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作家と主人公の頭脳戦  作者: 寺田結衣
【第一章】転生
3/5

悪役令嬢

正直その後議会がどう進んだかは全く覚えていない。

気がついたら城の地下牢に入れられていた。

石造りのそこは、とても質素だが掃除は行き届いてる様に見えた。

簡素なベッドが壁側に1つ。シンプルな机と椅子が1組。

小さな小窓は鉄格子がガッチリと嵌められて、僅かに外の光を上から取り込んでいた。

見張りは部屋の外にいる上、何十もの結界が張られた部屋から逃げ出そうとは思えなかった。

静かな空気に身を置いていると、不思議と心が落ち着き、さっきまで混乱だらけだった頭もすっきりとしてきた。


ヴォルムス帝国にメディカ家。

これは、私の愛読していた本に登場する単語だった。

つまりは、そう。本の中に入ってしまったんだと思う。

異世界転移かと思ったけれど、エルラドとしての記憶や、視界に入る髪色等から前の私の姿とか変わってしまっているように思う。

前は、社畜だった小野原 結衣(おのばら ゆい)とはうって変わってエラルド・Y・メディカに転生した。

それこそ、私も過労死したのかもしれない。

ここまでは、あの小説にそっくりな展開だけれど、ただ1つ明白に違うのは、転生先が「悪役令嬢」という所だ。

本来の小説では主人公のはずなのに……

とことんついていない。

正直エラルドは私の好きなキャラクターランキング3位には入るくらい、気に入っていた。

美しい容姿に、気品溢れる言動。

自他ともに厳しくも、将来の国母になるのに相応しいキャラクターだった。

けれど、運命が狂ったのはお告げの時。

国を滅ぼすという破滅の魔女がエラルドだと告げられる。

お告げは一般市民には公表されないものの、王室関係者にはもちろん伝わる。当然、王太子妃候補からは外される。

噂好きの貴族達にはたちまちお告げの話が伝わり、貴族から白羽の矢をたてられたエラルドは、精神を病んでしまう。

自身の立場とは別に、密かに想いを寄せていた王太子も煙に巻き、家族も一族の恥として忌み嫌った。

味方が誰一人として居ない、そんな時に新たなお告げが下る。

それが主人公を聖女たらしめたものだった。

下級貴族として、王太子やエラルドと共に同じ貴族学園に通っていたものの、貴族達からいじめにあっていた状況から一転。

皆が主人公を褒めそやし、称え、王太子もまた主人公と過ごす時間が増えるのに比例するように想いを深めて行った。

最終的には、逆ハーレム状態の主人公が精神が崩壊し魔王となってしまったエラルドを、男達と共に討伐して物語が終わる。

もちろん、王太子妃としてハッピーエンド。

本来エラルドは、別に悪女と言うわけでもなく、主人公が王太子とお近付きになっても、精神を病んでも、故意に攻撃するような事はしていなかった。

けれど、噂や偏見で悪女のレッテルを貼られた気の毒なキャラクター。

それになってしまったというのは絶望以外の何物でもない。

とりあえず、今後は自分が死なないように行動したいと思った。

魔王になるなんてごめんだし、今の私はたいして王太子に思い入れもない。

最悪どこか辺ぴな場所でひっそりと過ごすのも良いかもしれない。

というか、主人公は小説の中でハッピーエンドを迎えたが、バッドエンドしか待ち受けていない自分としては、この世界から抜け出すことを最優先にしていきたい。

もしかしたら、もう小野原結衣は死んでしまっているかもしれないけれど。

それでも、この世界に残るよりはよっぽどいい気がする。

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