謀り
冷静に考えれば、当然だった。
王族しか知りえない隠し通路の存在。
当然、王太子妃候補に伝えるなんて、王太子以外居ないだろう。
そもそも、私を地下牢に入れよと命を下したのは王太子である。
脱走するなら、あの庭に行き着くことは当然想定済みだったわけだ。
随分と呆気なく、王太子に捕まった私は何故か王太子の執務室のソファに腰掛けていた。
再び拘束された私の反対側で、呑気に紅茶を飲むのは、ヴォルムス帝国の唯一の王太子。
ゼン・ウィンチェスター・ロナウ・ヴォルムス。
金髪碧眼に、彫刻のように整った容姿。
細身な割に、服の上からでもわかる鍛えられた身体。
男性らしく骨ばった手で、女性のように優雅に艶やかに紅茶を飲んでいる。
王族は、もとから常人とは比べ物にならないくらいの魔力量を誇るが、その王族の中でも、歴史的レベルの魔力量、そして技術力を持っている。
長い歴史を誇るヴォルムス帝国でも、歴史に残る名君になるであろうと皆が口を揃えていう。
「お前は__」
永遠に感じられた沈黙を破るように、ゼン殿下が口を開いた。
「この国を滅ぼしたいと、そう思っているのか?」
カップをソーサーに置いた殿下は、ソファに背もたれながらも、真っ直ぐに真剣な眼差しでこちらを見ていた。
自然と私の背筋が伸びる。
「勿論。そんなつもりは毛頭ございません。」
仮にも、この国の国母となるべくして教育されてきた身。
この国に身を尽くそうこそ思えど、まさか仇なすなど1ミリも考えたことは無い。
私の言葉を聞いて、殿下はホッとしたようにカップに口をつけた。
「そうか。なら安心した。
が、お前にそのつもりは無くても、お告げが出た以上今まで通りにする訳にもいかない。」
静かに頷く。
この先の未来を考えると憂鬱でしか無かった。
「そこでだ。
お前を、俺自ら常に監視することとなった。」
殿下からの思いもしなかった言葉に、縛られたままの私は呆然とすることしか出来なかった。
その時の自分の間抜け面は想像したくもない。




