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ゾンビアウト  作者: 黒咲
第1章 伊達文太郎18歳の冬
21/24

20話

 

 須藤は怒り狂った表情で柏木と島木に向かって走り出した。しかし島木と柏木は冷静な表情で須藤を見ている。そして島木がおもむろに須藤に向かって手榴弾を投げた。

 手榴弾はゴロゴロと音を立てて須藤の足元に転がる。手榴弾に気づいた須藤は慌てることもなくすかさずジャンプした。

 須藤の跳躍力は信じられないような高さで、まるで羽が生えているようだった。その直後、手榴弾が爆発する。須藤は驚異的な跳躍力で爆発を回避したのだった。そしてそのままの勢いで柏木と島木の所へ着地しようとしていた。


 須藤は柏木と島木を押しつぶそうと考えていた。

 

 だがそれに気づいた柏木は右、島木は左と横に転がりながら須藤の攻撃から逃れた。

 

 須藤は着地と同時に近くにいた島木に襲いかかろうと走り出す。だが、その瞬間、足に何かがぶつかったのがわかった。須藤が自分の足元を見ると手榴弾が落ちていた。島木が横に転がる前に落としていたのだった。


 須藤は再び飛んで爆発を逃れようとしたがそれより先に手榴弾が爆発した。須藤は全身血だらけになっていたが平気な顔をしていた。まるで痛みを感じていないようだった。


 そして須藤は島木に向かって走り出す。その勢いに島木の顔が恐怖で歪んだ。右の拳を握りしめ島木に向かって須藤は正拳突きを繰り出そうとした。


 だが、その時、須藤の後ろから柏木の声が聞こえた。


「おい!須藤! お前の相手はこの俺だ!」


 須藤が声のした方を向くとそこには誰もいなかった。須藤はそれが罠だと気づいた。そしてハッとした顔で島木の方を見るとすでに島木はいなかった。代わりに手榴弾が2つ須藤の足元を転がっていた。

 

 須藤は咄嗟に顔面を両腕で守った。その瞬間、手榴弾が爆発した。爆発で煙が立ち込めたがすぐに煙は薄くなっていった。そして先ほど同様、須藤は血だらけになっていた。だが、驚異的なスピードで須藤の傷は回復していく。


 柏木がコンテナの陰に隠れていると後ろから島木が来て声をかけた。


「柏木さん、助かりました」


「島木、無事だったか。安心したぜ……だが見ろ須藤の野郎を。あいつ手榴弾で受けた傷があっという間に回復しているぞ」


「そうみたいっすね。さすがレアっすね。……柏木さん、どうしたらいいんでしょう?」


「……ゾンビの弱点は頭だ。そこを狙うしかねー。島木!俺が囮になる。お前は隙を見て須藤の頭を吹っ飛ばせ!」


「わかりました。こうなったらやってやりますよ!」


「いくぞ!」


 そう言うと柏木はコンテナの陰から飛び出して走り出し須藤に向かってアサルトライフルを引き金を引く。銃弾は全て須藤に被弾するが須藤はそれを物ともせずに柏木に向かっていく。


「くそ! バケモノ!」


 柏木が須藤の頭を狙って銃を撃つ。だが、須藤はまたもや驚異的な跳躍して柏木の銃弾を逃れる。そしてそのまま柏木に向かって着地する。柏木はそれを予想してすでに横に前転して須藤の攻撃を躱していた。

だが、須藤の攻撃はそれで終わらなかった。須藤は着地する瞬間、地面に思いっきり蹴りを入れた。

 

 大きな地響きがなると部屋が地震でも起きたかのように大きく揺れる。


 柏木はその場には立っていられず思わず尻餅をついた。柏木は心の中でしまった!と叫んだ。

しかし、もう遅かった。柏木が顔を上げると目の前に須藤が立っていた。


 須藤は右の拳を振り上げ柏木の頭を正拳突きで潰そうとしていた。だが突如、須藤は柏木の胸ぐらを掴んで後ろを振り返り柏木をほうり投げた。


 投げた方向には島木がいたのだった。


 島木が須藤の後ろから銃で狙っていて須藤はそれを読んでいた。投げ飛ばされた柏木は島木とぶつかる。二人はゴロゴロと地面を転がった。


「うう……」


 柏木と島木はお互いがぶつかった衝撃が激しかったため起き上がれずにいた。痛みに耐えてかろうじて柏木が顔を上げるとすぐ目の前に須藤がいた。須藤は二人の頭を鷲掴みにするとそのまま頭を握り潰そうとした。


 二人は戦闘用ヘルメットをしていたがバキバキと音を立ててヘルメットは破壊されていく。あまりの痛みに悲鳴を上げる二人。


 柏木も島木も、もうダメだと確信した。このまま須藤に頭を潰されて終わりだとそう考えていた。

そして須藤も二人の命を終わらそうと思っていた。だが、その瞬間、不思議なことが起こった。なんと須藤の目の前に人が立っていたのだ。さすがの須藤も驚いた。なぜ?いつの間に全く気づかなかった。

 

 須藤の目の前に立っている人物の顔をよく見ると目が紅く光っていた。それを見て須藤は目の前にいる人物はゾンビだと理解した。

 

 安心した須藤はそのゾンビに命令した。


(おい、お前あっちに行け!)


 だが、そのゾンビは須藤の言うことを聞かずニヤっと笑った。須藤は不思議に思った。なぜ、このゾンビは俺の言うことを聞かない。そう思った。須藤は目の前にいるゾンビに何やら嫌なものを感じた。

 

(こいつ……他のゾンビとは違う。何者だ)


 須藤がそう思った瞬間、目の前にいるゾンビがいきなり腰を落とし全身をブルっと震わす動作をして掌底の突きを出した。その掌底は須藤の顎にヒットした。


 まるで目の前で爆発でも起きたかのような衝撃が須藤を襲った。須藤は両手で掴んでいた柏木と島木を離しそのまま五メートルも後方へ吹っ飛んでいった。


 須藤を吹っ飛ばしたゾンビは当然、古谷だった。古谷は倒れて苦しんでいる柏木と島木を見て声をかけた。


「二人ともよくやったな。この瞬間を待っていた」


 古谷は須藤に向かって歩いていく。須藤は古谷を睨みつけながら立ち上がろうとした。だが、足が震えて立ち上がることができない。須藤はその事実に衝撃を受けていた。


(何故だ、無敵の俺が……なぜ起き上がることができない)


 古谷は動けない須藤の姿を嬉しそうに見ていた。そして文太郎の方を見て話しかけた。


「伊達くん、ありがとう。先ほど須藤に放った技は君が病院で女ゾンビに使った衝撃を浸透させる技だ。見よう見まねだったが私にも出来たよ」


 文太郎は驚いた顔で古谷を見ていた。古谷は一体どこで自分の技を見ていたのだろう?

しかもたった一度見ただけであの技を真似できるとは、それに古谷の放った技は自分よりもはるかに強力で素早かった。


 古谷が須藤の目の前に立つ、須藤は古谷を見上げている。そして古谷は膝蹴りを須藤の顔面にお見舞いした。

 須藤は吹っ飛んだ。須藤はなんとか起き上がろうと古谷がそれを許さなかった。起き上がろうとするたびに須藤は攻撃されその度に吹っ飛んでいく。


 だが、須藤もやられっぱなしではない。


 古谷が須藤の顔面に回し蹴りを入れよとした瞬間、須藤は古谷の足首を掴んでそのまま投げた。古谷は勢いよくコンテナにぶつかった。そしてすかさず須藤がジャンプし古谷に向かって蹴りを出した。

 だがその蹴りは不発に終わる。一瞬で古谷がその場から移動したのだ。須藤は古谷を見失い左右を見渡す。

すると須藤の真上から古谷が飛んできて蹴りを脳天にぶち当てた。その衝撃で地面にひれ伏す須藤。古谷は何度も何度も須藤の頭に蹴りを入れる。


 古谷の怒涛の蹴りが止む。するといきなり須藤がパンチが飛んできた。突然のパンチに油断していた古谷だが両手をクロスして須藤のパンチを防御する。だが、あまりの威力に後方へ吹っ飛んだ。

 

 古谷は感心した表情で須藤を見た。


「さすがレアゾンビだ。私のスピードと威力を持ってしても頭を破壊することが出来ないとは……なんて頑丈な頭蓋骨だ。やはりお前を倒すには伊達くんの技しかないようだな」


 古谷は須藤の周りを超スピードで動き始めた。そのあまりの速さに須藤は古谷を捉えることが出来ない。須藤は古谷の残像を攻撃していた。そして突如、須藤の右腕が吹っ飛んだ。古谷が手刀で須藤の右腕を切ったのだ。信じられないといった表情の須藤。しかし、須藤は古谷を攻撃することを諦めない。残った左腕で古谷を攻撃を繰り返した。だが、その攻撃は何度も空を切る。


 そして古谷は須藤の目の前に立ち打撃が浸透する技を繰り出す。部屋中に凄まじい衝撃音が聞こえた。古谷はニヤッと笑い須藤は古谷を睨んでいる。二人はその場から動かない。しばらく静寂が続く。すると須藤は静かに膝から崩れ落ちた。

 古谷は高々と右手をあげる。そして思いっきり手刀を須藤の首に切り込む。「ドシュ」という音が聞こえると須藤の首と胴体が切り離された。

 

 須藤の首は地面をゴロゴロと転がっていく。勝負が決まった、古谷の勝ちだ。古谷は須藤の首を持ち上げて柏木と島木の方へ歩いていく。須藤との戦いでダメージを受けた柏木と島木だが少し回復したのか、ヨロヨロと起き上がった。

 しばらくなにやら話をしていた3人だったが、文太郎の方に向かってきた。そして文太郎の近くにくると古谷が話しかけてきた。


「伊達くん、ありがとう。君がいなかったら私たちは死んでいたかもしれない。感謝する」


 文太郎は3人の様子を見てなにやら嫌な予感がした。どうやらこのまま無事に帰してはくれないようだ。


「別に礼はいいよ。須藤は死んだ。俺はお役御免だろ?」


 文太郎のその言葉に古谷は微笑みながら首を横に振った。


「伊達くん、残念ながら君をこのままこの街から出すわけには行かない。私達と一緒に来てもらうよ」


「なぜだ! 俺に何の用がある?」


「君はゾンビになる前とはいえあの須藤に勝った男だ。もしかしたら君にもレアゾンビになる素質があるかもしれない。私達の本部に行って研究させてもらうよ」


「ふざけるな! 俺をゾンビにするつもりか!」


「これはもう決まった事だ。抵抗しても無駄だ」


 そう言うと古谷は島木に目配せした。島木は少し複雑な顔をしていたが銃を文太郎に向けた。


「悪いな……伊達。一緒に来るんだ」


 文太郎は抵抗しても無駄と悟り仕方なく言われたままにした。そして四人は先ほど恭子と純一が出て行った扉に向かって先頭が古谷、その後ろを文太郎、柏木と島木の順で進んで行く。


 文太郎が古谷の後ろを歩いていると、古谷が手に持っている須藤の生首がこちらの方に向いていた。須藤の顔はまるで眠っているように穏やかだった。文太郎は須藤の顔を見ながら歩いていた。すると、一瞬だが

須藤の眉が動いたような気がした。ハッとして立ち止まる文太郎。柏木と島木は突如、立ち止まった文太郎を怪訝な顔で見た。


「どうした。早く歩け」


 柏木が文太郎に歩くように促す。しかし、文太郎は恐怖に顔がこわばったまま歩こうとしない。柏木が再度文太郎に声をかける。


「なんだ。どうした?」


 文太郎は柏木の問いに震えた声で答えた。


「い、今、須藤の眉が動いたような」


 柏木と島木はお互いの顔を見合わせた。


「おい、島木、お前、須藤の眉が動いたのを見たか?」


「いえ……気のせいじゃないですか?」


 島木はキョトンとした顔で答えた。だがいきなり文太郎が声をあげる。


「す、須藤は死んでない! 生きてるぞ!」


 突然の文太郎の言葉に驚いた柏木と島木は古谷が持っていた須藤の生首を見た。すると驚いた事に先ほどまで閉じていた須藤の目が開いていた。それを見た柏木は叫んだ。


「ふ、古谷さん。須藤の目が開いている。須藤は生きているぞ!」


 柏木の声に反応した古谷は振り返った。


「何を言ってる。須藤の目が開いてるだと」


 古谷を須藤の生首を持ち上げて確認すると柏木の言うとおり須藤の目が開いていた。流石の古谷も驚愕した。


「なに!」


 その瞬間、何やら物体が古谷の上から落ちて来た。ドンと大きな音がして古谷はその物体に押しつぶされた。

 

 文太郎と柏木、島木は上から落ちて来た物体を見て驚いた。なんと首のない須藤の体だった。


首のない須藤の体は古谷の手から生首を取り上げ自分の首に取り付けた。するとあっという間に首がくっついてしまった。

よく見ると先ほど古谷に切られた腕もくっついていた。


 三人は唖然として表情で須藤を見た。須藤は三人に向かって獣のような雄叫びを上げた。

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