異世界転生
なんとなく息苦しい。
あれ?何だか凄く長い時間寝ていた気がする。身体も心無しか軽い。もしかして遅刻じゃないのか。
飛び起きようとしても、身体が思うように動かない。
というか、やっぱり息が苦しい。瞼をそっと開けるとそこには美しい生き物が居た。
魚?シルエットは魚っぽいが色味やサイズ感がなんとなく違う。
ん?段々魚っぽいものが集まってくる。え?食べようとしてる?
うそでしょう。生きた人間を食べる魚とかグロすぎる。
というか、あぁ。そうか、ここは水の中。どうりで息が苦しいわけだ。
もう限界かな?段々意識が離れていく…
と、次の瞬間私の身体は一気に宙へと浮き上がった。
「…ゴッホゴホゴホ―」
随分と久しぶりに酸素を吸い込む気がする。
焦らなくてもいいのに、貪るように空気を吸っては吐く。
自分の状況が理解できなかった。全身がずっしりと重く、顔から沢山の水滴が滴り落ちつつも、うつ伏せの状態で辛うじて視界に入ってくる野の花をぼんやりと見つめながら
きれいだなぁなんて呑気なことを考えていると、首に冷たいものが当てられた。
銀色に光るそれは紛れもなく刃であって、初めて目にする本物の剣に恐れるしかなかった。
されるがままに、拘束され、馬車に詰め込まれて連れていかれた先はそれは大層な西洋風の宮殿だった。
バンッバンッ―
木槌を叩く大きな音が聞こえる。荘厳な宮殿に入り随分と歩かされた先には重厚な木製の扉が待ち構えていた。
拘束を解かれないまま議会室の中央へと連れていかれた。
目の前には、高い位置に王冠を被ったいかにも王様っぽいおじいさんが座り、こちらを静かに見据えている。
王の隣には、全身を白の装束で覆った聖職者のような男がいる。顔を覆う布のせいで表情は読み取れなかった。
「今日お告げがあった。」
王が言った。それに続くように白装束の男が1歩前に出た。
「本日明朝に湖に現れたものが破滅の魔女である。と、神託を受けました。
そして、その条件に当てはまったのは貴方ただ1人でした。エラルド・Y・メディカ。」
男に名前を呼ばれた時、私には無いはずの、エラルドとしての記憶が一気に頭に入ってきた。
魔法帝国として大陸で1番の領土と軍事力を誇るヴォルムス帝国の二大公爵家が一つ、メディカ家の長女。
才色兼備、博学才穎、次期皇太子妃として名高いエラルド・Y・メディカ。
そんな自分が、まさか“破滅の魔女”だなんて。本来の自分の姿からも、エラルドからも到底想像できなかった。




