129. 大統領官邸なんて目じゃない?
週末、プリンスのジェットでA&Aの家に向かった。ドミニクへの入国審査も簡単だった。望はもしかしたら彼の入国に何か問題があるんじゃないかと心配していたが杞憂だった。どうやらこちらの企業とも付き合いがあるらしく毎月のように来ているらしい。
名前で呼んでくれ、と懇願されたので4人共(今日はリーも一緒だ)ドミニク、と呼ぶことにして、自分達も名前で呼んでくれるように言った。最初バーンスタインが仲間に加わった事に驚いたリーだが、プリンスの説明で納得していた。
「あれは牛かい?」 家に着いて、地下3階のガレージから地上に上がると、大きな窓から見えた外の光景にドミニクが驚いている。
「ウォルターの家は連邦の大統領官邸以上のセキュリティだと聞いたことがあるんだが、この家が本当にそうなのかね?」 ドミニクの質問に、望は首を傾げた。
「マックが住んでいたのはここだけど、そのお話の家がここのことなのか僕にはわからないや。確かにセキュリティは良いと思うけど、まさか大統領官邸とは比べられないんじゃない?普通の牧場だよ」
ね、と言うようにプリンスを見ると苦笑していた。ミチルが鼻で笑い、リーが答えた。
「ここを普通の牧場と言うのは望位だろうな。大統領邸の事はよく知らないが、ここは大気圏外からの攻撃にも耐えられる設備があるんだぜ」 何故かリーが得意そうだ・
「へえ、そうなんだ」 ドミニクより、望が感心している。
「家を案内してもらった時に説明されたでしょ?聞いてなかったの?」 ミチルに怒られた。
「家の案内? それはわしにもして貰えるのかね?」ドミニクが食い付いた。
「望が良ければ、構わないんじゃないかしら。というか、望も一緒にもう一度ハチに案内してもらった方が良さそうね。一度じゃ覚えきれなかったらしいから」
「え〜っ」 嫌そうな声を上げた望に、プリンスが宥めるように言った。
「ドミニクは初めてなのですから、案内してあげたら良いのではありませんか?」
「悪いけど、俺はパス。今日こそ地下6階の小型宇宙船を全部見るつもりなんでな。明日は早く出るんだろ?又後で」リーは忙しなくそう言ってさっさとまたエレベーターに乗って行ってしまった。逃げられた。
「この家の中なら護衛はいらないわね?私は護衛訓練の進み具合をチェックしてくるわ」ミチルは単に自分が体を動かしたいだけじゃないか。
「悪いな。だがもし案内してくれるならありがたい。この家の事は誰も詳しくは知らないから、興味がある」ドミニクが期待に満ちた目で望を見た。
「私も一緒に周りますよ」 プリンスが優しい。
「そんなに期待されてがっかりしたら悪いけど、僕でよければ案内します。いや、案内するのは僕のLCなんだけど」望が諦めてそう言うと、執事姿のハチが現れて、優雅にお辞儀をした。
「では、私がご案内致します」
地下25階から順番に案内し終わった時にはもう日が暮れて、夕飯の時間だった。
「噂以上だな。大統領官邸なんてこれに比べれば一般家庭程度のセキュリティだ」 と言うのがドミニクの感想だった。




