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11.ミチルの夢とプリンスの乳搾り

ミチルの幼い頃の思い出です。

その夜、ミチルは十一年前の夢を見ていた。


 ミチルと望が5歳になったばかりの夏だった。


 望の両親が宇宙に行った後で、ミチルは望と一緒に、京都郊外にある望の祖父の家に滞在していた。




「ミチル、まって!」


 ミチルは振り返ってため息をついた。


 家からさっき子猫が見えた丘の上までは100メートルもないが、急な坂道になっている。 


 ミチルはもう大きいから早く歩けるが、望は小さいので歩くのが遅い。


「はやくしないといなくなっちゃうじゃない」


 いらいらしながら、それでも望を待って手を引いてやる。


「ミチル、お前はヤングマスターのお守り役だ。何があっても望様を守るんだぞ」といつもいつもお爺様に言われている。


 望が小さくて弱いから、強いミチルが望を守ってやらなくてはならないのだ、とミチルは理解していた。


 ミチルにとって望は、自分に従う子分のようなものだった。だから望を置いていくわけにはいかないのだ。


「あっ、いたよ!」


 望が突然叫んだ。慌てて前をみると、公園にいるリスより小さい黒い猫がいた。真っ黒なのに顔だけが真っ白で面白い。 


 ミチルは急いで望の手を離し、子猫に駆け寄って抱き上げようとした。


「ギャー」


 猫は体に似合わない大きな声で鳴くと、ミチルの手を引っかいて逃げ出し、後ろにいた望の胸に駆け上がった。望は慌てて猫を抱きとめた。


 ミチルの手には薄い赤い線がついている。 


 「痛い!何するの、この猫」

 ミチルは手を伸ばして猫の首を掴もうとした。


「だめだよ!怖がってるんだから」


 望が子猫を抱いたまましゃがんで、体で猫をかばおうとした。


「何にも怖がることなんかしてないでしょ。私にも抱かせて!」


 望はしぶしぶ腕を解いたが、ミチルが手を伸ばそうとすると、子猫は必死になって望にしがみつく。


「ミチル、やっぱりだめだよ。ミチルが怖いんだ。僕がミチルは怖くないって言ってきかせるから、あとでね」


 いつもミチルの言う事には逆らわない望が、猫をしっかりと抱きなおすと、先に家に向かって歩き始めた。


 いつもミチルが「守って」やっているのに、ミチルの言う事を聞かないなんて。


「待って。私が抱いていくっていってるでしょ!」


 手の痛みもあってカッとなったミチルは、望の腕をつかんで無理やり引っ張った。望は痛さの余り泣き出したが、猫は放さないままだ。


「ミチル、何をしているんだ!」


「父さん」


「望様の手を放しなさい!」


 厳しいおじいさまと違い、何をしてもミチルを叱ったことのない父さんが見た事もないような怖い顔をしている。


「だって、望が言う事をきかないのがいけないのよ!」


「ミチル!」


 父さんは乱暴にミチルの手を望から引き離すと、そばにいた使用人にミチルを部屋へ連れて行って出さないように命じた。


 それから、驚いて泣き止んだ望を抱き上げ家に向かった。


 望はどこも怪我なんかしていないのに。ミチルは手に怪我しているのに。


 その日の長い説教でミチルは、「お守り役」というのは、望がミチルの子分になるのではなく、むしろミチルが望の子分になるのだ、ということを初めて知ったのである。




 ミチルは目を覚まして、涙が出ているのに気がついてため息をついた。


 なんであんな昔の夢をみたのだろう。


 久しぶりにあの忌々しい猫を見たせいに違いない。


 あの後、望の祖父が来て、そんな昔の習慣を気にする事はない。望と友達になってくれればいいんだよ、と言って頭を撫でてくれたが、しばらくミチルは望と遊ばなかった。


 学校に入っても、他の友達を作って望とは行きと帰りが一緒なだけだった。


 望が体の大きな同級生にいじめられているのを見るまでは。


 その時まるで体が、独立した意思があるように動いて、いじめている子を叩きのめしていた。(その子がリーで、その後妙に望と仲良くなってしまった)。


 ミチルの望に対する感情は複雑だ。


 自分より弱くて小さい望を守ってやるのはいい、それに望は大抵は素直で可愛い。


 でも何故望をマスターと崇め奉って望の言う事を聞かなくてはならないのか、わからない。(もっともそんな事はしていないが)


  それでも、そうしろと父に言われるのは腹が立つ。


  望に何かあると体が勝手に動くのもいまいましい。


 その上、いつの間にか望の方が背が高くなってしまったのも許せない。(ほんの3センチだが)。


 それでも望から目を離すのが心配でたまらない。


 学校で遺伝子のことを習ってからは、遺伝子操作されたんじゃないかと思っているくらいだ。柳家の先祖ならやりかねない。




「キラ、今何時?」


「04時です」


 まだ早いけど、眠れそうもない。


「キラ、ニュースを」


「ミチル、メッセージが入っています」


「オーケー、プレイ」


 メッセージは同じクラスのチャールズからだった。


 チャールズとは趣味があうので、何回か一緒に出かけたことがある。リーの次に、クラスの中では親しいほうだ。




「ハーイ、ミチル。ミチル達がアンダーへ旅行に行ったって聞いて驚いたよ。実は僕も母についてシドニーに来てるんだ。よかったら、会えないかな?まだ1週間はこちらにいる予定なんだけど、母はカジノに入り浸りで、僕は退屈してるんだ。18歳以下にはあんまりすることがないよね、ここ。連絡待ってるよ」




 ミチルは、ちょっと考えて、リーと望に連絡した。


 自分が眠れない時は、自分のマスターと子分リーにも起きてもらおう。


 昔の夢の腹いせもあるが。




「どうしたの、ミチル?」


 望は眠そうな目を瞬かせながら、それでもちゃんと着替えてミチルの部屋にやってきた。リーはガウンのまま、まだ目を閉じているようだ。


 シャワーを浴びて着替えたミチルは2人にコーヒーを渡しながらチャールズからのメッセージを伝えた。


「チャールズが?それがどうして緊急事態なの?」


 望はわけがわからないという顔をしている。


 リーはやっと目を開いた。


「チャールズはどうやって俺達がここにいるのを知ったんだ?」


「え?ミチルがしゃべったんじゃないの?チャールズとは親しいんだろ?」


「私がそんなことするわけないでしょ?家族以外誰にも言ってないわ。うちの家族が他に漏らすことはありえないし。リー、貴方誰かに話した?」


「俺は、家族にも本当のことは話してないよ。クラブで旅行だと言ってきただけだからな」


「僕の祖父は勿論知っているけど、クライアントの秘密は厳守だから、そっちから漏れることはないよ」


「プリンスを起こして聞いてみる?」


「こんな朝早くに起こして聞くほどの事でもないでしょ。まずプリンス側から漏れることはないだろうし。念のために朝食の時にでも聞いてみるわ」


 望とリーは思わず顔を見合わせた。自分たちはどうなのだ?


「とにかく、どう返事をしたらいいと思う?」


「怪しいな」


 リーがコーヒーを飲み干してから呟いた。すっかり目が覚めた顔つきだ。


「怪しいって、誰が?プリンスが?」


「チャールズに決まってるだろ」


「どう怪しいのさ」


「俺たちの誰もあいつに言ってないとしたら、後は政府への届出だけだ。チャールズが俺たちの旅行計画を政府から知ったとしたら、そっちの方が問題だろう?


或いは、本当のことは知らないのかもしれない。ミチルにカマをかけて俺達が本当にアンダーにいるかどうか確かめようとしているのかもな」


「なんでチャールズがそんな事をする必要があるんだ?」


「考えてもみろよ。どこの母親が、カジノツアーに未成年の子供を連れてくるんだ?退屈するのは当たり前だし、第一、邪魔だろ?」


「カジノに入れなくても珍しいところは沢山あるじゃないか。野生動物の宝庫だし」


「チャールズはそんなタイプじゃないわ。野生のカンガルーに囲まれるより、ニューヨークで強盗にあったほうがましだというタイプよ」


 一体どういう奴なんだ?


「俺はもともとあいつは怪しいと思ってたんだ。いつも妙にミチルの機嫌をとって」


「別に私の機嫌なんかとって貰った覚えないわ」


「そうじゃないか。この間の潜水艇だって自分がとっていた一番前の席をわざわざミチルに譲ったりして」


「まだあれを根に持ってるの?自分が座れなかったからって」


「根に持ってるわけじゃないよ。そんな事をする理由がわからない、と言ってるんだ。理由のわからない行動には、必ず何か隠された理由がある。もし、俺に席を譲るのなら、俺と親しくなって将来中国区と繋がりをつけようと思っていると、理解できる。あそこには俺の他にもゴスやリカルドなど有益な繋がりになる奴らが何人もいた。その中で、何故ミチルだ?変だろう?」


「ミチルと友達だからじゃないの?」


「そもそもそれが怪しいんだ。俺にはわざとミチルに近づいたとしか思えない」


「わざと?どういう意味?」


「不自然だということさ」




 ミチルは何かを思い出そうとするように遠くを見つめた。


「そう言われてみれば、少し不自然だったかもしれないわね」


「何が?」


「4月に初めて同じクラスになった時、最初は私のことなんて全く無視していたのに、突然いろいろと話しかけてくるようになったのよね。去年中等部マーシャルアーツ戦で私を見てから日本の武道に興味を持ったとかで、いろいろと聞いてくるの。今思えば去年興味を持ったのなら4月に同じクラスになったときすぐに話しかけて来なかったのは変ね」


 ミチルは剣道、武道の達人だ。


 初等部、中等部とも校内コンペティションのマーシャルアーツ部門で優勝している。


 ミチルは普段は完璧なお嬢様を演じている。


 長い黒髪を腰まで伸ばし、学校主催のパーティでは伝統的な日本の着物姿を披露したりしている。しかし初等部4年で初めてコンペに参加、優勝してからミチルの強さを知らない生徒はいないだろうだろう。




「は、やっと俺様の言うことを信じる気になったか。あいつは絶対に何か隠している。ポリスが生徒を探るために潜り込ませたスパイかもしれないぜ」


「スパイねぇ。ちょっと考えすぎじゃない?確かに不自然な部分はあるけど、それでスパイと決め付けるのはどうかしら。大体私をスパイしてどうするの」


「それはまだわからないよ。とにかく早速見張りをつけよう」


「ちょっと、リー。たったそれだけの事でスパイだなんて、疑い深すぎるよ。ただミチルと友達になりたかっただけかもしれないじゃないか。ミチルは黙っていれば可愛いし」


「黙っていれば、ってどういう意味?」


「それだけじゃない。俺、先月あいつのテストの答案を見たんだよ。あいつは本当の自分を隠している。それは間違いない」


「テストの答案を見たって?テスト中じゃないよね?」それじゃカンニングだ。


「当たり前だろ。学年一優秀な俺が何故テスト中に他の奴の答案なんかみるんだ?」


「誰が学年一ですって?」


「テストの答案をみればかなりその人間のことがわかるんだ。ことにうちの学校のテストは、コンポが殆どで、そのテーマもわざと生徒の考え方、思想、性格までわかるように選ばれている。よほど心理学に長けたものでない限り完全に自分を隠すことはできないようになってる」


「えっ! 学校側がテストを使ってそんなことを調べているっていうの。そんなことを知っていたんなら教えてくれればいいじゃないか」


「知ってたからってどうすることもできないだろう?変に意識すると不自然になるのがおちさ」


「・・・・リー、この前私のテストの答案を随分長いこと見てわよね」


 ミチルがリーを問い詰めようとした時、誰かがドアをノックした。




「皆そろって、珍しく早いですね。皆を起こさなくてはいけないと思っていましたが必要ありませんでしたね。どうかしましたか?」


 外出用の暖かそうな服を着たプリンスが入ってきた。


「たいしたことじゃないわ。チャールズが連絡してきたからどうやって私たちがここにきているのを知ったのかと思ってリーと望に確認していただけよ。プリンスが誰かに話すわけないのはわかっているし」


 望とリーは、顔を見合わせた。僕たち疑われていたのか?


「うちの方から漏れる事はまずないと思いますが」


 プリンスはちょっと考えて


「チャールズ モリ。父親は確か連邦政府財務省にいますね」


「そうなの?よく知ってるね」望が感心している。


「この頃ミチルと親しいようでしたから一応チェックしましたが、別に怪しいところはなかった。ただ、彼の母方の祖父が以前情報局長官だったはずだ」


「私は別に親しくなんか」ミチルがあわてたように言いかけた。


「リーはチャールズがミチルに取り入ろうしてるって言ってたんだよ」


「ミチル、何時ごろから特に君に近づいてきたかわかりますか?」


「そうね・・・何かと話しかけてくるようになったのは5月の半ばくらいかしら。はっきりとは覚えていないけど」


「5月23日」とリー。


「それまで俺とミチルがいると俺のほうに近づこうとしていたのに23日からミチルに話しかけるようになったんだ」


「望がマックと会ったのが確か21日だったね」


「え、そうだっけ?あ、本当だ」


 望がナナに確認して答える。


「それじゃあ、望が標的だったのか。俺はてっきり俺かプリンスに近づくために遠まわしの作戦にでたと思ってたんだが」


「標的?どうして僕が?」


「鈍い奴だな。マックがお前にコンタクトしたのが連邦政府にばれてるってことだろ」


「それで何でミチルなのさ」望が不満そうに呟いた。


「おまえとミチルが幼馴染みで毎日仲良く一緒に登下校しているのは、初等部の頃から知らない奴がいない」


「「仲良く?!」」望とミチルの不満気な声が重なった。


「しょうがないですよ、望。マックの動向はどのシュミレーションにも強い影響があるから、彼に関する情報は連邦政府だけじゃなくてどの企業でも欲しがっているはずだ」


 プリンスの言葉に望は改めてマックの存在の大きさを認識した。


 ここ数百年、政府や大企業はスーパーコンピューターを使って様々なシュミレーションを行い、それを元に方針を決めている・


 この未来予測の正確さは情報の量と質による。


 そのため、政府でも企業でも情報部は最も重要な部門となっている。


 マックの影響力を考えると、彼からコンタクトのあった時点で自分の周囲にもっと気をつけなくてはいけないと気がつくべきだったのだ。


「ごめんね、ミチル。僕のせいで君にいやな思いをさせて」


「今に始まったことじゃないわ。悪いと思ったら今度から私の留守に勝手に一人で遠出しないでよね」


 しょんぼりしてしまった望にミチルが言いつけた。


 望が一人でアンダーへ行ったと聞いた時のショックがまだ忘れられないのだ。


「それよりプリンス、何か用事があったんじゃなくて」


「そうでした。リー、君はまだ着替えていませんね。早くしないと間に合いませんよ」


「間に合わない?どこか行く予定だったっけ?」


「5時半に牛舎に行くと昨日約束しました。牛の様子を見に行きますよね?」


「そうそう、ミルクを絞ってみてもいいってマックが言ってたよね。まだ間に合う?」


 言いだしっぺのくせにすっかり忘れていた望があわてた。


「俺は望とプリンスが行くんだと思ってたよ。なんで俺まで行かなくちゃいけないんだ?」


「ミチルは一緒に来ますよね?折角だから全員で行きませんか」


 プリンスが同意を求めるようにミチルの方をみた。


「そうよ。リー、早く着替えてらっしゃい。まだ寝ぼけてるんだから」


 リーはまだ何か言いたそうにしたが、ミチルに睨まれて部屋を出て行った。望をいじめようとしてミチルにやられた6歳の時から、リーもミチルには頭が上がらないのだ。




「うわ、一体全部で何頭いるんですか?」望が驚いて尋ねた。


 エリオットがメインレジデンスから車で5分ほど行ったところにある牛舎に案内してくれた。


 牛舎は巨大な緑色のドームで、その中は見渡す限りの牛、牛である。


「ここには200頭ちょっといます。あとは隣の牛舎に子牛に乳をやっているのが20頭ばかりいますよ」


 先住民を祖先に持つと思われる牧場の管理人が説明してくれる。


「ここにいる牛は子牛にミルクをやらなくていいんですか?」


 ミチルが聞いた。


「ちゃんとやってますよ。子牛は大体2ヶ月で離乳しますが、何しろ子牛一頭では飲みきれない量のミルクがでるように作られた牛ですからね、絞ってやらないと苦しがるんですよ。 出産のあと2ー3ヶ月が最も多くミルクが出る期間ですが、絞り続ければ出産後10ヶ月はミルクを出します。でもここでは精々6ヶ月しかしぼりません。絞らなければ止まります」


「今のように工場生産のミルクが一般的になる前はひどい扱いを受けてたらしいからね。子供を生んですぐに母牛と離し、子牛は人工ミルクで育てて、母牛は10ヶ月ミルクを絞られ、2ヶ月も休んだらまたすぐに次の子を人口受精で妊娠、10ヶ月で子供を産む、というサイクルでね。3ー4回もこれを繰り返すともうミルクも出なくなって、処分され肉を売られたそうですよ。それが工場生産のミルクが安くなって乳牛がいらなくなったら 数万頭が一斉処分されてね。マックがここを買い取った時に残っていたのが数十頭だけでしたよ」


 想像もできない牛の一生に4人が黙ってしまったのをみて、管理人が付け加えた。


「マックが、野生に還してやれと言ってね、しばらく放っておいたんだけど、最初は分娩にも人の手助けがいるぐらいで、いきなり野生に還るのは無理でね。結局私たちがミルクを貰う代わりに面倒をみてるんですよ。機械を使わずに手で絞ると嬉しそうにするんですよ。人懐っこくて可愛いもんですよ。ミルクを絞ってごらんになるんでしょう?」


「はい、お願いします」望が入り口に用意されたスプレーで手をシールしながら答えた。


 プリンスも真面目な表情でひじの辺りまでスプレーしている。


「リーもきちんとシールしなきゃだめだよ」と望。


「いや俺は見てるよ。こういうことは若い人にまかせるよ」


「若い人って、僕ら同級生じゃないか」


「私も見学させていただくわ」ミチルが慌てて言った。



 望は管理人の手つきを真似ながら恐る恐る牛の乳に手をかけた。


 最初はなかなかうまくいかなかったが、牛が辛抱強く(?)じっとしていてくれるのでしばらくするとうまい具合にミルクを搾り出して備え付けられたバケツに入れることができるようになった。


 得意になって隣を見ると、プリンスがまるで楽器でも弾いているような優雅な仕草でミルクを絞っている。


 プリンスに絞られている牛は気持ちよさそうに目を瞑っている。


 望の牛がうらやましそうに隣の牛を見ているような気がする。


「プリンス、乳搾りの才能もあるんだね」


 望の賞賛にプリンスが絶句した。



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