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95. バースディパーティ ?

「Happy Birthday!!」 A&Aからネオ東京にあるプリンスの家に戻った望達が、家のドアを開けると盛大に音楽が鳴り、花吹雪が散った。びっくりしてドアを入ったところで立ち止まった4人と一匹、そして一本にわっと人が押し寄せた。正確にはプリンスの周りにだが。


「有難うございます。でも、私の誕生日は明日ですが、おじい様」 プリンスが祖父にしっかり抱きかかえられながら抗議する。プリンスの誕生日は1月15日、今日はまだ14日だ。明日の誕生日には例年通りセントピーターズバーグの家に祖父母に会いに行く約束だったはずだ。


「クリスマスもイブの方が賑やかじゃないの。私達もイブをにぎやかに祝って、本番は厳かに、アレクサンドルとゆっくり過ごす方が良いと思ったのよ」


「私の誕生日をクリスマスと同列に話すのはやめていただけますか、おばあ様」プリンスが頭を抱えている。


「とにかく、中へ入れ、皆待っている」


「皆?」 プリンスのおじい様に連れられて、家で一番広い部屋に入ると、そこは以前に見たすっきりとした大広間ではなくて、まるで昔の社交場だった。 舞台が出来ていて、その横には人間の楽団がクラッシックを奏でている。あれ、確か有名な楽団じゃなかったっけ? そういうことに左程強くない望でも知っているようなユニフォームを着た指揮者がいた。部屋の一部にはブッフェ形式の食事が誰がこんなに食べるか、というほど並べてある。 その中でも一際目を惹くのは、色とりどりの美しい果物、グリーンフーズで売り出している新種の果物マナフルーツシリーズだ。驚きから素早く回復したらしいリーが、早速その一角へ向かっている。何しろ、夕ご飯がまだで、燃費の悪いリーはさっきからお腹がすいたとぼやいていたので我慢が出来なくなったようだ。望は、まだ驚いている。

「ミチル、何人ぐらいいるのかな?それに、この部屋こんなに大きかったっけ?」 ミチルにこっそり訊いてみた。ちなみにプリンスは祖父に連れられて皆の真ん中に連れていかれ、姿が見えない。


「ざっと見たところ300人位ね。この部屋は確かに大きかったけれど、これほどではなかったはずだわ。ダンスコーナーまであるもの。多分出かけている間に改装したんじゃないかしら」 ミチルも呆れた口調だ。


「プリンスの誕生日は毎年賑やかだけど、今年は特別凄いね」


「多分、17歳の誕生日に意味があるんじゃないかしら」


「そうなの? 成人は18歳だよね?」


「18歳になったら大人だから、17歳が最後の子供としての一年だ、という考え方で、特別に盛大に祝う事がある、と聞いたことがあったような」ミチルもあまり自信がなさそうだ。


「へえ、僕達の時は誰もそんなこと言わなかったよね」 望もミチルも、ついでにリーも昨年17歳になっている。


「まあ、プリンスだから」


「そうだね、プリンスだものね」 二人で納得していると、リーが山盛りのお皿を持って戻ってきた。


「二人とも、食べないのか?世界の珍しい料理が面白いぜ」 リーが小さな丸いケーキのようなものをつまんで美味しそうに食べながら、ミチルに勧めた。ミチルが断ったので、がっかりしている。悪いと思った望が、リーから受け取って、口に入れた。何故かリーが慌てている。


(辛い!) 思わず涙目になってしまった。 世界中の辛い物を合わせたような辛さだ。あまりの辛さに口がきけない望にリーがどこからか水のグラスを持ってきて手渡した。グラスを飲み干しても辛さが引かない望は、恨めしそうにリーを見た。


「ごめん、望。望に食べさせるつもりじゃなかったんだ」 必死に謝るリーに今度はミチルが冷たい目で怒っている。


「それを私に食べさせるつもりだったわけね」


「俺もさっき初めて食べた時は辛くて涙がでたぜ。でもこれ、すごく辛いのと、大して辛くないのがあるんだよ。どっちにあたるか、はっきりはわからないからな」 言い訳しているが、ミチルに辛いのが当たるのを見越して持ってきた事実は隠しようがない。後でひどい目にあうのは間違いない。


 望達が騒いでいる間に、プリンスが舞台の上に上がり、このサプライスパーティのお礼を述べた。それから、ダンスが始まった。望は、(これが社交界なんだなあ)などと感心して眺めていた。リーは慣れているらしく、ダンスフロアで華麗なステップを披露している。


「僕、なんだか場違いな感じがするんだけど」 部屋に戻ってもいいかな?


「私もそうよ。でも、プリンスの誕生祝なんだから部屋に戻るわけにいかないでしょ」 訊く前に却下された。


「それにしても、随分若い人が多いね。プリンスのおじい様、おばあ様関係だから、もっと年配の人達が多いと思った」着飾った若い女性がやけに多い気がする。


「馬鹿ね。わざわざこんなパーティを開いて、年寄ばかり呼ぶわけがないでしょ。上流階級でよくある、あれよ。プリンスの結婚相手を見つけるためのパーティよ」 


「え~っ、結婚!」 あんまり驚いて、大声を出してしまった。






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