2話 これはデートですか?
え、知らない?
呆然とする僕の前で海さんは、またもそのふくれっ面を見せてきた。
「別にいいじゃん、そんなこと。雪は細かいことすぐ気にしすぎ!」
いや、キミが気にしなさすぎなんだって。
思わずそう反論しそうになったけど、そのときふと、僕は別のことに目がいってしまった。
そこにあったのは、新聞ラックである。コンビニの出入口によくある……。
そうだ、新聞だ。新聞にはその日の日付とか色々な情報が書かれているじゃないか!
「ちょ、ちょっと待って」
「ん?」
僕は慌ててコンビニを出ようとした海さんを引きとめて、新聞ラックにある新聞を手に取った。
新聞の1面に記されている日付を見る。
「2018年、12月、24日……!?」
クリスマス・イブじゃないか!
って、気にするところはそこじゃないけど。たしか今年の12月24日は祝日だし、明日からはたしか冬休みのはずだ。いやいや、気にするところはそこでもない……!
「雪?」
「ここはまじでどこなんだ?」
「気にすることなの、それ」
「普通に気にするでしょ」
「石上さんがいないんだから好き勝手やればいいじゃん!」
だから誰なんだ、その石上さんって。
海さんは金持ちだし、もしかして側付きか何かか? まあ、あえてこれ以上は何も聞くまい。話がややこしくなっても困るし。
「いいから外行こうよ」
「ああ、うん」
新聞をラックに戻して、海さんと一緒にコンビニを出た。チャララララン、という独特な音楽を背にして。
***
冷たい空気が頬や耳を刺す。
「はい、カイロあるよ」
気が利くことに、海さんは自分のスカートのポケットからカイロを2つだしてくれて、そのうちの1つを僕にくれた。
ありがとう、とお礼を言ってそのカイロを両手で包んだ。わぁ……、あったかい……。手袋越しからでも充分に伝わるその温かさに、僕はほぅっと白い息を吐きだした。
周りを見渡すと、男の人と女の人が一緒になっている光景が多く見られた。ああ、そっか。今日はクリスマス・イブだからこういう人たちが多いのか。おそらく、全員が恋人同士……。
「はっ!?」
「わ、何?」
ちょ、ちょっと待て?
今日はクリスマス・イブ。
そして一緒にいる男の人と女の人。
しかも夜!
これはもしかして、いやもしかしなくとも僕ら。周りの人たちからしたらカップルに見えているんじゃないか!?
「う、海さんっ!」
「何?」
「勘違いしてたらごめんなんだけど、これはデート!?」
「へ……?」
海さんはきょとん、とした目を僕に向けてきた。その純粋なる青く輝く瞳を見て、すぐに僕は後悔する。
何て馬鹿な質問をしているんだ!
「いやいやいやいや、今の忘れて。今の忘れよう。僕がどうかしていたんだ。ごめん……」
うわぁ……、これがいつもの海さんだったら今頃、平手打ちの1つくらいくらっててもおかしくない……。
うぅ……、どこかで誰かの笑い声が聞こえる気がする。あれは――そう、男子のクラスメイトで1番仲の良い……。思い出したくもないです、はい。
僕が頭を抱え込んで悶絶しているにも関わらず、しかし海さんから何の反応もこなかった。
おや?
不思議に思って顔を覆っていた両手をとって彼女を見ると、すごい顔が真っ赤!
「え?」
「え?」
僕らは同時に声をあげた。
「……いや、あの。海さん?」
「へっ!? え、えっと。あのあの……。ウソ、えっと……」
めっちゃくちゃ動揺している!
いや僕もそうだけど!
僕らは互いにキャパオーバーしたロボットのように、「あの、えっと」などと言語として意味をなさない言葉を発して、ますます慌てだす。
そのとき、視界の端に赤色と黄色のW字のエンブレムが見えた。
「わ、ワクドナルド! ワクドナルド行こうよ、海さん!」
「へ? は? わっ」
僕はキャパオーバーしたロボットのような状態の海さんの手を引っ張って、ワクドナルドのほうへと向かった。




