表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/295

146.悪事の証明

トラックの中で短い睡眠をとってから、ハチが整理したデータを見ていくことにした。しかし量が多いので、全員で一緒に見ていては時間がかかりすぎることから、ハチが他のLCに分割して送付し、5人でそれぞれ何か不審なデータがないか調べることにした。


「ハンティング クラブのメンバーに結構大物がいるな」 リーの言葉にプリンスが頷いた。


「硬派で有名な人が多いですね。これでメンバーの全貌が判明して良かったです」


「ここを見てよ」ミチルが一箇所を指差して憤慨している。


「過去の晩餐会のメニュー?」それがどうしたの?というように望がミチルの指す部分を見て、思い切り顔をしかめた。 


「これってただこういう名前をつけているってわけじゃないよね?」 望が万が一の願いを込めて訊いたが、全員から呆れられただけだった。メニューにはメインとしてライオンの薄切りステーキ、シマウマステーキ、キリンステーキを選べるとあった。


「それは無いでしょうね、残念ながら」 プリンスが同情するように言った。


「これだけでも罪になるよね?」 望の問いに、ドミニクが首を振った。


「これだけではとてもマラドーナを逮捕させることはできん。この地区でマラドーナを相手にするなら、もっと確実な証拠が必要だ。できればもっと重い罪でな」


「あの自然保護区は国からの助成金の他にかなりの寄付をハンティングクラブの会員達から受けているな。それでもあれだけの土地を完全に覆うシールドといい、とても足りるとは思えん。いったいどうやって賄っておるのかな」 クラブの会計記録を見ながらドミニクが言った。


「あれ、グレゴリーって最近どこかで聞いたような気がする」 ドミニクの横で会員による寄付の記録を見ていた望が言った。


「グレゴリー Rって、誰だっけ?凄い額の寄付だよね」 望の独り言にプリンスが覗き込んだ。


「グレゴリー R? 望、良く見つけました!」 プリンスが声を上げた。


「プリンス、何か見つけたのか?」 リーが自分の分の資料から目を離して、期待するようにプリンスを見た。


「俺の方はさっぱりだ。なんかとんでもなく前時代的な規則ばかりで、胸が悪くなりそうだぜ」


「私ではなくて、望が見つけてくれました」 プリンスは望を立てようとしているらしいが、望にはさっぱりわからない。


「僕が見つけたって、このグレゴリーって人?プリンスには誰だかわかるの?」


「グレゴリー ローゼンタール サードで間違いないはずです」 


「ローゼンタール? 副大統領の?」


「もと、副大統領よ、望」 ミチルが訂正する。


「わかってるよ。 それで彼がこのクラブの会員だったってことだよね?」 もと、副大統領は悪人っぽかったから、こんなところの会員でもそう驚くにはあたらないだろう、と望は思った。


「そうです。この寄付の額を見てください。ただの額ではありません。必ず何かあります」 プリンスが自信ありげに言った。


「本当だな。自然保護地区への寄付だから控除されるとは言えかなりの金額を払ってるな」 ドミニクが言った。


「でも、ここの会員の何人かは毎年高額な寄付をしているみたいよね」 ミチルが自分の分の資料を指し示しながら言った。


「ハチ、ここにある資料からグレゴリー ローゼンタールに関する物をすべて示してください」 プリンスがハチに言った。望は、ハチがプリンスの命令にどうかしたら望の命令よりすぐに従う件については、この件が片付いたらじっくりハチと話さなくちゃ、と思った。


数分後、かなりの量の資料が眼前に現れた。


「重要度順になっております」 ハチの言葉に最初の資料から見てみると、どうやら契約書のようだ。


「これは、今度の大統領選へ密約ですね。マラドーナがキング大統領の排斥に力を貸すこと、その後大統領選で正々堂々と戦い、勝った方は負けた方を副大統領に任命する、と」 嫌悪感をあらわにしながらプリンスが要約した。


「正々堂々って」 望が呆れて、正々堂々、と書いてある部分をじっと見た。


「おい、このレシートをみろよ。キング大統領に一服盛ろうとした男への支払いだ。ご丁寧に仕事の達成条件が詳細に書かれているぞ」 リーが興奮して言った。


「じゃあ、副大統領が言っていた組織、というのがこのハンティングクラブのことだったわけね」 ミチルが言った。


「そういうことか。どうもここの会員の層には幅がありすぎると感じたんだが、仕事の依頼主、と実行する人間が両方会員なわけだ。なかなかうまく考えたもんだ」 ドミニクが感心している。


「とにかく、これでマラドーナを捕まえられるよね?」 望の問いに今度はドミニクも頷いた。


「未遂とはいえ、大統領への罪は重罪だ。この様子では他の犯行記録もあるはずだ。証拠固めはしっかりしなくちゃならんが、これだけでも奴は終わりだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ