147. 大統領と話し合い
「それにしても、結構大物がいるな。これじゃあとてもこの辺りの警察じゃ無理だな」 ドミニクが腕組みをして言った。
「そうですね。連邦警察でもトップでなければ難しいかと思います」 プリンスが頷いて言ったが、さほど心配はしていないようだ。
「君には何かいい考えがあるのか?」 ドミニクがプリンスを見て訊いた。
「良い考えと言うほどのものではありませんが、トップでなければ難しいのならトップに話せばと思っただけです」
「ほう、連邦警察のトップに伝手があるのかね。流石はグリーンフーズの御曹司だな」ドミニクが感心したような、からかうような口調で言った。
「いえ、連邦警察の長官は存じ上げませんが、その上の、連邦大統領ならば問題ないでしょう?」
「大統領?ああ、そう言えば君達は大統領から昼食に招かれたんだったな。その時に少しは親しくなったのか?あんまりあいつらの言うことを真に受けない方がいいぞ。リップサービスという奴が多いからなあ」ドミニクが疑わしそうに言った。 ミチルがちょっと反論したそうにしたが、黙った。
「私ではありませんが、望に何か力になれることがあったら遠慮なく言ってくれ、とおっしゃってました。多分あれはリップサービス、ではないと思います」
「僕そんなこと言われたっけ?」 望は全く覚えていない。別れの挨拶の時にいろいろ言われたような気はするが形式的なものだと思って気にも留めなかった。
「ほう、キング大統領がそこまで言ったのか。それなら信じてもいいかもしれんな。普段はもっと曖昧な言葉を使う男だ」
「望が連絡をとればすぐに話を聞いてもらえると思います。あとはこの証拠を見せれば大統領が信用できるところを動かすでしょう」 プリンスの言葉に望以外の全員が頷いた。
「僕が連絡するの?どうやって?」 望が慌てて訊いた。
「キング大統領へ通信されますか?」 執事姿のハチが現れて望に訊いた。望が辺りを見回すと全員が頷いている。
「そうだよね。はやくしないとあそこの動物が殺されるものね」 自分に言い聞かせるように呟いて、ハチに大統領と繋げるように頼んだ。
「ハチ、わかっていると思いますが、絶対に外部に漏れない通信でお願いします」 プリンスが付け加えた。
「はい、承知しております」 ハチが丁寧に答えてお辞儀をして、消えた。次の瞬間少し驚いたようなキング大統領の顔が現れた。どうやらスペースワンのラウンジにいるらしく寛いだ格好をしている。
「おや、天宮君じゃないか。私のプライベートコードを君に教えたかな?」少し皮肉っぽい言い方に望が慌てた。
「あの、申し訳ございません。緊急な用件で、大統領にお話しする前に誰かに聞かれたら困るので...」言い訳しようとする望を遮って、大統領が言った。
「ああ、構わないよ。いつでも連絡をくれと言ったのは私だからね。それで緊急の用件というのは何だい?」 大統領の言葉に、プリンスが前に出た。
「それは、私から説明させていただきます。その前に、失礼ですが、完全なプライベートモードでお願いいたします」 プリンスの言葉に、大統領は何かを感じたのか、頷いて部屋をプライベートモードにした。
その後、プリンスが望の所有する自然保護区から保護動物が盗まれたため調査にアフリカに来ていること、その犯人を捕まえたところ、マラドーナ議員の命令だとわかったこと、そこからマラドーナ議員の主催するハンティングクラブを調べたところ、この前の大統領に毒を盛ろうとした実行犯と、命令を下した副大統領が共にこのクラブの会員であることがわかったこと、彼らの他にも、行方不明や病死などを契約、実行している会員がいる証拠が見つかったこと、などを順序良く説明した。証拠となる資料も送った。
「どうやって短期間でここまで調べられたのか色々聞きたいところだが、それは後にしよう。至急手配する。君達はそのまま待機していてくれ」 大統領はそう言って通信を切った。