでここにいたらいいの?」望が困ったように誰にともなく尋ねると、ドミニクがさあね、と言うように肩をすくめた。
「そのまま待機ってのは言葉の綾という奴だろ?別にここでじっとしていろと言う意味じゃないと思うぜ。奴らの狩猟を邪魔するぐらいはいいんじゃないか?」 リーがそう言うと、ミチルが、成程、と言う顔をした。
「そういうことなら、私も狩猟の妨害をするのには賛成だわ。いくら大統領だって、今日のハンティングパーティを止められるかどうかわかないもの」
「止められるかもしれませんが、優先順位はそこにはないでしょうね」 プリンスがそう言って何やら考えている。
「君達の気持ちもわかるから水を差したくはないが、そのまま待機っていうのは少なくともこの件に関しては、これ以上動くなと言うことだと思うがな。大統領が手を打つのなら、下手に動いて奴らに感づかれたら不味いんじゃないかとわしは思うがな」 ドミニクが言った。
「ドミニクの言う通りだと私も思います」 プリンスがそう言うとミチルとリーがわかってたけれど、納得できない、と言う顔で望を見た。
「望はどうしたいの?」 ミチルが望を見据えて訊いた。かなり怖い。
「僕? 僕は勿論狩猟を止めたいけれど、大統領の打つ手を邪魔したくもないから...邪魔しているとわからないように邪魔できないかな?ハチ、どう思う?」
「バレなければ大丈夫、でございますね?」 何故か執事姿ではなく狩猟にでも行くような恰好でハチが現れて言った。
「ハチ、その恰好は何?」 望が胡散臭い者を見るように訊いた。
「これから狩猟にいらっしゃるのであればそれに相応しい恰好を、と思いましたのでご参考までに用意致しました」
「僕は狩猟なんてやらないよ!」望が驚いて言った。
「勿論、殺されそうな動物を助けるのでございますよね?それには狩猟をしている場所に行かなくてはなりません」
「それはそうかもしれないけど、その場所に行ってどうやって助けたらいいの?」望は動物とは話せない。逃がしてあげる事も難しいだろう。
「狩猟に出かけたら、バラバラに行動するんだろ?一人ずつこっそり倒してったらどうだ?」 リーの提案にプリンスが首を振った。
「それこそバレること間違いないですよ」プリンスにも良いアイデアは浮かばない様だ。
「確かに、これは難題だな」 ドミニクも腕を組んで考え込んでいる。
皆が唸っていると、望の側に置いてある鉢のなかで、カリがちょっと得意そうに震えた。
『お母さん、カリに任せて』
「カリ、何かいい考えがあるのなら教えてくれる?」 カリは自信あり気だが事が事だけに半信半疑な望だ。