表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/295

141. マラドーナ自然保護区への潜入 1

「これでこっそりと言えんのかね?」 リーがぼやいた。


「何を期待していたのよ? スペース ステルス?」 ミチルがリーを見てからかうように言った。ミチルはこの潜入捜査が決まってからやけに期限が良い。漸くそれらしい仕事が来た、と呟いているのが聞こえたような気がする。


 望達はプリンスが用意したジェットで堂々とプレトリアの近くにあるグリーンフーズの飛行場に着陸していた。機体にはグリーンフーズのマークが付いている。 


「ハチが管制塔をうまくごまかしてくれているから、表向きはグリーンフーズの無人定期補給便として記録されているはずです。この駐機場には誰も近づかないように指示しておきましたのでこのまま現地に向かいましょう」 

 グリーンフーズの従業員ユニフォームに見える緑と白の服を着たプリンスが帽子を深く被りながら言った。望達も全員同じユニフォームを着ている。とは言っても、実はマックの家の研究室で作った防護服の表面にホロイメージを載せたものだ。そのまま駐機場の隅に停めてある白の配達用トラックに積まれたコンテナに全員が乗り込むと、プリンスの合図でトラックが発車した。


「トラックの荷物室って随分居心地が良いんだね?」 白いコンテナの中は意外に広く、4人でゆったり座れるソファとテーブルがあり、オートシェフやトイレ、シャワーもあった。荷物を積むスペースもあるが、今は何も積んでいないので余計に広く見える。冗談ではなく望の以前のアパートより広い。オートドライブのトラックで運転席は無いが前方にスクリーンがあり、外の景色を映しているので閉塞感もない。


「これは長距離輸送用です。係員が同行する場合もあるので寝泊まりできるようになっています」プリンスがオートシェフからコーヒーを取り出して全員に渡してくれた。


「ドミニクとはどこで会うの?」 プリンスとドミニクが打ち合わせをしていたはずだ。


「マラドーナ自然保護区に入る前の街で拾うことになっています」


「マドラーナ自然保護区?自分の名前を付けているの?」5世紀も前ならともかく、いまだにそんなことをする人がいるんだ、と望は驚いた。


「ええ、以前は国自然保護区だったのを、いろいろと動いて私有にした時に名前も変えています。随分と自己顕示欲の強い人のようですね」 プリンスが軽蔑するように言った。上流階級の間では自然保護のような慈善事業に自分の名前をつけることはいかにもな売名行為であって、慈善ではない下品な行為とされている。


「聞けば聞く程、悪人だなあ、マラドーナって。なんで連邦議員に選ばれているんだ?いくら権力があったって、選挙は無記名だろう?」 リーが不思議そうに言った。


「彼はアフリカ地区を世界一にすると約束して、アフリカの民族主義者や、古い考えの世代に人気があります。世界にはまだまだ差別主義者がいますからああいう人に共感する人もいるのでしょうね」 


プリンスの説明に望もリーもわかんないなあ、と首を傾げた。



1時間程で延々と続く街並みを抜け、低い灌木が生えるサバンナ地域に入った。すぐにプリンスが、道端の低い木の陰にトラックを止めた。ブラクで何かを確認してから後ろのドアを開けるとカーキ色の軍隊風ユニフォームを着た男が滑り込んで来た。


「ドミニク、見違えたよ」 帽子を取った男を見て望が感心して言った。


「そうね。100歳は若く見えるわ」 ミチルも驚いている。


「そうかい?有難う。一時的な処置だが、身元を隠すには歳をごまかすのが有効だからな」 ドミニクがちょっと得意そうに言った。


「その制服がマラドーナの軍隊のですか?」 プリンスがは彼の来ている服を見ている。


「ああ、漸く手に入れることができた。あいにく時間がなくてこれ一着しかないんだが、本当にそれで大丈夫なのか?」


「望、どうですか?」


「うん、大丈夫だと思う。ちょっと待ってね」 望は念入りにドミニクの制服を見た。前後左右からじっと見つめる望に、ドミニクが少したじたじとした。


「よし、わかった。じゃあやるから、ハチ、お願いね」 望はそう言うと制服のイメージをインターフェイスを使い詳細に描き、それをハチに送った。次の瞬間、望達4人のグリーンフーズのユニフォームが、ドミニクと同じカーキ色の軍服になった。


「ほお、これは凄い。これなら近づいてもわからないな」 顔を望の服に近づけてじっと見てからドミニクが感心して言った。


「この間マックの家に行った時に、研究室で防護服を作って貰ったんだけど、何着も作るのも大変だから、好きなように見かけを変えられるのにしてもらったんだ。ほら、車の外装イメージ用のがあるでしょう?あれの小型をつけて貰ったんだけど、先週できてきたから、ちょうど良かったよ。試運転だね」


「成程。ウォルターがいなくなっても、研究室の技術は世界一だな、相変わらず」


ドミニクが調べた見つからずにマラドーナ自然保護区へ近づける道筋をトラックに指示して、全員潜入の準備を始めた。 と言っても、望の準備は背中のリュックにカリの鉢を入れる事ぐらいだったが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ