世界で一番大切な君へ
作中名前は出て来ません。
ストーリーは完全オリジナルです。
でも10月4日生まれの誕生企画です。
詳しくは言えないですが、もしかして?
っと思っていただけ、喜んで頂けると幸いです。
二人への愛は永久です!
10月4日
『誕生日おめでとう』
奴からのお祝いメッセージ
今年で何度目になるだろうか?
最近仕事がお互い忙しくて全然顔を合わせていない。
メッセージを見たら急に声が聞きたくなり履歴欄から通話のボタンを押していた。
出る保証は何もない。
案の定何度目かのコールの後に留守番メッセージへと切り替わった。
そのまま通話終了のボタンを押す。
するとすぐに着信画面が表示され奴から折り返し掛かって来た。
通話のボタンを押すと『もしもし』と久しぶりに聞く奴の声。
「もしもし」
『誕生日おめでとう!最近全然会えなくてごめんな!』
誕生日ぐらい会いたいのにって素直には言えない。
「別に会いたく無いし!」
いつもの悪いクセ。
きっと電話越しの奴は苦笑いしているであろう。
『へぇ〜それは良かった!』
まさかの肯定で返して来る。
「全然良くないっつーのっ!!」
俺は怒鳴って電話を切った。
悪いのは素直じゃない自分だと、充分に分かっている。
折角久しぶりの電話だったのに...
「バカだなぁ〜オレ...」
切ってしまった電話を後悔しながら見つめる。
掛け直して......くれないよな。
鳴らない電話。
諦めてテーブルに置いた。
いつものようなやり取り。
これで奴との関係性が変わる事もない。次に会う時には、何らいつもと変わらず何事も無かったかのように接する。
もう何年も前からそうだったように。
次に一緒の仕事はいつだろうか?
今の所スケジュール表には奴との仕事は記されていなかった。
電話をしてどのくらい時間が経っただろうか?
深夜のバラエティー番組を何となく見ていると急に来客のチャイムが鳴る。
こんな深夜に誰が?
友人がサプライズでお祝いでも来たか?モニターに映っていたのは、まさかの奴だった。
俺は何も言わず鍵を開ける。
暫くして玄関先のチャイムが鳴った。
ドアを開けたら奴は照れたように笑い
「よう!」と手を挙げた。
そして後ろに隠していたもう片方の手を差し出される。
そこには綺麗な花束。
「日付け変わっちまったけど、誕生日おめでとう」
柔らかく笑う奴の笑顔。
まさか会いに来てくれる何て思ってもみなくて...嬉しくて嬉しくて泣きそうだ。
なのに又嬉しさを隠すように嘘を付く
「花束何て管理が大変だっ!」
そう言いながら花束を受け取る。
「まあまあバケツでも入れとけよ!」
バケツって...大して気にもせず色気の無い返答...
取り敢えずテーブルの上に花束を置く。
「本当は来るつもり無かったんだけど」
ソファーに座りながら、ちょっと奴は不機嫌そうに口にする。
「だろうな」
そんな事は分かっている。
じゃあ何でわざわざ来たんだよ。
不機嫌そうな奴の隣に俺も座った。
暫くお互い黙り込む。
「明日早いのか?」
沈黙を先に破ったのは俺。
「ああ、朝早くからロケ入ってるからな。」
「そっか」
だから来るつもり無かったんだな。
「なのにお前がめっちゃ会いたいって言うから!」
「はぁー?!誰が会いたいって言った?!俺は一言も会いたい何て言って無いだろうが!お前殴られてーのかっ?!」
マジ頭に来るっ!!
会いたいけど忙しくて会えないの分かっているからそんな事言えねって思っているのにっ!
俺は俺なりにお前の事ちゃんと理解しているのに...
「だってお前電話で怒鳴ってたじゃん。あれってそう言う事だろう?」
確かに。否定は出来ないが、売り言葉に買い言葉的つもりだったし、何より会いたいと思う気持ちがあんな会話で通じていたなんて思ってもいなかった。
「マジずっとすれ違いで全然会え無かったし、でも仕事いい訳にしてたら本当にずっと会えないままだなーって思って反省したよ。大切な奴の誕生日ぐらいは無理してでも会いに行くべきだよな?」
奴の言葉に何も言え無かった。
何かを犠牲にしてでも時間を作れば少しでも会える。
確かにそうだよな。
ちょっと保守的になり過ぎていたのかもしれない。
「我慢させてごめん」
奴は呟き俺を抱き寄せ俺達は唇を重ねた。
「♪〜〜♪〜♪〜」
翌朝、気怠さの中アラーム音で目を覚ます。
昨夜は久しぶり過ぎて珍しく、激しく甘い時間を堪能した。
全然余韻から醒めていないのに、隣には奴の姿は既に無かった。
アラーム設定した覚えないけど...
止めると同時に時間を見ると、もう起きて準備しないと間に合わない時間だ。
もう少し眠っていたいのにドラマの撮影に間に合わない。
重い身体を起こし立ち上がるが力が入らず思わずフラつく
睡眠時間と身体を犠牲に俺は昨夜の甘い時間を手に入れた。
「代償が大き過ぎ...」
ボヤきながらシャワーを浴び気怠い身体を喚び起こした。
シャワーから出てそのままになっていたテーブルの上に置かれた花束に目が行く。
そのままにしていたら枯れてしまうだろうか...
でも面倒だよな。
濡れた髪の毛をタオルで拭きながら花束をちょっと恨めしそうに見ているとカードが挿さっているのに気付いた。
小さな一枚のカード。
気になって手にして見ると、見慣れた奴の文字。
『世界で一番大切な君へ』
恥ずかしい奴め...
コレをどんな顔して書いたんだか...
俺は小さなカードを大切に携帯カバーのカード入れに挿し入れた。
「しょうがねーなっ!」
花束を抱え風呂にバケツを用意し、花束を解いて取り敢えず奴の言うようにバケツに突っ込んでおく事にした。
「帰ったら花瓶に入れてやるよ!」
バケツの中の花束に呟き浴室の扉を閉めた。
「今日も行きますかっ!」
気合いを入れて部屋を後にする。
今日も又何気ない一日が始まる。
何気ない毎日の中、ほんの僅かな特別な時間が俺の中で活力へと変わっていく。
暫くは大丈夫そうだ。
俺は小さなカードが入っている携帯を握り締め雑踏の中歩き出した。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございます!
誕生日企画なんて何年ぶりに書いた事やら。
彼らも歳を重ねてきっと良い関係が気付けている事でしょう!
連載中の方も合わせて読んで頂けると幸いです。
こちらは完全オリジナルです。
本当にありがとうございました。
希流優姫