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水滸伝   作者: ての
3/3

智深

〜提轄 魯達〜

山賊は帰って行った。

あれから数日が経ったが、あの男たちのことが、頭から離れない。

これで良かったのだろう。俺はこの史家村を守った。

父は数年前、死んだ。だから俺がこの腕でこの村を守る。

そして俺には幼馴染で俺の補佐もしてくれる、顔立もいる。

「おい進!大変だ!」

「どうした、立。そんなに慌てて」

「役人が、お前を捕らえようとこちらに向かってる。あの山賊たちと語り合ったことがばれて、共犯者とみなされたみたいだ」

「そんな!」

「とにかく逃げてくれ!」

「あ、ああ。だがそのあとはどうする?」

「この村のことは俺に任せてくれ、進。俺は多少頭が回ること、お前は知っているだろう?」

「ああ。お前を信じよう。ではしばらくの間、さらばだ。」

王進殿がいるという延安府に行ってみよう。そう思い、俺は駆けた。


街に着いた。ここが延安府だろうか。

とにかく、あそこの店で話を聞いてみるか。

「そこのお方、よろしいか」

俺は店内に入る役人らしい服の大男に声をかけた。

「なんだ?俺に何か用か?」

酒を飲みながら、男が言う。

その迫力はとてつもないものだった。

「実は、ここがどこか、教えていただきたいのですが」

「おお、そんなことか。ここは渭州だ」

渭州だと?延安府とは真逆の方向ではないか!

「それにしてもお前、いい目をしているな。名はなんという」

「俺は史進という。史家村から、ここまで出てきた」

「ほう!ではおぬしがあの九紋竜か!」

どうやら俺のことはこちらには伝わっていないらしい。いや、顔立がうまく仕組んでくれたのか

「俺はこの渭州で提轄をしている、魯達という。」

男はそう名乗った。そして俺たちは意気投合し、惜しみながらも別れた。


〜花和尚 魯智深〜

先日九紋竜史進と会えたのは、この上ない幸運だっただろう。

あれはまさに好漢だ。

そう思っていると、若い娘が泣いていた。

こういうところを見ると俺は体が勝手に動いてしまう。

「どうしたのだ。こんなところで」

娘は少しおびえた様子だったが、俺と初めて話すやつらは皆こうだ。

心配はいらんだろう。だが、なんと美しい娘か

「名はなんという」

女が答える

「私は、金翠蓮と申します。」

事情を聞くと、この娘は肉屋に騙され、借金を負っているらしい。その額も相当なもので、仕方なく体を売るも、足りないという有様らしい。そしてその肉屋を、俺は知っていた。

「許せん!俺がやつを今すぐ懲らしめてきてやる!」

娘は俺に礼をしてきた。なぜだ。まだ解決はしていないというのに。それに頭巾をかぶっているが、まさか髪を売っているのだろうか。ますますやつが許せなくなってきた。

俺は翠蓮に安心しろといい、礼を断って、奴の一味から命を狙われぬため逃した。


奴のいる市に一人乗り込み、奴に難癖をつけた。まずは様子を見るつもりだった。だが、俺は奴のへりくだった態度を見て、怒りが抑えられなくなった。そして気づけば、拳が出ていたようだ。

「おのれ」

肉屋がこちらを睨みつけてくる。俺は肉屋の服を掴み上げ、腹に二発目の拳を見舞った。

そして怒りに身を任せ、無抵抗で逃げ回る肉屋を捕まえ、顔面に渾身の一撃をくらわせる。

肉屋は顔中から血を吹き出し動かなくなった。

殺した。

周りには多くの野次馬がいる。

どうすればいいのか、わからなかった。そして気づいた時には一人逃げ出していた。


逃げていると、金翠蓮に出会った。

そして俺は無心で逃げているうちに、五台山という山の近くまできていたようだ。

翠蓮は、俺と出会ったのち、ツテを頼ってここまで逃げてきたという。

どうやら、家が代々五台山の坊主と仲が良いらしい。

そして、翠蓮は俺に役人から逃げる方法を教えてくれた。俺に、五台山で頭を丸め、出家しろというのだ。

正直、嫌だったが、それが何より現実的な策だった。ならば、行くしかないだろう。


多くの坊主に囲まれ、頭を丸める。翠蓮は心が痛んでいるのか、少し泣いている。

なぜだろう。なぜ俺が頭を丸めるだけで心が痛む。わけがわからない。

俺の目の前に、老人が現れる。智真と名乗ったその老人は、俺を聞いたことのない名で呼んだ。

「智深」

「それは、俺のことか?」

「ああ、お前はもう俗世とは離れる。ゆえに、名も改める必要がある。お前は今日この時より、智深だ」

「智深、魯智深か」

俺はもう、役人からは追われない。だが、俗世にも、戻れない。


きずけば、酒を飲んでいた。決まりなんてどうでもいい。そう思ってしまった。

外では、坊主どもが話をしている。智真和尚もいるようだ。


〜智真〜

智深が、酒を飲み、仏像を木っ端微塵にしたという。

皆が智深を追い出すよう、訴えてきている。だが、智深はいずれ、立派に悟る。必ず悟ってくれるだろう。

だが仕方がない。ここまで大きな騒ぎとなってしまったからには、遠くに追いやったほうがいいだろう。


智深、必ず悟り、私を超える高僧になってくれるだろう。





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