表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビアウト  作者: 黒咲
第1章 伊達文太郎18歳の冬
17/24

16話


 恭子は急いで裏口に向かっていた。


 恭子は病院の入り口で自衛隊と名乗った男たちは本当に自衛隊の人間なのか、正直、怪しんでいた。もし文太郎の家で自分たちを襲った人間の仲間だったとしたらまずい。裏口から出た文太郎と鉢合わせしたら捕まってしまう。それを考えると恭子は居ても立っても居られなかった。恭子は必死に走って裏口に行こうとした。すると、向こうの方から池澤が歩いてきたのが見えた。恭子は池澤に声をかける。


「文太郎くんは? もう外に出ちゃった?」


 池澤は息を切らせて走ってきた恭子に驚いた様子だった。


「あ、ああ、もう外に出たぜ」


「そう、ありがとう」


 恭子はそれだけ言うと走って行った。


「おい、待てよ!」


 池澤は慌てて恭子のあとを追った。


「恭子、ちょっと聞きたいことがあるんだ。待ってくれ!」


 池澤が恭子を呼び止めると恭子はめんどくさそうな顔で振り向いた。


「何よ、今、急いでんるんだけど。後にしてくれない?」

  

 池澤はその言葉を無視して話しかけた


「お前、あの伊達ってやつといつから知り合いなんだ? お前はあいつがあんなに強いって知ってたのかよ?」


 恭子はしょうがないといった表情で池澤の問いに答えた。


「知り合いは知り合いよ、同級生だもん、それと文太郎くんが強いかどうかは今日まで知らなかったわ」


「今日まで?」


「ええ、文太郎くんは今日、須藤圭一と戦って勝ったのよ」


「なに!」

 池澤は信じられないと表情で恭子を見た。


「はい、答えたわよ。それじゃ」

 恭子は足早に駆けていった。それを見た池澤は慌てて恭子のあとを追った。


「ちょっとなんで付いて来るの?」


「恭子、伊達のところに行くのか?」


「そうよ。だから何?」


「なんで伊達の所に行くんだよ。もう伊達は外に出たぞ」


「なんでもいいでしょ」

 

 恭子と池澤は走りながら会話をしていた。するといつの間にか裏口の近くに着いていた。恭子は廊下を曲がって裏口に行こうとする、しかし突然、恭子は池澤の方を振り向いて小声で話しかけた。


「静かに、誰かいるわ」


 どうやら裏口付近で誰かが話をしているようだ。池澤と恭子は壁に張り付いた、そして池澤がそっと裏口の方を見ると、池澤も小声で恭子に話しかける。


「親父だよ、それとあれは自衛隊の連中だな。さっき伊達が裏口から出た後、ロビーに戻る途中、親父とすれ違ったんだ。そのとき、親父から自衛隊が助けに来たって聞いたぞ」


「本当に自衛隊かしら……」


「なに?」


「静かに!こっちに来るわ。あっちのトイレに隠れましょう」


 恭子と池澤は近くにある女子トイレに身を隠した。


「お、おい。ここは女子トイレだぞ」


「静かに!」

 恭子と池澤は息を殺してジッとしているとまず最初に池澤の父親が通り過ぎていきその次に自衛隊を名乗る男たちが通り過ぎて行った。


「行ったわね。それじゃあ裏口から外に出ましょう」


 恭子がトイレから出ると池澤は恭子を止めた。


「ちょ、ちょ。外に出るって正気か? 自殺行為だぞ」


 恭子が池澤の言葉を無視して裏口に向かって歩き出したが突然立ち止まった。


「まずいわ。裏口に誰かいる」

 

 裏口の扉近くを見てみると、銃を持った人間が二人立っていた。


「う〜ん、困ったわね。どうすれば……」


 恭子が考えていると、裏口の扉が開いた音がした。恭子と池澤はそっと裏口の方を覗き見ると、武装した男たちがゾロゾロと入って来た。そしてその男たちの中に両手を後ろに縛られた男が二人いた。男たちは恭子たちのいる方に向かってきた。


「こっちに来る、隠れましょう」


 そう言うと恭子と池澤はまた女子トイレに隠れた。しばらくすると武装した男たちと両手を縛られた男二人が通り過ぎて行く。


「何であの二人、手を縛られてるのかしら……」


 恭子が手を縛られた二人組の男が進んでいった方を見ながら呟く。


「さあ……」

 

 池澤は関心ない様子で答える。


「あの、二人を追いましょう」


 恭子は武装した男たちの後を追い始めた。

 

「お、おい、なんでだよ。伊達の所に行くんじゃねーのか?」


「文太郎くんは大丈夫よ。もし奴らに見つかっていたらさっきの縛られていた男たちのように連れて行かれてるわ。きっとあいつらと鉢合わせる前に隠れたのね」


 恭子は武装した男たちと両手を縛られた二人が院長室に入って行ったのを確認した。そして、しばらくすると白人の男が院長室に入って行った。その白人男性も武装していた。その後、白人男性と数人の男達が院長室から出て来ると皆、ロビーの方へ歩いて行った。


「あそこって院長室よね……とりあえず行ってみましょう」


「ま、まじかよ〜」


 恭子と池澤が院長室の扉の前までくると何やら院長室で怒鳴り声と人を殴っている音が聞こえる。


「きっと、さっきの縛られた二人組が殴られてるのね。あの二人何者なのかしら?」


「さあ、こいつらの仲間なんじゃねーのか」

 池澤は興味なさそうに答えた。それよりも早くここから立ち去りたい、池澤はそう考えていた。そして、しばらく考え込んでいた恭子だったが覚悟を決めたような顔つきになると池澤に言った。


「中にいる二人組を助けましょう」


 驚いた池澤は恭子を止めようとしたが遅かった、恭子は院長室の扉をノックする。


「すみません、先ほどから大きな音が聞こえるのですが何かありました?」


 すると、院長室が一瞬、静かになった。だが突然、ガシャンと大きな音がした。しばらく中でもみ合っている音が聞こえたがすぐになんの音も聞こえなくなった。恭子は意を決して中に入ろうと扉のドアに手をかけた。


「恭子! 中に入るつもりか? やめておけ!あぶねーぞ」


 そう言うと池澤は恭子の手を掴み扉のドアを開けさせないようにした。


「大丈夫よ!いいから手を離して!」


 恭子は池澤の手を振りほどこうとするが池澤の力は強く、とても振りほどくことは出来なかった。恭子は何度も池澤の手を振りほどこうと腕を上下に降った。池澤は何とか恭子を抑えようと恭子の手首を強く握った。すると恭子は悲鳴を上げうずくまった。


 池澤は慌てて恭子の手首から手を離す。池澤は恭子の手首を強く握りすぎて恭子に怪我を負わしてしまった、そう思った。だがその瞬間、恭子が素早く起き上がり院長室の扉を開けた。池澤はそれを見て驚き急いで恭子を止めようとしたが、間に合わず恭子は院長室に入っていった。恭子の悲鳴は池澤を騙すための演技だった。


「恭子!入っちゃダメだ!」


 そう言いながらも池澤は仕方なく恭子に続き院長室に入っていった。


「恭子」


 池澤は恭子に声をかける。恭子は周りを見渡しながら池澤に話しかけた。


「あの二人組がいないわ……」


「まじかよ…… 確かにこの部屋に入ったぞ」

 池澤も周りを見回した。すると池澤は床に武装した男が二人気絶して男を見つけた。だがさっきの縛られた男たちではなかった。恭子は辺りを詮索し始める。そして何かを見つけたようで池澤に声をかけた。


「これ見て」

 恭子が本棚の脇を指差した。


「本棚? これがどうした?」


「違うわよ。本棚の脇にある絨毯に擦れた跡があるでしょ」


「ほんとだ。何だこれ……」


「おそらくこの本棚、横にスライドするのね。この本棚の後ろに隠し扉があるはずよ」


「はあ? 何言ってんだ? そんなスパイ映画みたいなことあるわけないだろ」


 池澤は呆れた顔で恭子を見ていたが、恭子はお構いなしに本棚を調べ始めた。そして、恭子が本棚にある本を抜いたり戻したりを繰り返して行く、するとその内の一冊の本を抜くと突然、本棚が横にスライドした。そして本棚の後ろから鋼鉄の扉が現れた。


「嘘だろ……」

 池澤は信じられないといった表情でその鋼鉄の扉を見ていた。


「あの二人、どうやらこの扉の中に入っていったみたいね。だけど、生体認証装置が横についてるわ。私たちでは入れないわね。仕方ない、いったんこの部屋から出ましょう」


 恭子と池澤が院長室を出ようとした。だがその瞬間、突如、院長室の扉が開いた。そしてそこから二人の男が入ってきた。吉井とその部下だ。吉井は恭子と池澤を見て驚いた表情をした。


「あなた達、ここで何をしているのですか?」


 吉井は恭子と池澤から答えを聞く前に周りを見回した。そして。気絶している二人の部下と鋼鉄の扉を見て柏木と島木が部下を倒してその扉から逃げたとすぐさま状況を理解した。


「灯台下暗しとはこの事ですね。この部屋だったとは……」


 そして、恭子と池澤の方へ目をやる。


「貴方達はなぜ、ここにいるのですか? 答えなさい」


 吉井の問いに恭子が答えた。


「すみません、たまたまここを通りかかったらこの部屋から何か大きな音が聞こえたんです。そして何事かと思い中に入ったらこの人たちが倒れていたんです」


 恭子は平然と嘘をついた。吉井はジッと恭子の目を見る、そして恭子も吉井の目を見返していた。


「そうですか…… わかりました。ここは私達に任せて貴方達はロビーに行きなさい。もう少し我慢すればみんな助かりますよ」


「はい、ありがとうございます」

 恭子は笑顔で吉井にお礼を言うと、恭子と池澤は部屋を出ようとする。そして池澤は安心したのか恭子に声をかけた。


「恭子、早く行こうぜ」


 吉井が池澤の言葉にハッとし恭子の顔を見る。そして二人を呼び止めた。


「待ちなさい、貴方…… 吉田恭子ですか?」


 吉井の言葉に恭子は無視して立ち去ろうとした、だが、池澤が驚いた表情で吉井を見た。吉井は池澤の表情を見て確信した。


「と言うことは貴方が伊達文太郎ですか?」


 吉井は池澤を見て質問する。


「はあ? 俺は伊達じゃねーよ。ってか何であんた達、伊達を知ってるんだ?」


 池澤は訳がわからないといった顔で吉井を見た。恭子は呆れた顔で池澤を見ていた。


「貴方、この二人を捕まえなさい」


 吉井は部下に命令した。吉井の部下は頷くと池澤に向かって行き手を掴んだ。だがその瞬間、池澤は吉井の部下の顔面に左のフックをぶちかました。吉井の部下はその一撃で吹っ飛ぶ。それを見た吉井は感心した表情で池澤をみた。


「すごいパンチ力ですね。貴方、私の部下に欲しいですよ」


「はあ? さっきから何わけわからん事いってんだ。俺たちは何もカンケーねー。恭子、行くぞ!」


「ダメです。逃がしませんよ」


 そう言うと吉井は池澤に向かって歩いて行く。池澤は吉井に右ストレートを繰り出した、だが吉井は池澤の右ストレートを難なく避ける。池澤はすぐさま左のフックを吉井の顔面に向けて繰り出した。だが、それも吉井は難なく避けた。


「どうやらボクシングをやってるようですね。なかなかのスピードと威力です」


 池澤は自分をパンチをやすやすと避ける吉井に少しだけ慎重になった。


(こいつ、弱そうなおっさんのくせに一丁前に俺のパンチを避けやがって…… 身長は伊達と同じくらいか…… 結構低いな、165センチくらいか)


 池澤の身長は176センチあり吉井と10センチ違う。吉井は身長もさほど高くない上に顔つきも普通のサラリーマンのようであまり強そうには見えなかった。池澤は完全に吉井を舐めてかかっていた。


(こんなおっさん、俺のパンチが一発で当たれば簡単に倒れるぜ。いつまで避けられるかな)


 池澤はジャブを繰り出すと吉井の顔に数発パンチが当たった。それに気を良くした池澤はフットワークを使い右へ左へと移動する。そして左のジャブを繰り出すと吉井の顔にまた当たった。


(行ける! こんなおっさん、俺の敵じゃねー)


 チャンスと見た池澤は力を込めた右ストレートを吉井の繰り出した。だがその瞬間、池澤の顔が苦痛に歪んだ。吉井の前蹴りが池澤の金的にヒットしたのだ。痛さのあまり池澤は股間を両手で抑えた、そして吉井は池澤の顔を指を当てるとそこからスライドさせた。池澤は今度は両手で目を抑えた。吉井の指が目に入ったようだ。さらに吉井は池澤のコメカミを肘打ちを当てると池澤はその場に崩れ落ちた。


「うう……」


 池澤は痛さのあまり呻き声を上げている。勝負は吉井の勝ちだった。吉井は池澤に戦う意思がないとわかると池澤のポッケから財布を取り出す。


「貴方、かなり強いですが勝ちを確信すると油断する癖がありますね。直した方が良いですよ。フフ」


 そう言いながら池澤の財布から運転免許証を出し名前を確認した。


「う〜ん、なるほど、貴方は池澤徹と言う名前でしたか。本当に伊達文太郎ではないようですね」


 吉井は残念そうな顔で池澤をみる。


「だから、さっき言ったろ。俺は伊達じゃねーって」


 池澤は痛みを堪えながら吉井を睨む。吉井はすでに池澤に興味を無くしたようで、彼を無視して院長室の鋼鉄の扉の前に立ち独り言を言う。


「さて、研究施設に行く扉は見つけましたが、どうすればこの扉を開けるか……ですかね」


 吉井が考え事をしながら鋼鉄の扉を見ていると、突如、鋼鉄の扉が開いた。


「扉が……」


 この自体に流石の吉井も驚きを隠せなかった。


「これは……罠か…… どうしましょうか」


 吉井は開いた扉をジッと見ていると、院長室のドアを勢いよく開いた。そして吉井の部下が血相を変えた表情で入ってくる。


「た、隊長! 大変です」


「どうしました。何事です」


「この病院の前に100匹以上のゾンビが集まっています」


「何ですって!」


「それだけではありません、ゾンビの群の先頭にレアゾンビを確認しました」


「それは確かですか?」


「はい。Cチームが全滅する前に送ってきたレアゾンビの画像と同じゾンビです」


「なぜ、ゾンビの群とレアゾンビが…… ゾンビどもは病院には入ってきていないのですか?」


「はい、何故かはわかりませんが、病院の前で微動だにせず止まっています。隊長、どうしたら良いでしょうか?」


 吉井はすぐさま部下に指示を出した。


「急いで全員をここに連れてきてください」


「わかりました」


 吉井の部下が院長室から出ていくとすぐに部下が集まって来る。


「みなさん、この扉から中に入りますよ。ここが我々の目的の場所です。行きましょう」


 吉井が命令すると部下たちは何の躊躇もなく鋼鉄の扉から中に入って行く。


「それと、そこにいる女性も連れて行きますよ」


 吉井が命令すると部下の一人が恭子に拳銃を向け扉の中に入るよう促す。恭子は仕方なく指示に従った。それを池澤は苦々しい気持ちで見ていた。


 恭子は池澤に声をかける。


「徹、お父さんをお願い」


 池澤は黙った頷いた。そして吉井が池澤の方に近づいてきて声をかけた。


「池澤くん、もし伊達くんに会ったら伝えてください、恭子さんを助けたかったら私達の後を追って来るようにと」


 池澤は吉井を黙って睨みつけていた。吉井はそれを全く気にした様子もなく無視すると鋼鉄の扉の中を見た。


(これは罠かもしれないが、仕方ないですね。ここに止まっていたらレアゾンビに殺されるのがオチでしょうから)


「さあ、鬼が出るか蛇が出るか…… 行きましょうか」


 吉井と恭子が最後に鋼鉄の扉の中に入っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ