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137. ミチルの笑い上戸

ブレナン博士には散々引き留められたが、リーが嫌がるのもあって望達はそのまま帰ることにした。


「何だか俺を見る目付きが怖いんだよ」 帰りのジェットの中で、リーはそう言って身震いするふりをして見せた。リーはGEなのでその検査を担当しているブレナン博士にはわかるんじゃないかと不安なようだ。わかっても何かするような人じゃない、と望が言って少し安心したようだが、それでもあんまり近くにはいたくないらしい。


「それにしても望があんなにとぼけるのがうまいなんて驚いたよ」 話題を変えようとしたのか、リーが望を見て賞賛するように言った。


「俺はてっきりあの大統領の視線に負けて何もかも話してしまうと思ったぜ。俺だって喋ったかもしれない。あの人のオーラは凄いよな」


「とぼける?何のこと?」 望はリーが何を感心しているのかわからない。


「リー、望がとぼけていると思ってたの?」ミチルがそう言ってお腹を抱えて笑い出した。プリンスも苦笑している。


「え、違うのか?」 リーがミチルを見て、プリンスを見た。それから望を見て非常に残念な子を見る目付きになった。


「望、まさか本気であれを言ってたのか?」 リーに訊かれたが何のことがわからない。


「だから、何の事?」 ミチルが涙を流しながら笑い続けているので、段々ムッとしてきた。


「大統領が連邦の技術より進んだ技術を持っている誰かがいたら、連邦が危険だという話を望にしましたよね?」 プリンスは笑いをこらえているようで、少し苦しそうにしながら説明しようとしてくれた。


「してたよ。だから僕はそんな人が本当にいるならとっくに有名になってるはずだと言ったんだよ。それが見つからないなら、そんな人はいないと考えるのが当然だろう?今の社会ではそう言った才能を隠しておくのはほぼ無理だもの。大統領は心配しすぎだよね。まあ、お仕事柄、そういう心配も必要なんだろうけど大変だよね」望は心配性の大統領に同情していた。


「望、お前ね、あの会話のどこからそんな感想がでるんだよ! ハンセン博士の裏をかいた技術、ミラクルフーズの極秘資料や、副大統領の極秘情報をハッキングした技術、って全部お前を疑って訊いていたんだろうが!」 リーが呆れたように叫んだ。


「えっ、僕を疑ってたの? そんなはずないと思うけど。僕にそんなことできるわけないじゃないか」


「でもやったのは望、貴方よ。貴方のLCがやったことは貴方かやったことと同義でしょ」 漸く笑いを収めたミチルが目元の涙を拭いながら、望に宣告した。


「僕がやったの?」 何だか釈然としない気持ちで、プリンスの方を見た。プリンスは目をそらして窓の外を見ている。


「プリンス、あれってプリンスとハチがやったんじゃなかったっけ?僕何もハチに頼んだ覚えがないんだけど」 


「望様、望様に危険を及ぼす外的を取り除くのは、望様のLCとしての私の役目です。望様からも、望様とご家族、御友人が危険な場合には、いちいち細かい指図を待たなくても良い、とのお言葉を戴いております」 ハチが執事姿で現れ、丁寧に頭を下げてからそう言った。


「確かにそれはお願いしたけど」 何も言い返せないので、その件については諦めることにした。


「じゃあ、大統領が心配していた連邦よりも高い技術って、ハチの事?」 望が誰にともなくそう言うと、プリンス、ミチル、リーが揃って頷いた。ハチは少し得意そうに見える。


「ハチ、本当に連邦の技術より優れているの?」 疑わしそうにハチを見た。


「私は学習するLCです。先日連邦政府のファイル侵入に多少手間取りましたが、その後改良しまして、現在では何の問題もございません」 


「連邦政府のファイル?そんなことしてたの?ダメ、なんじゃないかなあ?」 自信なさそうにプリンスを見ると、また眼を逸らされた。


「プリンス オルロフからは、絶対にばれなければ構わない、とのアドバイスを戴きました。あの時点では100%足跡を残さない、とは言えませんでしたが、現在でしたら100%バレません」 自信ありげに答えるハチに、プリンスが振り向いて、感心している。


「ばれなければって...プリンス...」 望が呆れてプリンスを見ると、今度は眼を逸らすことなく、望を見てにっこりと笑った。


「大統領の心配は望がその技術力で、連邦に害をなすのではないか、という事でした。でも、望の人となりを見て、望がそんなことをしないとお分かり戴けたのでしょう。ですから、これ以上の事情聴取はないはずです。ハチもご苦労様でした」 プリンスの言葉にハチは一礼すると姿を消した。


「僕もうプリンスにハチをあげた方が良くない?」 まだ納得のいかない望が少し嫌味っぽく呟いた。


「私は望様のLCです。どうかそんなことは冗談でもおっしゃらないで下さい」 とハチの声が聞こえた。


「そうですよ、望。私のブラクも心配しますから、そんな事言わないでください」 何故か息が合う二人(一人と一台?)から叱られた。




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