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お山のなかま達

 それからのサヨと母さまには、たくさんの友達ができました。


 今はまだ一面白い雪におおわれた静かな山の中ですが、ここにはたくさんの動物やおしゃべり上手な鳥達が楽しく暮らしているのです。

 母さまとサヨは、その動物や鳥達に、ここでの暮らしを教えてもらいながら、だんだんとこのお山での生活になれていきました。




 サヨ達がお山に来る前に住んでいた森にも、昔はたくさんの動物達が住んでいました。

 しかし、ザックリと森が切り開かれて行く間に、動物達は住まいを追われ、その数をへらしていってしまったのです。


 サヨが生まれた頃には、もうサヨの家族しか残っておらず、たまに遠くから遊びに来るフクロウのおじさんだけが、サヨ達家族の友達でした。



「なあ、ここにももうじき人が来てしまうぞ? サヨちゃんもだいぶ大きくなったことだし、オレの住んでいるとなり町の奥の山に来たらどうかね?」


 秋も終わりに近づいたある日、フクロウのおじさんにそう言われたサヨの家族は、ついにお引越しを決めたのでした。


「まずは父さんが先に見に行ってくるから、サヨは母さんといい子にしているんだぞ。それから母さん、もし雪が降るまでに戻って来なかったら、夜を待ってとなり町の神社に行きなさい。フクロウさんのお話では、となり町の土地神様はやさしいお方だそうだから、きっとサヨと母さんを守って下さる」


 黒い鼻先でサヨのお腹をチョンとつついて、涙にぬれたほっぺたをペロリとなめてから、お父さんギツネは旅立って行きました。


 それからの日々、サヨと母さまは、お父さんギツネが帰って来るのを今か今かと待っておりました。



 ところが。

 ふわふわした白い雪が空から落ちて来ても、お父さんギツネは戻っては来なかったのです。



『キツネが丸い足のついたつめたい体のやつにぶつかって、どこかに連れて行かれちゃったんだってさ!』



 うわさ好きでおしゃべりなカケスが、わざわざサヨ達の所までやってきて言うことなんて、これっぽっちも信じていなかった母さまとサヨでしたが、人の気配(けはい)やにおいがだんだんと近づいて来るのには気がついていました。


 これ以上、父さまを待っている時間はありませんでした。


「サヨ、もう行かなくちゃいけないわ。夜になったら出発よ。もしかしたら、途中で父さまにも会えるかもしれないわよ」


「はい。母さま」


 こうしてサヨと母さまは、住みなれた森をはなれ、となり町へと向かったのです。

 お父さんギツネが戻って()ず、サヨ達を心配したフクロウのおじさんも、いっしょについてきてくれました。


 何かをふんでしまい、足をケガした母さまをはげましながら、フクロウのおじさんが見守る中、暗く冷たい冬の夜道を走ったサヨと母さま。


 たどり着いた神社の大きな鳥居の前で、サヨがぴょんと飛びはねて人の姿になったのを見届け、フクロウのおじさんも安心して山の方へと帰って行きました。


「父さまに会えなかったね」


 しょんぼりしてうなだれたサヨに、母さまが言いました。


「そうね……でもいつかきっとまた会える気がするの。そう母さまは信じてる。さあサヨ、しゃんとなさい。その赤いワンピース、とても似合ってかわいいわ。母さまはケガして行けないから、母さまの分までちゃんとごあいさつしていらっしゃい!」





 そうして土地神様に迎えられたサヨと母さまを、山のみんなは歓迎してくれました。


 近くに他のキツネはいないようでしたし、フクロウのおじさんの家はもっと山奥にあるようでしたが、イタチやサル、タヌキやイノシシ、他にもたくさんの動物や鳥達が暮らしていて、サヨも母さまも最初はびっくりしたものです。

 でも、あいさつを交わし、おしゃべりをするうちに、すっかり仲良くなったのでした。




 その中でも年の近い二匹と、とても仲良しになったサヨ。初めてできた、同じくらいの年の友達です。



「サヨちゃん。あったかくなったらね、地面いっぱいに黄色やもも色のお花がさくんだって! すごぅくきれいなんだって、お母ちゃんが言ってたの」


 これを教えてくれたのは、イタチのミヨちゃん。

 白くてツヤツヤの冬毛と丸くて小さな耳がとてもオシャレな女の子です。


「へえ~! 早く見てみたいなぁ」


「なあ、サヨ。この木にはすっごくあまいアケビができるんだぜ! ミヨの分といっしょにオイラが取ってきてやるからな!」


「うわぁ、楽しみにしてるね! ケンちゃんはいろいろ知っててすごいなぁ」


 エヘヘと顔を赤くしながら頭をかいたのは、サルのケンちゃん。

 三匹の中では一番お兄さんなケンちゃんは、おいしいものがどこにあるのかを知っていて、サヨも母さまもとても助かったのです。もうじき本当にお兄ちゃんになるケンちゃんは、とても頼りになります。



「いつもありがとう! ミヨちゃん、ケンちゃん!」


 サヨがペコリとおじぎすると、ミヨちゃんがブンブンと首をふって言いました。


「いいのいいの。だってサヨちゃんはお友達だもん」


 ケンちゃんも、それにウンウンうなずいて、こう言ってくれました。


「ミヨの言う通りだぞ! オイラ達はこのお山のなかまじゃねぇか!」



 サヨは嬉しくって、嬉しくって、ほっぺたを真っ赤にそめ、しっぽをゆらゆらとゆらしながら、春を待ち遠しく思うのでした。


お読み下さって、ありがとうございます!

そして前回は皆様のご協力、誠にありがとうございましたm(__)m


ちょっぴりシリアスな過去の回想回でしたが、これからゆっくり先へと進んで行きます。

この先もお付き合い頂けると嬉しいです♪

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