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学校にある怪談  作者: 春日向楓
12/16

嵐の前の静けさ……

2人は、翔太の家へ向かうバスの中。

「君の家って……凄いね」

「凄い?何処が?」

「いやいや、昔の武家屋敷みたいだし……」

「ただ古いだけよ。小さい頃は、薄気味悪くてで大っ嫌いだったけど、仕事するようになって慣れたわ」

「へー……確かに、人の気配の無い部屋がいっぱい有りそうで、寒々しくて……ちょっと怖いかも……」

「何よ!翔太もしっかり不気味がってんじゃないのよ人の家!」

「あーいや。お手伝いさんもいっぱいいて…お金持ちだな……って」

「あー……あの人達、お手伝いさんじゃないわ」

「えっ、違うの?……」

「所謂…信者よ!」

「信者?」

「そっ!」

「分かりやすく言えば、亡くなった先祖に縛られて生きてる、気の毒な人達」

「……」

「父親とか、母親に洗脳されて育って来て、亡くなった後もずっと引きずっているの…呪縛が解けないって言うより、解かないのよ……いつまでも繋がっていようとしてるの……そう言う人達」

「ふーん……」

「わたしだったら……祖母も母も居なくなったら、あんな事さっさと辞めて自由になるわ」

「自由?……じゃないの?」

「翔太が思っている程はね」

桜はいつものように笑顔だったが、意味有り気だった。


「宿直室、鍵付けたの佐渡先生みたいね」

「佐渡先生……僕等が宿直室に出入りしてるの、知ってたのかも……」

「にしても何故お札?……しかも今日いきなりって?何があったのかしら」

「宮崎先生が『佐渡先生が可笑しくなった』って言ってだけど…前に佐渡先生に、ガンコツ先生の話した時は、生徒が勝手に騒いでるだけだからって、全然信じてなかったのに……」


「佐渡か……油断出来ない感じはしたけど…」

「えっ?そなの?今迄、全然そんな素振り見せなかったじゃないか。仲良いのかと思ってた」

「ちょっと感じただけよ。他意は無いわ」



自宅に着いた頃にはすっかり夜になっていた。

翔太がインターフォンを押す……何の反応も無い。

2人に不安がよぎった……心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、もう1度押す。


暫く時間を置いて…

「翔ちゃん?…」

インターフォンから微かに茜の声が聞こえた。

「何かあったの母さん!」

「しっ!静かに、今開けるから」

何重もの鍵が煩わしい。翔太は苛っとしながら、次々に解除されるのを足踏みをしながら待った。

最後の鍵が解除されると、2人は部屋の中へ飛び込んだ。

「母さん!」

「茜さん!」

何かを抱え、驚いた顔で立っている茜がいた。

「何?どしたの?2人して…って言うか何で帰って来たの?」

そう言って、茜は部屋の中をウロウロと歩き出した。


「母さん……何してんの?」


「最後はここかな……」

「……」

「……」


「良し‼︎バッチリ」

茜は腕を組み満足気に頷いた。

「あっ、お待たせ〜…ふふ〜ん。今ね隠しカメラをあっちこっちに設置してたのよ」

「カメラ?」

「何の為に……?」

「滝川さん、今日の事を早速男に報告してる筈。近々絶対現れるわ。そうなったらこっちのものよ…証拠撮ってやる!」

「証拠?って……危険だよ。そんな事」

「茜さん……」

「だから他所に行ってなさいって言ったのよ」

「そう言う事じゃ無いよ!母さんが危ないって話だよ」

危機感の全く無い茜に苛立ち、思わず翔太の声が大きくなった。

「大きな声出さないの……チャンスなのよ…お願い」

「母さんが囮になるって事だろう。慎太郎さんがあんな目にあって、母さんに迄何かあったら……危険すぎる!」

「翔ちゃん……ここで食い止めないと…あいつはいつか、あなたに迄手をかけるわ。それだけは絶対に避けないと……その為には証拠が必要なの。証拠があれば、警察も動いてくれるし、過去の事も調べて貰えるかもしれない」


「母さん……分かった。じゃ僕も居る」

「駄目よ‼︎」

「駄目なのは母さんだよ!」

「言う事聞きなさいよ!」

「いやいや、年取ったら子供の言う事聞くもんだから」

「なっ!そんな年寄じゃないわよ!」


2人の押し問答にすっかり存在感を無くした桜が、

「あっのー…わたしも居ます」

顔の横に右手を上げながら桜が言った。

「あ、ああ桜ちゃん⁈……でも、あなた達に、もしもの事があったら……ましてや桜ちゃん迄……」

「大丈夫です!わたし、結構な腕前なんです……ハーーッ!」

そう言いながら空手の型を見せた。

「あ、そうだった……」

翔太が思い出した。

「へー……頼もしいわね」

茜が感心して頷いた。



「取り敢えず今日は仕方無いわね。そう言えばあなた達お腹空いてない?夢中になってて、わたし夕飯まだなのよ」

「あ、そう言えばわたし達も……色々あって忘れてました」

「慌てて帰って来ちゃったからな……」

「ピザでも取ろうか。いい?」

「はーい!」

翔太と桜は元気良く手を上げた。


「40分位かかるそうよ。9時頃になっちゃうわね。お腹空いちゃったわ」

「山だからね…配達してくれるだけマシだよ」



「暇ね、そうだ!少しカメラテストして見ましょう」

「リモコンですか?」

「そっ!これで…OK…ね。ハ〜イ!撮れてる〜」

茜と桜は楽しそうにカメラに向かって手を振っている。


その時、インターフォンが鳴った。

「あら、以外と早かったわね。翔ちゃんそこのお財布取ってくれる。はーい!」

インターフォンの通話ボタンを押し、茜が応対した。


「………⁈」



「どうしたの?母さん……」


「……来た……みたい」

「……うん…んっ?」

「間違い無い……あの男‼︎」

翔太と桜は緊張した。


「ただいまー……」

インターフォンから、男の声がした。

翔太と桜がカメラを覗いた時、男の姿は無く。

既に門の中へと入って来ていた。

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