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学校にある怪談  作者: 春日向楓
10/16

恐怖のシナリオを書く男

「慎太郎さん。そのまま当日の事を考えてて下さい」

そう言うと桜は集中した。

「えっ?あ、分かりました。えーと、あの時は確か……」

「あーすいません。声に出さなくてもいいです。大丈夫です」

慌てて桜が遮った。

「あ、ごめん……」

「いちいちシュンとしない!」

茜が、子供を叱る様に言った。


慎太郎が、車を運転している。助手席には、謙也らしい男が乗っている。

当時の流行なのだろうか?

その男の風貌は、到底爽やかさとは程遠く、髪は肩まで伸び、髭も生やし、サングラスをかけ、まるで顔を見られるのを恐れている様な、そんな風に見える。

この格好でデート?喧嘩の原因はこの格好のせいか?慎太郎以外は、皆同じ事を考えていた。

何時頃だろう?外は大分暗くなっている様子。すると、謙也がドリンク剤の蓋を開け、慎太郎に差し出した。

「えっ?ああ、気が効くね!いつの間に?」

「ブラブラしてる時に」

「そうなんだ……ありがとう」


ドリンク剤?って準備良すぎ?まるで、出掛ける事が分かっていた様な……

「簡単に信用しない!」

茜が苛々して言った。

「母さん!過去の事だから……」

「そうなんだけど……」


「眠く無いですか?少し仮眠します?俺、運転変わりますよ」

「えっ、ああ…君は?大丈夫なの?」

「昼迄寝てたから大丈夫です」

「そう…じゃ頼もうかな」


何から何まで…慎太郎は謙也の計画に乗せられてしまっているんじゃないのか?


そろそろ問題の時間だ!

一体慎太郎の死に何が隠されているのか?

謙也の本当の目的は……?


慎太郎が助手席で、スヤスヤ寝息を立て始めた。何の疑いも無く、安心し切っている。

こんなに安らいでいる時間を、何が?誰が?壊したのか?もうすぐ‼︎分かる筈……

謙也が脇に車を停めた。

慎太郎の寝顔をジッと見ている。

耳を澄ませ、寝息を確認している。

謙也が車を降りて行った。

5分位だろうか…謙也が戻って来て、後ろの座席に何かを置いた。

再び車を発進させた。


「トイレにでも行ってたのかな?」

「じゃない」

桜は、この親子の会話に『違うだろ!』

と、口には出さずに突っ込んだ。


山道に入ったのか?登りのカーブが続いている。

真っ暗な闇を無心に走る謙也。

後ろの車のライトが、ルームミラーを照らす。さっきからずっと、後ろに車が付いている。

いつから?

峠の一本道、後ろに車が居ても不思議では無いが、さっき車を止める前もルームミラーはライトに照らされていた。追い越して行った様子は無い。

大分真夜中だ、峠を越える車はそんなに多く無い筈……同じ車か?


そろそろ山道は下りに入る。

すると車は脇の林へと入った。舗装されていない、ようやく車が1台通れる獣道をガタガタ揺れながら……後ろの車はまだ付いている。

こんなに揺れているのに慎太郎は起きる様子が無い?

まるで薬で眠って……いるのか?

行き止まりで車が停まった。

目の前は断崖絶壁……

謙也がまた、車を降りる。

誰かと一緒に戻って来た……女だ。


「彼女が追い掛けて来てたの?仲直りしたのかな……」

「違う‼︎」

桜は、翔太の空気を読ま無い発言に苛っとした。

「何能天気な事言ってんのよ!あんたは…でもこの女の人?」


2人は慎太郎を運転席へと移動させている。

謙也が慎太郎の上半身を引っ張り、女が足を持ち上げている。ぐったりと、力の入っていない体は重く、女は手こずっている。

「しっかり持てよ馬鹿‼︎使えねー女だな!」



「決まりね!」

桜は確信した。

「ねー翔ちゃん……この女の人…滝川さんに似てない?」


「えっ⁈……嘘‼︎」

「それに……この男。あの時の……」

「……?」

「ストーカーよ‼︎」

「‼︎……」



「止めてよ。そんな事しなくても、ここから落ちたら確実に死ぬわよ。」

「うるせー黙ってろ‼︎万が一でも生き延びでもしたら困るんだよ。こいつには確実に死んでもらわないと」

謙也はさっき、車の後部座席に置いた物を取り出した。その手には金属バットが握られている。

次の瞬間!……それは何の迷いも、戸惑いも無く、慎太郎の頭部へと、思い切り振り落とされた。


「ひーーっ‼︎」

「…………っ‼︎」

3人にはもう凝視する事は出来なかった。



息絶えたであろう慎太郎を乗せた車は、静かに崖の方へと向かって行く。


「もういい!止めて‼︎」

茜が堪らず遮った。


「そう言う事か……」

桜は深い溜息をついた。

「確かに……凄く若いけど、滝川さんだ。

睡眠薬は多分、ドリンク剤に入ってたんだね。

眠らせてるから、自分は見られて無いって安心してるんだ……滝川さん」

「僕…殺されたの?」

慎太郎は心細げに肩を落とした。


「慎太郎!あの男とは、いつ何処で、どうやって知りあったの?」

「3年の時、いきなり親爺の教え子だって、キャンパスで声掛けられたんだ。それ以来、会えば挨拶する程度だったけど……そう言えば、別の後輩に聞いても、彼を知る人間は1人も居なかった。大人数だから、そんな事もあるかな?って、その時は深く考えなかったけど…」

「少しは人を疑いなさい!…今更言っても仕方無いけど…」


「母さん……ストーカーってあの時の?」

翔太は朧げな記憶の中から、必死に記憶を呼び起こすが、顔中髭だらけの顔では比較のしようが無く、思い出す事が出来無いでいた。

「声よ!あの怒鳴り声」

「声?……」

「あの時確か言ってた……害虫を駆除してやったとか……何を言ってるのか分からなかったけど……そう言う事?」

確か当時の茜の担当は、浅岡と言う男性だった。彼には結婚の話をしており、北海道に挨拶に行く事も、詳しく話してあった。

それを浅岡は滝川に話したのだろうか?

それから何年か後に、あのストーカー事件。

そして、どう言う経緯なのかその後、担当が滝川に変わった。

彼女がこの家に来る事になったのは、茜達を見張る為?


「警察は⁈」

「無理よ。とっくに事故扱いで処理されてるし、証拠も無い。慎太郎さんの遺体も遺骨になってるし、もう14年も経ってるのよ。今更警察は動いてくれないわ」

「そんなーじゃどうすれば……どんなに死者の話を聞いたり、見る事が出来たって、犯人捕まえられなきゃ意味ないよ!」

翔太の心は、遣り切れ無さで破裂しそうになっている。

拳に力を込めテーブルに振り落とす、大きな音が部屋中に響く…

激しい自己嫌悪‼︎それは涙となって溢れ、翔太は両手で顔を覆い……泣いた。

「翔太……」

「あなた達、これ以上関わると危険よ。もう辞めて!」

「僕のせいで危険な目に……命に変えても君達の事は僕が守るから!」

「…………慎太郎さん」

「ありがとう…」


「翔ちゃん今からどこかホテルにでも泊まって……滝川さんが犯人と繋がってるって分かった以上危険よ!」

「母さんは?」

「わたしは大丈夫!」

「駄目だよ!犯人は母さんを狙ってるんだ!1人じゃ危ないよ。一緒に行こう」

「2人一緒にいなくなったら怪しまれるわ。あいつはどんな手を使っても見つけ出す。前みたいに……わたしは色々準備してから、マシュとチョコの世話もあるし…だから先に…ね!」

「わたしの家に…翔太の事は任せて下さい」

「お願い!桜ちゃん」

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