……玄関…?
「「え………」」
目の前に現れたものに、2人して呆気にとられる。
大きな茶色いドアと、チャイムと思われる機械。
───この場にはあまりにも不釣り合いな、ごくごく普通の玄関が、そこにはあった。
「ん、これは入ったほうがいいもの?」
のんきにドアノブに触れようとする彼の痛そうな肘をつかんで止める。そのまま一歩、二歩と後ろに下がってようやく手を離す。
「うぅ…ひどいなぁほたる…」
「なぁ、本気であれが安全だと思ってん?そんな突然変な場所に変なもんがあって、それでも安全だと思えるん?阿呆とちゃう?う、うちはなぁ、そんな、そんな顔をさせとうてこんな事言ってるんとちゃうねんて。うち、は、はやとが、そんな、ぅ……」
曇っていく彼の顔と比例して私の声が涙で滲んでいく。
こんな姿見られたくなかったのに、目の前で焦っている彼はハンカチやティッシュを探しているようだ。
本当に優しい。
そんなことを思っていると、いつの間にか彼は、あまり見ない真剣な眼をしてこちらを見ていた。
「でもね、ほたる、聞いて?もしここでこのまま策を練っていたところで、いまは夜なんだよ?それで、知らない間に近づいてきたあいつらに何かされるのと、今ある一番の可能性を試してみるの、ほたるはどっちがいい?」
あくまでも優しく、諭すように彼は言葉を紡いでいる。
「確かにほたるが言うようにこれは危険だ。それは僕だってわかるんだよ?だから最後には、ほたるに決めて貰おうと思う。ほたる、どう…する?」
最後は私、なんて、そんなこと言われたら私がどうもできないって、わかってて言うなんてやっぱりいじわるだよ。
私は、こう言ってしまうんだ。
「ええよ、じゃあ一緒に開けるで?」