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学校にある怪談  作者: 春日向楓
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最後の記憶……闇に蠢く者

茜に追い出され、翔太は桜と2人バスを待っている。

「大変な事になったわね」

「母さん大丈夫かな……」

「あれだけの警備も、招き入れる人間が居たんじゃ役に立た無いし……」

滝川は……幼い頃から、忙しい茜の代わりに良く面倒を見てくれてた。優しくて頼りになって、茜も翔太もずっと信頼して来た。

それが、父親の殺害の手助けをしていた何て……全ては茜に執着する男の為に、ずっと茜を見張ってた何て……

「滝川さん……全部嘘だったのかな」

「罪滅ぼしのつもりもあったのかも…」

「だいたい、他の女に執着する恋人って……本当に恋人なのかな、一体どんな奴なんだろう」

「最低な男って事は確実だけど……確かガンコツ先生の教え子って声かけられたって慎太郎さん言ってたわよね……確か誰かさんも教え子だって……」

「佐渡先生⁈」

「何か知ってるかしら…」

「えーもう聞きに行くの嫌だけど…」

「だって、情報が少ないのよねー」


「お爺ちゃんばかりか、父親迄殺されてたなんて……その存在事態、ついこの間知ったばかりなのに…」


「茜さんの言う通り今動くのは危険ね。暫く様子を見た方が良さそう」

「母さん…何かしようとしてるんじゃないかな、無茶しなければいいんだけど…心配だな」

「何か考えがあるとは思うけど…そうよね……好きな人を殺されてるんだもの……茜さん可哀想」



「ガンコツ先生も……随分会ってないな……色々分かった事あるのに報告出来無いね」

「そうね……ちょっと会って来ようか?」

「えっ!……大丈夫かな?……あ、もしかして、ついでに佐渡先生の所に行こうとか思ってる⁈……」

「まさか、こんな時間に行っても追い返されちゃうわよ。ただ、こっちも殺人なのに事故扱いされたままで、なんの手掛かりも掴めてないなぁって、早く成仏させてあげたかったけど……まだ時間かかりそう」

「あんなに会いたがってた、息子さんが亡くなってたって知ったら悲しむだろうな先生…ん?どうなんだろ……悲しむよね?」

「複雑ね、バス来たわよ」


夕暮れ、北星中学校に2人の影。

いつも通り職員室の前の廊下を慎重に抜け、2人は宿直室の扉の前に立った。

そっと静かに扉を開ける……んっ?……開かない⁈


鍵が掛かってる!


何故?急に鍵が……長年倉庫変わりに使用されて来て、今迄鍵等掛っていた事は1度も無かったのに……そして暗がりに目を凝らしよく見ると、お札が3枚引き戸の真ん中に貼ってある……んっ?お札⁈

「何これ?」

「えー……」

「お札⁈って、ガンコツ先生を閉じ込める為?……誰がなんの為に?……」


どんなに生徒達が騒ぎ立てても、学校側は相手にする事は無く、関わる事も一切なかった……それは20年間変わらず同じ姿勢だった……なのに、何が起きてる?


『困った!どうしたらガンコツ先生と話が出来るだろう』

2人はトボトボと暗い廊下を歩いている。


「いる?……」

翔太は、遠くにぼんやり見える秋田川の姿を見つけた。

ほっとした…って言うより、喜んでいる自分に気付いた。

不思議だな……ついこの間迄は、人には見えない物に怯え、憂鬱な日々を過ごしていたのに


「?……」

「先生廊下にいる」

「えっいるの?」

秋田川は廊下から宿直室の通路を、ひたすら行ったり来たりを繰り返している。

「昼間塞ぐから、出られなくしたんじゃ無くて、逆に入れなくしちゃったんだ。

先生達は知らないんだ…ガンコツ先生、昼間は外に出てる事」

「殆どの人は知らないけどね」


「先生⁈」

翔太が声をかけると、秋田川が振り返った。

「あー君か。久しぶりだな……ちょっと今困ってるんだが……」

「宿直室に入れないんですか?」

「あーそうなんだ。鍵が掛かってて……」

問題は鍵なのか?と、翔太は疑問に思ったが、自分が死んでる事に気付いていない秋田川に、説明するには時間が掛かるので今は聞き流した。



「先生……僕、志穂子さんに会って来ました」

「志穂子?おーそうか……大分留守にしてるからな、怒ってるだろうな」

「元気でしたよ」

「そうか」

秋田川は、久々に聞く妻の近況に嬉しそうに笑顔を見せた。

この人、笑顔何て作れるんだ……翔太はちょっとほっとした。


「あの…大事なお話があります」

「わたしに……何か相談かい」

「ええ……まー…僕、慎太郎さんの息子みたいなんです……」

「慎太郎?……何の冗談だい?慎太郎は高校生だ。君みたいな大きな息子がいるには無理があるな」

そう言って笑った。

「……違うんです」

「慎太郎とは、随分話をしていない……生徒の事ばかりにかまけていたら、いつの間にか息子を置き去りにしてしまった。気付けば難しい年頃で……顔さえ合わせてくれなくなった」

「それは、無視してた訳じゃなくて…照れ臭かっただけらしいです。慎太郎さん……先生と話したがってました」

「慎太郎に会ったのかい?」

「はい」

「そうか……そうか」

「先生…慎太郎さんはもう高校生じゃないですよ」

「どう言う事だ?」

「先生…先生は20年前に亡くなってるんです」

「?……」


『馬鹿‼︎そんな事いったらまた固まっちゃうじゃない』


「先生は何者かに…殺されたんです」


「?……そうか、そうかもしれない……だからか。可笑しいと思ってたんだよ……ずっと、同じ記憶を繰り返して、いつも同じ所で終わってしまう……」


『どう言う事になってるの?翔太!説明しなさいよ』


「教えてくれてありがとう」

そう言う秋田川の顔は、ショックや信じられないと言うより、何処かしらほっとしている様に見えた。


「だから先生は……僕のお爺ちゃんなんです」

翔太は人懐っこい笑顔を、秋田川に向けた。

秋田川の目から、大粒の涙がポロポロと溢れ出した。



「ここの所少し思い出した事があったんだ……しかし、その記憶も……同じ所で終わってしまい……その先がまるで思い出せない……」



それは……朦朧とした記憶の中から始まった。

遠くから聞こえて来る音に呼び起こされ、我に返る。

闇の校舎に鳴り響く音。

『……何の音だろう?……うっ痛っ!頭が』

わたしは、はっきりしない頭のまま考えた。

何だか……やけに頭や身体が痛い。

ああ……そうだ暴走族‼︎

わたしは飛び起きた。

激しい痛みが、稲妻みたいに全身を駆け巡る。

『うっー‼︎クソ‼︎』


カラーンカラーンと、それはどうやら何か金属の様な物を引きずる音。

耳を澄ます……その音は徐々に近付いて来る。

今度こそ捕まえてやる。

痛みをこらえ、音のする方へと向かった。


闇の中、黒い人影蠢いている。

それはこちらに向かって来る。

「おい!誰だ!」

目を凝らし、声を掛けた。

だんだん目が慣れて来た。

姿形がぼんやり浮かぶ、相手はどうやら子供らしかった。

「家の生徒か?ん?卒業生か…こんな時間に何してる?」

その手には金属バットが握られていた。

それを確認した瞬間、それは目の前に振り落とされた。


「そこでわたしの記憶は……いつも終る」

「それって……」



「あなた達!こんな時間にこんな所で何してるの⁈」

ちょっと口が煩くて有名な年輩の女性教師、宮崎が声を掛けて来た。

「あなた達ね⁈宿直室に忍び込んで悪戯してるのは‼︎佐渡先生ったら、いきなり鍵を取り付けたかと思ったら、今日はお札迄貼り付けて大騒ぎよ!…もうからかうのもいい加減にしなさい!」

いきなりの宮崎の大声に、桜と翔太は心臓が跳ね上がった気がした。

『佐渡先生が……?』


翔太は慌てて秋田川に

「ごめんなさい。またねお爺ちゃん」

小さな声で囁くと宮崎に向き直った。

「何してたの!」

宮崎は腰に手を当て威嚇して来る。

「あ、すみません。夏休みの課題を忘れたの思い出して…取りに来たんです。藤城君に付き合って貰って……」

2人を怪しむ宮崎の視線は、外れない。

「何故こんな時間に?」

「思い出したのが遅かったので……」

「普通、明日にするでしょ…」

眉間に深い皺を寄せ、上から下へと舐め回す様な視線で桜を見る。

「で、課題は?」

「あ、勘違いだったみたいで…失礼します」

桜はそう言ってその場を立ち去ろうと、翔太の腕を掴んだ。

「待ちなさい‼︎」

宮崎はヒステリックに怒鳴ると、2人の前に立ち塞がった。

その時、教室の入り口に掛かっていた1年3組の札が落ちて、大きな音を立てた。

「ひっ‼︎」

宮崎が思わず変な悲鳴を上げ、頭を両手で抱えた。


直ぐに我に帰ると、何も無かった様に

「今回はいいわ。早く帰りなさい」

そう言って2人を追い払った。


「ふぅ〜、凄いパワーね。今日は大人しく帰りましょ」

2人は学校を後にした。


「さっきのはガンコツ先生?」

「そうだよ」

「結構悪戯ね」

桜は愉快そうに笑った。


「で、ガンコツ先生どんな感じだった?」

翔太は秋田川の記憶の話を、桜に話した。

「それって……最後の記憶…?」

「多分」

「ん〜ゆっくり話聞きたいわね」

「聞いても……何もしてあげられない」

「翔太……」

「僕やっぱり帰るよ。母さん心配だし」

「そうね…分かったわ。じゃ、わたしがそっちに泊まる。着替え取って来るから付き合って」

「えっ?何で……?」

「何で?って、女の子は色々あるのよ」

「そうじゃ無くて、何で君が泊まるのさ?」

「えっ?心配だからよ」

翔太は激しく抵抗したが、桜の押しの強さにかなう筈は無かった。

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