自動販売機!?
2分ほどの空白の後に、耐えられなくなった私は何か言ってみることにする。
「ごはんって……どうすんの?」
ぼーっとしていた彼は、ぴくっと肩を動かしてこちらを向いた。
そして、いかにも「当たり前」といった風に言う。
「え、自販機から」
「そんな都合良く自販機なんてあるかぁぁいっ!」
ほとんど条件反射でツッコミを入れる。
ご都合主義が酷すぎるわ作者は何やってんだよ!
というより自動販売機が設置されている民家って聞いたことないんですが?
そんな私に少し怯みつつも、彼がさしている方を見てやると…
「……あるし。」
よく街中にある白色の自動販売機が、ぎらぎらと眩しく光っていた。
温かいもの、冷たいもの、あげくカロリーメイトまで売られている。
信じられないといった顔で彼を見ると、自慢げに胸を張って「はっはーん」だなんてふざけたことを言っているし。
「僕すごいでしょー。撫でて?」
「え、いや、ちょっと待って、何、は?どうしたの、突然!あれそんな雰囲気あったっけ、唐突!頭がついて行かへんはやと急にどうしてん…………………」
混乱する頭は訳のわからない言葉を紡いでいく。
意思に反して口から流れ出していく言葉を止める術など、持っていない。
「…………なん、でもないよ……。」
いかにも不服そうな顔をし、前髪を触る。
恥ずかしい時や、悪いことをしたと思った時の、彼の癖だ。
───あれ、なんかしたっけ?
「で、それよりもさ、自販機があるのはええんやけどいずれ尽きるものやで?」
私は一般的な正論を言ったはずなのだが…彼はキョトンとしている。
そして、あまりにも馬鹿みたいな提案をしてきた。
「じゃあ全部買ってみるー…?」
「What!?」
そんなことを言った後に、満面の笑みで振り返った。
「…………しょうがないから、手伝ったげるで!」
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1時間後。私たちがどうなっていたかは、まあ大体想像通りだったのではないだろうか。
私の足元にはペットボトルやアルミ缶、カロリーメイトの海ができていた。
彼も幸せそうにカロリーメイトを頬張っている。
「にゃっほーぅ!!うっわどんどん出てくるいえーーーーーいっ!!」
この自動販売機は飲み物とカロリーメイトが買える、私の最寄駅にあるものと同じフォルムのものだ。
彼の財布の中に入っていた中学生が持ち歩くべきではない量の1000円札をどんどん入れながら、大小様々な商品のボタンを連打していく。
「ほ、ほたるの方がはまっちゃってる…」
最初は分担作業でやっていたのだが、彼の大食いも考慮して私が重労働をやらされている。
「…や、やらされてるんじゃないを思うんだけど………………」
「そんなん関係無いでーーーーーーー!!」
ぽつり、と彼が呟く。
「…………ま、まぁとりあえずごはんはなくならないんだね…ほたるが楽しそうでよかった…」
「なんか言った?!」
どんどんゾンビものから離れていってます…ゾンビものだと思ってきてくださった方々すみません。
一応ジャンルは恋愛なので、そちらを楽しんで頂けると幸いです!