114. 今日のニュース
「お疲れ様」 博士を客室に案内して、リビングルームに戻ってきた望に、ミチルと話していたプリンスが言った。
「プリンスこそ、ごめんね。僕のせいでいろいろと迷惑をかけて」 望が済まなそうに言うのをプリンスが遮った。
「私は迷惑などと思ったことは一度もありませんので、そんな悲しいこと言わないでください。望と友達でいられることを思えば、これくらいのこと、なんでもありません」優しく言われて嬉しいけれど、やっぱり申し訳ないと思った。
「確かに、望の迷惑度合いが指数関数的に大きくなってるわよね。ミラクルフーズはまだしも、業界2位のザ ファースト、今度は連邦政府が相手なんて」ミチルが望の申し訳ないという気持ちを更に抉った。
「連邦政府からの僕のGE疑惑は晴れるって博士が言ってたから、そちらは大丈夫、だよね?」確かめるようにプリンスと見ると、プリンスが安心させるように頷いた。
「その件は博士が証言してくれるはずです。もともと言いがかりですし、何があっても望のせいではありません。望が気に病む必要なありません」プリンスが強く言ってくれるが、何があっても、ってなんだろう?
「えっと、プリンス、何かあるの?」プリンスがさりげなく目をそらしたので、ミチルを見る。
「ミチル、研究所はあれからどうなったの?」
「大したことじゃないわ。ハチがうまく痕跡を隠したから、副所長は研究所内に裏切者がいて、私達を逃がしたと考えたみたい。たまたま姿の見えないセキュリティの男が、大統領のいるニューヨークに向かったので(これは勘違いだけどね)あの男が大統領の放ったスパイだと考えたのよ。それで慌てて副大統領のプライベートラインに連絡を入れて指示を仰いだってわけ。副大統領も慌てたんでしょうね、いくらプライベートラインとは言え結構自由にしゃべってたわ」
「まるで見て来たみたいな言い方だけど…」 望が首を傾げた。
「まあね。望も見たかったら今日のニュースを見たらいいわ」
「今日のニュース?」
「ハチがあれからも研究所をモニターしてましたので、副所長と副大統領の会話はイメージ付きで記録されてたわけです。ハンセンにとっては運が悪かったですね」 プリンスが付け加えた。でも、それでどうしてニュース?
「ハチ、今日のニュースで研究所に関係のあることがあったら見せてくれる?」
「…かしこまりました」 一瞬間があったような気がするけど、気のせいだろうか?
次の瞬間大手のニュースサイトのトップニュースが眼前に流れた。