幼い……
再度私の後ろに伸ばされた手は、一切の躊躇も見せず取っ手を握った。
引っ張るね、と一言だけ言って、私を横にずらしてから扉を開けた。
本当に、呆気なく。
「扉を開けた」という表現で十分な、自然な動きだった。
「………っ!!」
音のない声を上げて、1m向こうに飛び退く。さっきのように髪を掴まれてはたまったものではない。
「ぎゃっ」
──────『ぎゃっ』??
緊迫した雰囲気(私だけ?)に不似合いな、幼い声。
まただ。さっき髪を引っ張られた時にも聞こえた幼い男の子の声。
「ふぁっ!?」
で、こっちははやと。
…もう、何やってんだか。床を見ていた視線を上げる。
「にょっ?!」
─────今度は私が変な声を上げる番だった。
だってしょうがない。視線の先にあったのは、掃除道具入れの中にうずくまった幼い男の子と、きょとんとした顔のはやとが見つめ合っている画だったのだから。
両者とも、ぎこちない笑顔で固まったまま。
目だけは一切笑わず、互いを射抜くようにして。
それを見ている私も、硬直状態なのだ。
「……ってふぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ほたるなんなのその悲鳴」
その男の子の肩に乗っていたのは、真っ赤な舌を出した、真っ黒なヤモリだったのだ。
外をうろつく「黒い何か」を見てはやとがイメージしたような。
ちょうどあの日、私が踏み潰してしまったような。
──────どこまでも黒い、ヤモリだった。
遅れてごめんなさい。
短くてごめんなさい。
色々とごめんなさい。




