社畜死亡
―プロローグ―
みなさん。
本日はお日柄もよく、とても気持ちの良い朝ですね。
朝日の射し込む自然豊かな山の麓、美しい魚が悠々と泳ぐ湖のほとりでは小鳥が囀り木々が揺れ、まるで音楽を奏でているかのよう…
そう。こんな日は、とても良い転生日和です。
「あ゛ぁ〜!!疲れたぁ……」
とあるオフィスビルのただ1つ明かりのついたフロアで、1人大きく伸びをする。
毎日のように残業三昧。終電の常連となったのはもう2年も前からだったろうか。
家には寝るためだけに帰り、まともに家事もせず死んだように眠る。
とうに女など捨てていた。着飾ったり化粧をしたり、そんな事にうつつを抜かしていたのも入社して1年目だけ。
今では、常にパンツスタイルにまとめ髪、化粧だって石鹸で落とせるようなものしかつけていない。
「うっかり玉の輿にのれるかも……!」
なんて夢は捨てた。社畜上等!自らの人生は自ら切り開くべきだと志してからは仕事が恋人だ。
と、いうのも大きな企業の割になかなかにブラックであるこの会社。
しかも運の悪いことに、その仕事に生き甲斐を感じたのが運の尽きだ。
わりと今の生活には満足していた。ただ身体の限界はいつくるか正直わからないのが心配ではある。
そんな私の唯一の趣味は読書だ。いつも通勤時間に読んでいる。
といっても、文学的なものではなく恋愛ファンタジー小説。
最近ハマっている小説は、私と境遇が似ている主人公で特に気に入っている。
ストーリーは、社畜の主人公がある日過労で突然死。転生先は魔法やら騎士道やら王道ファンタジーな愛読していた恋愛小説本の中。
王道ストーリーで、イケメンに言い寄られながらも紆余曲折を経て運命の人と結ばれる。
王道ここに極まれり!という感じである。
ちなみに、もう何回も読破しているのだがつい何度も読んでしまう。それくらいに好きな小説である。
「―○○駅―○○駅に到着です。」
はっと顔を上げると職場の最寄り駅だった。
今日も激務を終え、1人帰路に着いた。特に忙しかったなぁなんて思いながら家に着くと、突然目の前がぐらりと揺れた。
何が何だかわからなくなって、いつの間にか視界は暗くなっていった…




