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ゾンビアウト  作者: 黒咲
第1章 伊達文太郎18歳の冬
19/24

18話

 

 柏木と島木は地下の研究施設に降りるとすぐに武器庫に走った。武器庫に着くと二人は武器を取る。


「島木、準備はいいか?」


「はい、行きましょう!」


 そして二人は武器庫を出ようとした。すると突如、扉が開いた。


「誰だ!」


 柏木と島木は銃を構えた。すると扉から一人の男が入ったきた。


「二人とも落ち着け、私だ」


 入ってきたのはこの病院の院長の古谷敏夫だった。


「古谷さん! 無事でしたか」


 柏木が古谷に声をかけた。


「ああ、お前らこそ無事で何よりだ。院長室の監視カメラから見ていたが、よくあの状況からここまで逃げれたな、さすがだ」


「ええ、なんとか。他の研究員たちも無事ですか?」


「無事だ。もうこの町から脱出している」


「そうですか、良かった。それにしても奴らは何者ですかね?」


「わからんが、これから奴らを捕まえて聞き出そう。院長室の扉は開けておいたからすぐに奴らがここに来るはずだ」


「古谷さん!まじですか? この施設で奴らと戦うんですか?奴らの目的はここの施設ですよ」

 

 島木が信じられないといった表情で古谷を見た。


「島木、安心しろ。ゾンビに関する資料はデータ化し本部に全て送った。もうこの施設のパソコンは全て破壊してあるからここからゾンビの資料を見つけるのは不可能だ」


「いや、でも、ここには資料だけじゃなく研究機材なんかもありますし……」


「奴らを捕まえてしまえば関係ない。それじゃあ、柏木、島木行くぞ」


「え! 古谷さんも行くんですか?」


 柏木が驚いて古谷に聞いた。


「ああ、私も戦闘に参加させてもらうよ」


「い、いや、古谷さん。危険ですよ」


「大丈夫だ。心配するな、行くぞ!」


 そういうと古谷は武器庫を出ていってしまった。


「柏木さん。古谷さんって戦闘とか……出来るんですか?」


「無理に決まってんだろう。古谷さん、もう70歳過ぎだぞ。しかもただの研究者だ。戦闘の経験はないはずだ……」


「島木、とにかく古谷さんを追うぞ」


「はい」


 柏木と島木は慌てて古谷の後を追った。


――――


 吉井と部下達が院長室からエレベーターで研究施設に降りて来ると吉井は辺りを見回した。


「ほう……なかなか素晴らしい施設だ」


 吉井は感嘆の声を発した。


「隊長、あそこに扉が」


 部下の一人が声をかけると吉井は軽く頷く。


「行きましょう」


 吉井と部下達が扉を開けコンクリートの壁に囲まれた廊下を進むと扉を見つける。そして吉井の部下がその扉を慎重に開ける。中に入るとそこは巨大な倉庫だった。倉庫内にはいくつものコンテナが無造作に置かれていて吉井と部下達が慎重にコンテナの間を進む。するとどこからか声が聞こえたきた。


「そこで止まれ」


 吉井の部下達がアサルトライフルを構えながら辺りを見回す。声はどの方向から聞こえて来るのかわからなかった。


「お前は古谷か? 観念して投降しろ。無駄な抵抗をしなければ無傷でこの町から出してやるぞ」


「ふん、観念して投降しろだと、悪いがそれはこっちのセリフだ。ただし私はお前を無傷でここから出さないがな」


「なるほど、あくまでも抵抗するつもりですか…… では戦闘開始ですね」


 吉井は部下達に目配せしていた。部下達は左右に別れ移動し始める。そして吉井は恭子の方を見た。


「あなたは私と一緒に来なさい」


 吉井は恭子を連れて後ろの方へ下がって行った。


――――――


「柏木、島木、奴らは左右に分かれたぞ。私たちも左右に分かれるんだ。お前らは右に行け、私は左から行く」


「ちょ、ちょ、古谷さん、何でそんなことわかったんですか?ってか 古谷さんが戦えるわけないでしょ。俺らに任せてください」


「島木、大丈夫だ。私は戦える。行くぞ」


 そういうと古谷はさっさと行ってしまった。


「ふ、古谷さん」


 島木は声をかけたがすでに古谷の姿はなかった。


「島木、今は敵を倒すことに集中しよう。きっと古谷さんのことだ、何か策があるに違いない」


「そ……そうですね。わかりました。行きましょう、でも古谷さん丸腰だったのじゃないでしょうか? 」


「古谷さんが向かった方に武器が置いてあるのかもしれん。島木、とにかくさっさと敵を片ずけないと状況が悪くなる。行こう!」


「りょ、了解です」


 柏木と島木は慎重にコンテナの間を進んでいった。しばらく進んでいくと吉井の部下がこちらに向かってくるのがわかった。柏木は島木に目で合図をする。すると島木が頷くと突如、敵めがけて発砲した。


 「ぐあっ」


 島木の銃弾が敵を二人倒した。島木に気づいた敵が島木に撃ち返してくる。咄嗟に島木はコンテナの後ろに身を隠した。


 敵は島木が隠れてるコンテナを撃ちながら進む。敵の銃弾は雨のように撃ち込まれる。島木はその銃弾に反撃できずにいた。すると、突如敵の横側から銃声が聞こえた。吉井の部下が数名倒れる。撃ったのは柏木だった。


 吉井の部下達が今度は柏木に銃口を向ける。柏木も咄嗟にコンテナの後ろに隠れた。吉井の部下が柏木が隠れているコンテナを撃ちまくる。すると今度は吉井の部下達の上方から銃弾が飛んできた。島木がコンテナの屋根へ登りそこからアサルトライフルを敵に撃ち込んだのだ。そして柏木もコンテナの屋根に移動しアサルトライフルを撃ちまくる。


 柏木と島木が吉井の部下と撃ち合っていると、先ほど古谷が向かって行った方角から銃声が聞こえた。銃声はなかなか鳴り止まない。柏木と島木は古谷が戦闘に巻き込まれたと気づいたがすぐに何も出来ないと判断し目の前の敵に集中する。


 柏木と島木は徐々に敵を倒していく。吉井の部下たちは柏木と島木の強さに圧倒され始めだんだんと焦りが生じ連携が乱れていく。柏木と島木は今までコンテナに隠れながら戦っていたが姿をあらわし吉井の部下たちと正面から撃ち合うと吉井の部下たちは次々に倒れていく。柏木と島木はあっという間に彼らを倒してしまった。


「柏木さん。これで終わりみたいですね」


「島木、あいつを捉えるぞ」


「了解です。古谷さんの方はダメだったでしょうね」


「ああ、もう銃声も聞こえない。残念だがやられちまったか捕まったかだろう。古谷さんのことはもう仕方がない。諦めよう」


「はい」


 柏木と島木が進んでいくと二人の男性と若い女性が立っていた。二人の男のうち一人は吉井だがもう一人は背中を向けているため誰かわからなかった。柏木と島木は銃口を向けながら進んでいく。すると吉井が恐怖に歪んだ顔でもう一人の男を見ているのがわかった。柏木と島木はどういう状況かわからなかったがもう一人の男に銃を向けた。


「おい!動くな! お前、ゆっくりこっちを向け!」


 男が柏木と島木の方を向く、男は二十代前半の若い男だった。そして、男が振り向いた瞬間、柏木と島木は驚きの声を上げた。なんと男の目が赤く光っていたのだ。


「ゾンビか!」


 島木が銃口を男に向け、引き金に指をかける。だが、驚くことに男は声を発した。


「待て。島木、私だ」


 島木は男の声に聞き覚えがあった。


「そ、その声は…… もしかして古谷さん!」


「そうだ、私だ」


 古谷は70歳の老人だ、だが目の前にいるのはどう見ても二十代の若者にしか見えない。柏木と島木は言葉もなく古谷を見ていた。


「二人とも驚くのは無理もない。私は二時間ほど前に自分にゾンビウィルスを注射したのだ。だが、ただのゾンビウィルスではない。何年も前から改良に改良を加えた作り上げた特殊なウィルスだ。このウィルスは人間としての意識も保ち尚且つ肉体も若返り強化されるように作ってある。そうこれは、ゾンビウィルスではなく超人化ウィルスだ」


「超人化ウィルス…… 古谷さん、そんなの注射して大丈夫ですか?」


 島木は目の前の出来事に信じられないと言った表情で古谷に質問した。


「フフ、正直わからん。まだ実験段階だったからな。だが、上層部からの命令だ。打つより仕方なかった」


「上層部の命令?」


「そうだ。この騒動をきっかけにゾンビの存在が公になってしまった。上層部はその責任は私にあると結論づけた。その責任は自分の命で償いをしなければならない。そしてもしこの超人化ウィルスが成功すれば二つの仕事をしろとの命令だ」


「二つの仕事?」


 柏木が古谷に聞いた。


「一つはこの男の正体を調べることだ」


 古谷は吉井を指差した。吉井は無表情な顔で古谷を見ていた。古谷は吉井に質問した。


「確か吉井という名前だったな。お前の部下は全員殺した。誰も助けてくれないぞ、だから私の質問に答えろ。お前はどこの組織の人間だ?」


 吉井は何も言わなかった。


「ふふ、やはり答えないか、ならば痛い思いをしてもらおうか、柏木、島木、離れていろ。この超人化ウィルスの実験も兼ねてこいつとひと勝負してみる」


 それを聞いて柏木と島木は何も言わずその場から離れた。


「そこのお嬢さんも危険だから離れていなさい」


 古谷は恭子に声をかけた。恭子もその場から離れた。古谷を吉井を見る。


「さあ、来い。私に勝たなければここから出れないぞ」


 そういうと古谷は吉井に近づいていく。


 先ほど吉井は恐怖に怯えていたが、古谷が近づいてきてすぐに冷静になった。そしてハンドガンを素早く取り出し古谷に向けて発砲する。

 だが、それよりも早く古谷は動いていた。その動きは目にも留まらぬほどの超スピードだった。あまりのスピードに古谷の残像が残る。銃弾は古谷の残像を撃ち抜いた。


「ふふ、遅い遅い」


 いつの間にか古谷は吉井の後ろに立っていた。吉井は驚いたが後ろを振り向きすぐさまハンドガンを撃った。だが、すでに古谷はいない。

 銃弾はまた古谷の残像を撃った。だが、吉井はそれを予期したようでまたすぐさま後ろ向き、そして引き金を引こうとした。だが突然、吉井は胸に衝撃を受けた。

 古谷の掌底が吉井の胸に直撃したのだ。吉井は五メートルも後ろに吹っ飛んだ。

 

 吉井は咳き込み苦しさのあまり立てずにいた。そして古谷はゆっくりと吉井に近づき胸ぐらを掴んでそのまま持ちあげた。


「さあ、言え。お前はどこの組織の人間だ」


 古谷が吉井に質問する。吉井は苦しそうな表情で答えた。


「だ、誰が言うかクソ野郎。さっさと殺せ」


「ふん、やはり言う気はないか。なら死ね」


 そう言うと古谷は吉井の頭を両手でサイドから挟む、そしてそのまま万力で圧を加えるように吉井の頭に両手を押し込んでいく。


「ぐわぁぁぁ」


 吉井が悲鳴をあげる。


「どうだ、これでも何も答えないか?」


 それでも吉井は何も答えない。古谷がため息をついた。


「どうやら死にたいようだな」


 古谷はさらに力を込めて吉井の頭に圧を加える。吉井は先ほどよりも大きな悲鳴を上げた。そして吉井は自分の腰に手を当て、ベルトに取り付けていたナイフを取り出し古谷の肩に突き刺した。だが、古谷は全く痛みを感じた様子もなかった。古谷はさらに両手に力を込めた。


「まだ、反撃する気力があるとは流石だな。だがここまでだ。死ね!」


 そう言いながら古谷はさらに力を込めると吉井の頭がまるでスイカのように破裂した。


 吉井は絶命した。

 

 古谷の上半身が吉井の血で真っ赤に染まる。


 柏木と島木が古谷に駆け寄る。


「島木。悪いがあの娘を連れてきてくれ」


 古谷が恭子を指差した。島木は頷くと恭子の方へ向かっていった。


「古谷さん、こいつ殺してよかったんですか?」


 柏木が古谷に聞く


「ああ、どうせ喋りはしない。こいつをここに来させた本当の理由は私の能力の実験台にするためだ。上層部もこいつの正体を知ることはさほど期待してない。大事なのは二つの命令のうちもう一つの方だ」


「もう一つの命令…… それは何ですか?」


 島木が恭子を連れて戻ってきた。


「古谷さん連れてきました、どころでこの女は誰です?」

 

 島木が古谷に質問したが古谷は答えずに柏木の質問に答えた。


「もう一つの命令、それは須藤を捕らえる事だ」


 柏木と島木、そして恭子も驚いた表情で古谷を見た。


「須藤…… レアゾンビをですか…… 大丈夫ですか? いくら超人化した古谷さんでもちょっとキツイんじゃないでしょうか?」


 島木が言うと古谷はニヤリと笑い島木を見た。


「もちろん、私だけでは無理だ。お前ら二人の協力が必要だ」


「やっぱり…… 俺らもやるんですね」


 島木が残念そうな顔で言う。


「島木、安心しろもう一人協力者がいる」


 島木は驚いた表情で古谷に聞いた。


「きょ、協力者! それは誰です?」


「伊達文太郎だ」


「伊達ですって!古谷さん、伊達がどこにいるか知ってるんですか?」


「ああ、伊達はこの部屋にいる」


「ええ!」


 柏木と島木は驚きの声をあげると古谷は大声で伊達の名を呼んだ。


「伊達! 出てこい。さっきからずっとここにいるのはわかってる。早く出て来ないと吉田恭子を殺すぞ!」


 そう言うと古谷は恭子の腕を掴んで引き寄せた。


 そしてしばらく沈黙が流れると古谷の前方にあるコンテナの後ろから伊達と純一が出てきた。


「恭子を離せ」


 伊達が古谷を睨みつけながら言うと、古谷は伊達を見てニヤリと笑いながら言った。


「初めまして伊達文太郎くん」

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