表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビアウト  作者: 黒咲
第1章 伊達文太郎18歳の冬
11/24

10話

「今、鍵を開けるから横の扉から入ってくれ」


 文太郎がドアにあるスイッチを押すと、鍵が開く音が聞こえた。池澤はワゴン車のドアをスライドさせ開けると車の中に入ってきた。それを確認した文太郎は車を発進した。

 

 すると池澤は車に入るなり恭子に話しかけた。


「まさか、こんな所でお前に会えるとは、びっくりだぜ、元気だったか?」


 文太郎は池澤が礼も言わずにいきなり恭子に話しかけたので少しイラっとした。

 しかし、それを顔に出さないよう、勤めて明るい顔で池澤に話しかけた。


「ボクシング部の池澤だよね。俺達はこれから名戸ヶ谷病院に行くんだけど大丈夫かい?」


 池澤は、文太郎の存在をいま気づいたといった顔で見ると文太郎に言った。


「ああ、大丈夫だ、俺も名戸ヶ谷病院に行く途中だったんだ。両親が医者でな、そこで働いてるんだ。あんた俺と同じ高校の奴か? なんで恭子と一緒にいるんだ?」


「そうだよ。クラスは違うけどね、名前は伊達文太郎だ。両親とは連絡が取れてる?」

 文太郎は恭子と一緒にいる理由を答えず逆に質問をした。

 池澤は気にした様子はなかったが、早く恭子と話がしたいのか面倒くさそうに答えた。


「ああ、二人とも無事だ。連絡はさっき取ったばかりだ、病院の入り口はバリケードで塞いで化け物が入って来れないようにしているようだ。だから入り口からは入れねーんだけど裏口なら入れるって親父が言っててよ、病院で匿ってもらうんだ。」

 そう言うと再び恭子に話しかけた。


「それにしても恭子、久しぶりだな」


「そうね」

 恭子は明らかに迷惑そう顔で返事をした。だが池澤は全く気づいた様子もなく恭子に話し続けた。


「お前、なんで名戸ヶ谷病院に行くんだ? 知り合いでもいるのか」


「お父さんが入院してるのよ」

 恭子はそっけなく答えた。


「恭子の親父さん…… そうかまあ安心しろよ、親父が言うには病院内に化け物は入ってきてないってよ」


 その言葉を聞いた恭子はホッとした顔をした。


「ところで恭子、病院に着いたら俺と一緒にいろよ。この町は化け物だらけだ。俺が守ってやるよ」

 池澤が自信満々の顔で恭子に話しかけると恭子はウンザリした顔で答えた。


「文太郎くんが守ってくるから結構よ」


 池澤は文太郎の方を見るとそのいかにも陰キャで大人しい男という見かけを見て鼻で笑って恭子に言った。


「お前、なに冗談言ってんだよ」


 池澤は恭子の話を本気にしなかった。恭子は話しても無駄といった顔で黙った。

 恭子のその表情を見た池澤は面白くないといった顔で文太郎を睨む。


 気まずい雰囲気を察知した文太郎は慌てて池澤に話しかけた。

「いやー、それにしてもよく無事だったな」


 池澤はめんどくさそうに答えた。

「ああ、俺はいま部活は引退してるんだが、ここから近くにあるボクシングジムでボクシングを続けてるんだ。そこの練習帰りに化け物に襲われてな。ジムの生徒達みんなで化け物と闘ったんだが全員化け物にヤラレちまった。俺は何匹かぶん殴ってその隙になんとか逃げれたんだ」


「そうか、よくこの状況を一人で生きてられたね」

 文太郎は感心した様子で言った。


 褒められたと思った池澤は気分がよくなったのか、調子よく話し始めた

「まあな、あんな化け物なんてちょろいもんよ。見た目は恐ろしいがただ闇雲にまっすぐ向かってくるだけだからな。俺みたいに実戦経験が豊富な人間からすると大したことねーよ」


 そして恭子の方を見てまた話しかけた。

「恭子、とにかく俺と一緒にいろよ。あの化け物どもからお前を守れんのは俺だけだって」

 

「だ・か・ら、文太郎くんに守ってもらうから結構よ!」

 恭子は池澤を睨めつけながらキツイ口調で言った。


 流石に鈍感な池澤も恭子の言い方には腹が立ったのかだんだんと乱暴な口調になっていく。

「ああ? お前さっきからなに馬鹿な事言ってんだよ! こんな弱そーな奴にお前を守れるわけないだろ!」


 その言い方に文太郎は腹を立てたが、とにかく今は喧嘩している場合ではないと何も言わずに運転をしていたが、恭子は池澤の言い方が許せなかったようで言い返した。


「いい? あんたは化け物に襲われて逃げただけかもしれないけど、文太郎くんはもう3匹化け物殺してんのよ! 文太郎くんの方があんたより何倍も頼りになるわよ!」


 それを聞いた池澤はビックリした顔で文太郎を見た。文太郎は慌てて言った。


「い、いや、運が良かっただけだよ。俺が投げ飛ばした化け物がトラックに轢かれたり偶然が重なっただけだよ」


 池澤は文太郎の話を聞いて納得した。

 

 そして、さっきから自分に素っ気ない態度をとっている恭子にイライラしたのか嫌味を言い始めた。

「恭子、お前なんか変わったなぁ。随分きつい性格になっちまったじゃねーか。髪も金髪にしてるしよぉ。な〜んかお前のキャラじゃないよな。俺と付き合ってた時は大人しいお嬢様って感じの性格してたのに」


 恭子は池澤の言い方に我慢できずにキレた。


「うるさいな、さっきからあんたいつまで私の彼氏ヅラしてんのよ! あんたとはとっくに別れたんだから馴れ馴れしくないんでよ」

 

 突然、恭子に怒鳴られた池澤は顔を真っ赤にした。そして今度は池澤が怒鳴り返す。


「ああん? 何キレてんだよ! そう言えばよぉ、お前、俺と別れてから須藤と付き合ったって噂だよなぁ。金髪にしたのも須藤みたいな不良と付き合った影響かよ!」


「別に誰の影響とか関係ないから。ただ、そろそろ高校も卒業だし一生に一度くらいやってみよかなって思ってやってみただけよ」


「へぇ、須藤と付き合ってる事は否定しないのかよ! しかしよぉ、よりにもよって須藤と付き合うなんてお前ちょっと無神経すぎねぇ?」


「はぁ? 別に私が誰と付き合おうと私の勝手じゃん。それに圭一とは別れたし」


 恭子の別れたと言う言葉に池澤は一瞬、嬉しそうな顔をした。


 この二人のやり取りをヒヤヒヤしながら聞いていた文太郎だが、流石に二人の言い争いを止めに入った。


「と、とりあえず二人ともそろそろ病院だ、喧嘩はやめてくれ、今はそれどころじゃない」


 恭子は文太郎に言われ仕方なく黙ったがムスッとした顔で前を向いている。

 

 池澤も興奮して恭子と話していたのを急に恥ずかしく思ったのか、気まずそうな顔で下を向いた。


 ホッとした文太郎は運転に集中した。


 ハンドルを右に切り交差点を曲がると広い車道にでた。

 文太郎は二人に話しかける。


 「このまままっすぐ行けば病院だ、そろそろ着くよ」

 

 その言葉を聞いて、恭子と池澤は安堵した。


 文太郎は早く病院に着きたい一心でアクセルを踏みスピードを出した。すると一台の大型のトラックが横付けされてのに気づいた。文太郎は一瞬、焦ったが慌てず慎重にハンドルを切ってかわす。そしてその車を通り過ぎる時に運転席側を見て不思議そうな顔した。

 恭子は文太郎の方を見て話しかけた。


「文太郎くん、どうしたの?」


「いや、いま通り過ぎた大型のトラックなんだけど荷台に幌が被せてあってなんか自衛隊や軍隊が使うトラックみたいな感じがして気になったんだ。それで運転席に誰か乗ってないか確認しようとしたんだけど、横のガラスだけじゃなく、フロントガラスまで黒いフィルムが貼ってあって中が見えなかったんだ。それがなんか不思議な感じがしてね」


「そうなの? じゃあ、もうこの町には自衛隊の人たちが来てるのかな?」


「わからない…… まあ、とりあえず病院に着くよ」


「やっと着いたのね……」

 恭子はホッとした様子だった。


――――


 先ほど文太郎の車が追い越していったトラックから突然エンジンをかける音が聞こえた。

 どうやらそのトラックには人が乗っているようだった。


「隊長、今通り過ぎた車がそうです。やはり名戸ヶ谷病院に向かっています」


 運転席に乗っている男が助手席にいる男に話しかけた。 


「そうですか…… やはり、理由はわかりませんが我々と目的地は一緒のようですね。ところで、柏木と島木はどうなりました?」


「はい、あの二人は予定通り捕獲できそうです、あの二人が乗っていた車はもう壊れて乗れません、Bチームが捕獲に向かっています」


「そうですか、あの二人を捕まえたら予定通り名戸ヶ谷病院に連れてきてください。あと、"レア"はどうですか?」


「" レア"は隊長がおっしゃるように捕獲は無理なので殺してその遺体を連れてくる予定です。Cチームがそろそろ攻撃を開始します」


「わかりました、最初に予定していたよりも仕事が増えましたが、必ず任務は成功させましょう。とりあえず柏木と島木を捕まえることが最優先です」


「わかりました。Bチームには伝えておきます」


「さっ、私たちはさっきの車を追いますよ。おそらくあの車には伊達文太郎が乗ってるはずです。私たちは名戸ヶ谷病院で彼を捕獲します」


「わかりました」


 運転席の男がダッシュボードにあるスイッチを押すとさっきまで真っ黒だったトラックのフロントガラスとサイドガラスが透明になった。


 すると、助手席にいた隊長と呼ばれた男がヘッドセットのスイッチを押す。


「さてみなさん、そろそろ仕事も終わりが近づいてきました。けど、油断せず必ず任務を成功させましょう。それでは行きますよ」


 運転席の男は隊長の方を見て頷くとギアをドライブに入れアクセルと踏み車を発進させた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ