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83.ミラクルフーズの末路

「冗談じゃないわよ。リーが入ったせいで計画が失敗したら一体どうするつもりだったの?」 ミチルはまだすごく怒っている。


「すべて計画通りに行ったじゃないか。もうちょっと歯ごたえがあるかと思ったけど、セキュリティにも会わなかったし、拍子抜けだぜ」


「たまたまうまくいったからって、いい気になるんじゃないわよ。もし何かあったらどうするつもりだったの?」


「私もミチルと同意見です。今度ばかりは無茶が過ぎましたよ、リー」 リーが助けを求めるようにプリンスを見たが、プリンスも怒っている。何とかしてくれ、というように望を見たが、望だってすごく心配したんだから、二人を宥めるつもりはない。


「リー、僕達凄く心配したんだからね」


「わかったよ。心配させて悪かった」 リーがやっと反省したようで、皆に頭を下げた。


「それで、ビショップ氏は大丈夫なの? 大体なんで誘拐なんかされたの?」


「グリーンフーズの新しい果物の秘密を狙ってたらしいぜ。あの部屋に一人で閉じ込められて、AIの声でずっと質問されてたらしい。かなり混乱してるみたいで、言ってることが良くわからなかったが」


「秘密って何?別にないよね?」 望が首を傾げてプリンスに訊くと、プリンスが答える前に、ミチルが軽く望の頭を叩いた。


「何するの、ミチル!」


「秘密っていったら望の事に決まってるでしょ」このお馬鹿、と聞こえたような気がした。


「そうですね。どうやって開発したのか、どうやって苗を作っているのか、すべては望が関わっているので、極秘事項として緘口令を敷いているので興味を持たれたのでしょうね。実があっても芽を出させることができないでしょうからね」 プリンスがミチルの意見に同意した。


「僕のせいなの?」 驚いて申し訳ない気持ちになる。


「望のせいではありません」 プリンスが力強く言った。


「ミラクルフーズはこれまでかなり汚い方法を使って市場を伸ばしてきました。グリーンフーズの食品への違法すれすれの悪辣な中傷などもありました。 これまで大目に見てきましたが、この機会にこれまでの分もお返ししたいと思います」 やっぱりいい笑顔のプリンスが怖い。




 その後、弁護士団からの連絡によると、ミラクルフーズでは、情報部の一部の職員が、功を焦って勝手にやったと言っているそうだ。その職員は警察に自首し、すべて自分の一存だったと言っているらしい。


「本社に連れてきておいてそれはないんじゃないか?」 リーが報告を聞いて文句を言った。


「やはり、香港の警察ではミラクルフーズに強く出られませんね」 プリンスは当たり前だ、というように落ち着いている。


「確かに、それはあるが、まさかこのままってことはないよな?」 リーがプリンスを見て、確かめるように訊いた。


「この件は、多分それで済まされるでしょうね」 それはないぜ、とリーが怒っている。


「この件は?何か他にあるの?」 ミチルがプリンスの言葉を捉えて尋ねた。


「この間、ハチがダウンロードしてくれたミラクルフーズのデータに非常に面白いことが幾つもありました。出所を明らかにできないので、様子を見ていたのですが、今回の救出作戦中に、たまたま手に入ったとして、公の機関数か所に送りました」


「ハチがデータをダウンロードしてたの?」


「そういえば望に関するデータを消した時についでにそんなこと言ってたな」


「これで、何もしなくても多分大丈夫ですよ」 プリンスがそう言った。



 数日後、ミラクルフーズのこれまでの悪行が一斉にニュースに流れた。中でも、しばらく前の新製品による大勢の死亡事故のもみ消しと、それに関係していた多数の議員、警察関係者などが一斉に逮捕されたことが大きなニュースになった。


 ミラクルフーズは営業停止となり、これから徹底的な調査が入るということだ。まず間違いなくミラクルフーズはこれで終わりだろう。


 望は、やっぱりプリンスのあの笑顔は怖い、と思った。こっそりカリにプリンスを怒らせないようにね、と言った。



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