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106.コージ ブレナン博士

「これって教会?」白いドーム型の高い天井と、午後の光を通して美しい天使の絵を浮かび上がらせるステンドグラスを見て、望が思わず声をあげた。


「はい、この建物は、以前は大きな教会でした。歴史的建造物ですので外観には殆ど手を入れておりません。研究室の殆どは奥の別館と、地下にあります。この部屋は以前礼拝堂として使用されていたのですが、現在は職員の休憩室となっています」 案内をしていた職員が丁重に答えた。


「そうですか。ご説明いただき、有難うございます」 望は自分が驚いて発した声に返事があったことに少し驚いてお礼を言った。


 大きな部屋の周りにはアーチ型のドアが幾つかあり、その一つを開けて中へと促された。中はこじんまりとした部屋で丸いテーブルに4人分の皿とカトラリーが置かれていた。


「所長は間もなく参りますので、どうぞご自由におかけになってください。お飲み物はいかがですか?」 テーブルの横に控えていた職員が、案内してきた職員に頷いてから望達に訊いた。


「僕は結構です」 望の言葉にプリンスとミチルも何もいらない、と返事をして、椅子に腰かけた。


すぐに奥のドアが開いて急ぎ足で30代に見える男性がやってきた。聞いていたような偉い博士にしては若すぎるかな、と望が考えていると、プリンスが小声てあれがブレナン博士だ、と教えてくれた。


「お待たせしたかな?」そう言いながら最後の席に腰を下ろした。黒髪、黒目、中肉中背、穏やかな顔をした人で、望は肩の力が抜けるのを感じた。望が気を緩めたのを感じたミチルが軽く肘でつついてきた。


「いえ、今ご案内戴いたところです、ブレナン博士」 とプリンスが答えた。


「それは良かった。私がここの所長をやっているコージ ブレナンだ。天宮望君、柳 ミチルさん、アレクサンドル オルロフ君だね?」それぞれの顔を見ながら確かめるように名前を呼ばれた。望達はそれぞれ頷いて、挨拶した。


「とりあえず、お昼にしようか。僕は生まれは日本地域なんだけど、中華料理が好きでね、特に皆で自由にとって食べる形式が気に入ってるんだよ」 ブレナン博士はそう言って横に立っていた職員に合図した。


 運ばれてきたのは大きなお皿に盛られた料理で、何種類もあった。それを丸テーブルの真ん中に置いて自由に好きな物を取るらしい。それぞれの前には中国茶らしいお茶が置かれた。

 緊張していた望も、美味しそうな料理に空腹を思い出し、手前のお皿から料理を取って食べ始めた。


「これって、マナフルーツの?」 薄い衣をつけて軽く揚げてある料理を一口食べて、目を見張った。豆腐のような味と食感だが、甘辛い味付けが美味しい。ミチルの好きな味だったらしく隣でミチルが大盛にしている。


「そうだよ。他のも食べてみて、美味しいから」 博士に促されて隣の肉料理らしきものを取って食べてみる。 甘酸っぱいお肉のような味だが、これもマナフルーツだ。


プリンスも色々な料理を取って味見をしている。どうやらどれもマナフルーツらしい。


「こんな食べ方もあるんですね」 望が感心して言った。


「マナフルーツはそのままで十分美味しいので、あまり料理方とかは考えたことがありませんでしたが、これはこれでまた違った美味しさが楽しめますね」 プリンスが感心したように言った。


「確かにマナフルーツは素晴らしく美味しいし、栄養バランスがほぼ完璧だ。僕も普段はそのまま食べているよ。あのクロワッサン味のが、特に好きでね。君達のように若くないからね、クロワッサンなんてあんまり食べると健康に悪いから食べられなかったのが、あれなら好きなだけ食べられるのが嬉しいよ。それでも、たまにはこうして違った味付けで楽しむのも良いだろう?」 得意そうに言う博士に、ちょっと驚いて、一体この人幾つなんだろう、と思ってしまった望だ。

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