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ゾンビアウト  作者: 黒咲
第1章 伊達文太郎18歳の冬
16/24

15話


 院長室の扉が開くと武装した男がひとり入ってきた。そしてその後に続いて両手を後ろに縛られた二人の男とさらにその後に銃を突きつけている男が入ってくる。


「隊長、柏木と島木を連れて来ました」


 最初に入って来た男が吉井に報告する。吉井は院長室の来客用のソファに座って満足そうな顔で答えた。


「ご苦労様です。お二人とも、どうぞ前のソファに座ってください」

 院長室にはテーブルを挟んで来客用のソファが二つある、銃を突きつけていた男は吉井が座っている前のソファに柏木と島木を座らせた。しばらく沈黙した状態が続くと突然、吉井が柏木を見て口を開いた。


「柏木達也、27歳、名戸ケ谷病院より委託されている清掃会社ピカピカスマイル勤務」

 柏木は何も言わずただ吉井を見ていた。吉井は今度は島木の方を向き話を続ける。


「島木竜二、22歳、同じく名戸ケ谷病院より委託されている清掃会社ピカピカスマイル勤務」

 島木も何も言わずジッと吉井を見ている。吉井は島木の視線も無視して話を進める。


「しかし、その清掃業者は仮の姿、本当は人間を凶暴化させるゾンビウィルスを開発した組織の戦闘部隊の隊員ですよね? 間違いないですか?」

 柏木も島木も何も言わずにただ黙っている。吉井はため息をついた。


「二人とも時間を無駄に過ごすのはやめにしましょう。そろそろ自衛隊と米軍がこの町に突入します。お互いその前にこの町から脱出しないといけないでしょう?」

 それでも柏木と島木は何も喋らない。吉井は構わず話を続ける。


「時間がありませんので私は何もかも正直に話しますよ。いいですね? まず、あなた達と同じ部隊に所属していた小坂と立花は、あれは私たちのスパイです。ですからあなた達の会社ピカピカスマイルの従業員は皆、組織の戦闘部隊だと言うのはわかっています」

 吉井の言葉に先ほどまでポーカーフェイスだった柏木と島木は表情は一瞬、驚きに変わった。


「そして、この病院の院長、古谷敏夫があなた達の組織の地方協力本部長だと言う事も聞いてますよ」


 それを聞いた柏木はため息をついた。そして吉井に質問をした。


「なるほど、全てを知ってるってわけか……で、全てを知っているのに俺たちをここに連れてきたのは意味があるのかい? ないならさっさと殺せよ 」


 吉井は柏木の質問に答えた。

「もちろん、意味がありますよ。先ほどあなたは私が全てを知ってると言いましたが、知らない事もあります。それは古谷敏夫の居場所です。それをあなた達に教えてもらいたくてここまで来てもらいました」


「さあねぇ、どこにいるやら、それに例え知ってたとしても答える義理はねえなぁ」

 柏木は吉井を睨みながら答えた。吉井は再度、ため息をつく。


「古谷はこの病院に必ずいます。と言うかこの病院の地下にいます。この病院の地下室はゾンビウィルスの研究施設になってますよねぇ。私たちはそこに行き、古谷とゾンビウィルスの研究資料が欲しいんです。しかし、その施設に入れるのは、あなたたち組織の人間だけです。だから私たちをその施設に入れていただきたいのです」


 柏木は吉井を睨むのをやめ、ソッポを向いて答えた。

「それはお断りだねぇ」


「そう言わずに協力してくださいよ。ここまで来るのに相当な努力と苦労があったんですから」

 吉井がニヤついた顔で柏木を見る。その顔を見て柏木は何かに気づいた。


「そうか…… この騒動、起こしたのはお前達だな?」


 柏木の質問に吉井は正直に答えた。


「ええ、そうですよ。この騒動を利用してあなた達、戦闘部隊が騒動の処理活動を行っている隙に、この病院の地下にある研究施設に入り込もうとしたのです。

 あなた達は研究施設で作ったゾンビをとある無人島へ運びますよね? 何百というゾンビをここに置いておくわけには行きませんから。私たちはゾンビを運んでいる車両を事故を装い横転させました。そして思惑通りゾンビは逃げ出し、この街で暴れまわってくれました。 

 しかし、誤算がありました。それはゾンビウィルスの感染のスピードが思っていた以上に早かったのです。ゾンビウィルスは町を壊滅状態まで被害を広めてしまいました。この事態に小坂たちは怖気付き逃げようとしたのです」


 柏木は吉井の話を聞いて、少し呆れた顔をした。


「ヘッ! 小坂たち…… やっぱ愛国心からじゃなく、怖くなって逃げようとしてたのか」

 

「ええ、あいつらは小物ですから…… ただ、小坂達にここの研究施設に入れてもらう手筈でしたので計画が狂いましたよ。私たちはすぐに逃げた小坂と立花を捕まえようとしたのですが、残念ながらあなた達に先を越され殺されてしまいました。だから急遽、作戦を変更する必要がありましてね、そこで白羽の矢が立ったのがあなた達です。私たちはあなた達に研究施設に案内してもらおうと決めました」


 吉井の話を聞いて今まで黙っていた島木が口を開く。


「決めたって言ってもうなぁ。俺たちは従うつもりはないぜ」


 吉井は二人を呆れた顔で見た。

「なら、仕方ありませんね。少し、痛い思いをしてもらいましょうか…… 」


 吉井が近くにいた、男たちに目配せすると男達は柏木と島木を立たせ、二人をいきなり殴りつけた。


「痛ってー!」


 島木が怒鳴った。柏木は殴った男を無表情で見返している、男達は何度も柏木と島木を殴った。しかし、二人とも口を割ることはなかった。


「なかなかしぶといですね。時間がないというのに……」


 吉井は少し苛立っていると、突然、院長室の扉が開いた。開いた扉から屈強な白人の男が入ってきた。その男は吉井の部下だった。部下が吉井に近づき耳打ちをすると吉井は頷き立ち上がった。


「しばらく席を外します、そこの二人はここに残って柏木と島木の拷問を続けてください。必ず口を割らせてください。時間がありませんよ。他の者は私と一緒に来てください」


 吉井は院長室を出ると先ほどの白人の部下と一緒に一階のロビーへと向かった。ロビーには吉井が指示した通り病院内にいた人達が集まって座っていた。そしてしばらく歩くとロビーの端っこに両手両足を縛られて女性のゾンビがいた。それを白人の部下が指差しながら吉井に報告する。


「これです」


 吉井は驚いた顔でその女ゾンビを見た。


「これは…… このゾンビは死んでいるのですか?」


「いえ、生きてます。どうやら気絶しているだけのようです」


「気絶、ゾンビが気絶とは…… 麻酔で眠らせたのでしょうか? しかしゾンビはただの麻酔はあまり効果がなくゾンビ用の強い麻酔薬出ないと眠らないはずですが…… どうやってそれを手に入れたのでしょう……」


「現場を見ていた人間によると、どうやらこのゾンビはある青年に殴られて気絶したようです」

 

 その言葉を聞いて吉井は目を見開いた。


「ゾンビが殴られて気絶ですって、ゾンビは痛みは感じないはずです。確かですか?」


「ええ、確かのようです。何人も同じ証言をしていています」


「ゾンビを殴って気絶させた、その青年とは誰でしょうか?」


「わかりません、誰もその青年のことは知らないそうです。しかもこのロビーにはその青年はいないようです」


「なるほど、その青年はどこの誰でしょうか……」


「それともう一つ報告があるのですが、隊長に先ほど言われて伊達文太郎を探しましたが、どうやら伊達はこの病院にはいないようです 」


「伊達がいない…… 確かですか?」


「はい、それで、もしかしたらですが、ゾンビを気絶させた青年とは伊達の事ではないかと……」


 吉井はしばらく黙って何かを考えていた。


「わかりました。あなたはもう一度、伊達を探してください。あと、この縛られているゾンビは始末して外に捨てておいてください。よろしくお願いします」


「はい」

 白人の部下はゾンビを抱えて裏口へと歩いて行った。吉井は部下が抱えているゾンビを見ながら小さく呟いた。


「伊達……文太郎か……」


――――


「おい、柏木、島木、いい加減にしろよ。こっちは殴り疲れたぜ。さっさと話せ」


 柏木と島木は吉井の部下から拷問を受けている。二人の顔は血で真っ赤になっていた。柏木と島木を殴っている二人は屈強な体をしている、島木を殴っている方は長髪で柏木を殴っている方は短髪だった。


「うるせ〜、さっさと殺せ〜」


 島木が掠れた声で悪態をつく。


「チッ! しぶてーなぁ」


 長髪がめんどくさそうに言うと右のフックを島木の腹部に当てた。


「うぐっ」


 島木はうめき声を上げうずくまる。


「てめー、いい加減にしろよ。自由になったら絶対ぶっ殺してやるかなぁ」


「ふん! どうぞ〜やれるもんならなぁ」

 そう言うと長髪は島木を立たせて腹部にフックをぶち当てた。


「おい、柏木〜、お前はどうだぁ」

 そう言うと短髪が柏木の顔面を殴る。


「うぐっ」

 柏木もうめき声をあげた。


「俺も右に同じだ、さっさと殺せよじゃないと俺がお前を殺すぞ」

 柏木は苦しそうな顔つきだが、余裕に見せるためか憎まれ口を叩いた。


「てめー! いい加減にしろ!」

 短髪が柏木に殴りかかろうとした瞬間、院長室の扉からノックする音が聞こえた。


「すみません、先ほどから大きな音が聞こえるのですが何かありました?」

 扉の向こうから女性の声が聞こえた。長髪と短髪の男がハッとした顔で扉の方を見る。その瞬間、柏木と島木が長髪と短髪にタックルをぶちかました。そして、柏木と島木は馬乗りになり何度も何度も長髪と短髪の顔面に頭突きをかました。長髪と短髪は顔面血だらけで気絶した。


「おい、島木! こいつらからナイフを奪え」


「了解っす!」

 島木が長髪からナイフを奪うと柏木の縛られている結束バンドを切った。そして今度は柏木がナイフを持ち島木の結束バンドを切る。


「柏木さん、間一髪でしたね。ってかやっぱ小坂と立花スパイだったじゃねーっすかぁ。あの時、ちゃんと尋問しとけば……」


「悪りぃ、まあ過ぎたことだ、いいから島木、さっさと逃げるぞ。さっき扉をノックした女が入ってくるかもしれねー」


「んも〜、調子いいなぁ。ま、いっか」

 島木はそう言うと院長室の壁際にある本棚に行き、本を一冊抜いた。すると本棚がスライドして鋼鉄の扉が現れた。島木が鋼鉄の扉の横にある生体認証装置に手のひらを当て番号を入力すると鋼鉄の扉が開いた。


「あいつらここに研究施設の扉があるのは知らなかったみたいですね」


「ああ、小坂たちもあいつらに万が一裏切られて殺されないように最後の切り札にしていたんだろう。島木、研究施設には武器が置いてある。それを取りに行くぞ」


「はい!こっから俺らの逆転劇が始まりますね!」


「ああ、奴らを皆殺しにする。行くぞ!」


 柏木と島木が鋼鉄の扉の中に入ると、扉は閉まり本棚が元に位置に戻った。



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