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異界探索行  作者: 詩月凍馬
7/14

出立前夜

 早いもので、ファーラにQCWとFCAを与えてから既に一月ほどが経つ。

 最初こそ睡眠学習で学んだ弓闘技に戸惑っていたらしいファーラだが、修練を重ね、日を経るに連れてその戸惑いは消えていった。

 まぁ、元来遠距離の専門職と言って良い弓使いでありながら接近戦を――尚且つ、弓自体を利用した体術を使用すると言うのだから戸惑うのも頷ける。


 最も、ファーラに言わせればたった一、二時間眠っただけであれほど複雑な闘技を会得出来ていると言う事が一番の驚きだったらしい。

 その言葉にさもありなんと頷きつつ、組み手の相手を務めた訳だが――結論から言えば、ファーラの実力は可もなく不可もなく、と言った所だろう。


 身に着けてよりの日の浅さもあって、錬度が足りていないと言うのも勿論あるが、根本的に接近戦への適正の低さが目立つ。

 無論、その辺りの適正の低さは睡眠学習における習得プログラムでの矯正で、ある程度の改善が見られてはいるが、やはり遠距離戦にこそ本領を発揮する事に変わりはない。

 これから先、修練と実戦を重ねていけば兎も角として、現時点では自衛のレベルを出ていない、と言えるだろう。


 とは言え、これで当初よりの懸念事項であるファーラの接近戦に置ける自衛、が最低限確立された事は確かだ。

 故に、予定されていた月狐族の村からの出立を本格的に視野に入れられる事になり、ファーラも交えて相談を重ねた結果、旅立つ事への同意を得る事が出来た。

 元より、巫女として選出された彼女は、番を得た時点で世界を回る事になるのだと承知していたらしく、村を出る事自体への躊躇いは無かったらしい。


 その上でなお、ここまで出立の日が伸びたのは、偏にかつて領主家次男の暴走によって失った四肢と、それに伴う体力、身体能力の低下が原因である。

 出立が遅れた所で俺としては別段思う事など無かったのだが、彼女が懸命にリハビリに励んだ理由の裏側には、それもある様に見える。


 成る程、以前ジャニア老は『巫女は身命を賭けて番に使える』のだと言っていたが、献身もここまで来ると一種の信仰に通ずるものがある様に思えるものだ。

 通常の信仰との違いは、心の置き場が神であるか、それとも番であるかの差異であろう。

 無論、それとは別に想い人としての互いへの思慕は確たるものとして存在している故、単なる教義への信仰と同義、とは言えんのだろうが。


 閑話休題。


 話し合って決めた出立の日を明日に控え、俺とファーラは何時もの様にグリフォン内部に存在する俺の自室で寛いでいた。

 ゲーム時代より見慣れたこの空間ではあるが、ファーラが居る様になってから何となく空気が違う様な感覚を覚える。


 元より飾り棚に並べられた酒瓶とクリスタルグラスを除き、然したる装飾を施している訳でもない、ある意味無味乾燥な部屋なのは変わらないのだが、そこにファーラと言う存在が加わる事で室内の空気が優しくなった様に感じるのだ。


 室内のインテリアでの変更点と言えば、緑豊かな月狐族の村で生まれ育ったファーラが感じるだろう圧迫感を、僅かでも軽減できればと設置した観葉植物の鉢植えが数点、増えた事位だろうか?

 それにした所で、単体で見れば然したる変化ではない事は確かなので、この空気の変化は正しくファーラの存在に所以するものだろう。


 そんな愚にも着かない事を考えながら、手元のグラスを傾けて酒を喉に流し込む。


 これは飾り棚に並べられたものではなく、狩猟に加わった事で得られた月狐族の酒だ。

 オルニードと言う村の近くに自生する植物を原料にしたこの酒は、飲み口の割に度数が高い。

 地球の酒で言えば、ラム酒が近いだろう。


 実際、オルニードと言う植物は外観こそ大型のアロエにも似た見た目だが、その肉厚の葉は切り取ってみれば繊維質であり、潰して絞ると糖度の高い液体を得る事が出来る。

 そしてこの液体を煮詰めれば砂糖を得られる、とくれば地球で言うサトウキビに該当するのだろう。


 グリーン・アースの文明レベルで、尚且つ自治区とは言え小さなこの村で砂糖が使われている事を知った時は驚いたものだったが、このオルニードと言う植物の存在もあって、この村で砂糖は然程珍しいものではない、と言う事らしい。

 最も、それが許されているのは『巫女』の輩出に関係して自治権を得られているからであって、単なる領主配下の農村であったとすれば得られた砂糖の大半は召し上げられているのだろうが。


 氷を入れたグラスに注がれた、やや黄色身がかった酒は、度数にして40度程。

 グラスと氷がぶつかる涼やかな音を楽しみつつ口の中に含めば、仄かな甘さの中に辛味を含んだ味わいが広がる。

 度数が強い酒特有の喉を焼く感覚を覚えながら、再び飲み下す。


 人によって好みは分かれるだろうが、俺個人としてはこのオルニード酒は悪くはない、と思っている。 

 何と言うか、素朴な月狐族の村人達を連想させる、素朴な味わいでラム酒より余程飲みやすく感じるものだ。

 その分、気づけば酒盃を重ねてしまう事もあり、やはりこれもデュランの体でなければ二日酔いに悩まされていた事は確実だろう。


 そうやって思考を肴にグラスを傾けていると、料理を盛り付けた皿を手にしたファーラが歩いてきた。


「もう・・・デュラン、お酒も良いけど何か食べないと体に悪いよ?」


 小さく苦笑を浮かべながら、テーブルに皿を並べていくファーラに俺もまた苦笑を返す。


「済まん。調理を待つ間に少しならば、と思ったんだが・・・どうにも飲みやすくてな。思ったよりも進んでしまった」


 こればかりは謝罪するより他にあるまい。

 この体になってから、アルコールには格段に強くなったのは確かではあるのだが、だからと言って空き腹にアルコールを流し込んで体によかろう筈もない。

 俺が酒を飲む事自体には何も言わないファーラも、食べずに飲むとなれば苦言を呈するのは当然と言えた。


 今日も明日の出立に備えて早めに切り上げこそしたが、村での活動を終え、風呂で汗を流した俺達は夕食をとろうとしていた所である。


 最初こそグリフォン内部の食堂――機械的に制御され、食材のストックさえ怠らなければ自動で調理を行ってくれる――を利用していたが、ある程度リハビリが進んでからはこの自室のキッチンにて、ファーラがその手腕を振るってくれていた。

 素朴な村娘らしく、元々家事仕事は好きだったようで村に比べ余りに便利な環境に戸惑いつつも、今ではすっかりと手馴れた様に使いこなしているのだから恐れ入る。

 キッチンの便利さ以外にも、ストックされている食材や香辛料の類の豊富さに驚き、喜んでいた彼女が腕を振るった料理は、豪華でこそないがどこか優しい感じがして落ち着ける味わいだ。

 家庭の味、と言うのだろうか?

 既にして地球時代の家庭――実家の料理の味付けは記憶から欠落しているし、ファーラとは出会ってから日が浅い所か、生まれた世界すら異にしているにも関わらず、その言葉を連想させられる。


 並べられた料理に視線を移せば、今日の狩りで獲ってきた鹿の香草焼きと、プーカと呼ばれる紫色の根菜と大根、キュウリを細切りにして一口大に千切ったレタスと和えたサラダ等。

 リングの翻訳機能で大根、キュウリ、レタスと翻訳されるそれらは、恐らくはこちらでの呼び名は異なるのだろうが、そのまま地球でのそれらと何ら変わりない。

 そしてプーカと言う根菜だが、色こそ紫だが見た目の形と味はカブに近い様に思えた。

 ただ、若干甘みが強い気もするのだが、酸味を利かせたドレッシングとの相性は抜群に良い。


「はい、ちゃんとお料理の方も摘んでね?」


 そう良いながら俺の対面のソファーに腰を下ろしたファーラに合わせ、俺も食事を開始する。

 リアルの追求を謳っていただけに、ゲーム中でも食事を取らないと疲労値――これが上がるとHPの回復量が低くなり、各種ステータスが減少する――が上がりやすくなると言う仕様が存在していた。

 その為、食材系アイテムを集めると言うのはある意味当たり前の行為としてあったのだが、スキル自体に『調理』と言うものは俺の知る限りなかった。

 単に未実装だっただけかも知れないが、こと調理となればリアル――と言う言い方もおかしい気もするが、元日本人だった頃の俺の腕前が、そのままこのデュラン・サージェスの調理の腕前と言う事になる。

 つまり、普通程度には作れはするが、まぁ、言ってしまえば『男飯』とでも言うべきか、手早く作れて腹に溜まる、がスタンダードと言う事だ。


 その点、ファーラの作る料理は栄養学が確立されていないらしきこのグリーン・アースの文明レベルを考えると、少々不思議な程にバランスが取れた食事が並ぶ。

 一種、経験則的に学んだのか、肉類に対して野菜が多く、ともすれば偏食に陥りかねない身としては大変に有り難いものである。


 村での出来事や今日の狩りでの出来事等、他愛のないやり取りを交わしながら食事を終えると、ファーラは早速とばかりに皿を纏めてキッチンに向かっていく。

 その背中を何とはなしに眺めながら、再び俺はグラスを傾ける事にした。


 片付けの手伝いをと思わないではないのだが、ファーラ曰く『これは私の仕事だから』との事らしく、頑として譲ろうとしないのだ。

 まぁ、これは月狐族の村――と言うよりは文明レベル的な背景もあるのだろうが、このグリーン・アースでは男は外で、女は内で働くと言うのが一般的な様である。


 現代日本人としての観点から見れば、甚だ全時代的に見受けられる風習ではあるが、このグリーン・アースと言う世界の状態を見れば解らないでもなかった。

 街道が確りと整備され、それに伴った警備の徹底等が行われているのならば別だが、この世界では村や街を出ると言うのはそのまま生死に直結する問題なのだ。

 村や街、それぞれの間が離れていると言う事もそうだが、政治的な面でも王政――そしてその配下の領主による統治である。

 現代日本の様に三権分立が確立されているならば兎も角として、権力の大半が中央に集中しているこの世界の政治では腐敗もまた起こりやすく、また、そうでないとしても書く領地同士で綿密な連携が取れているか、と問われれば否と言わざるを得ないだろう。


 当然、法的な整備も相応の物であるのだから、現代の様な生活保障制度等あろう筈もなく、一度飢饉が怒るか暴政が布かれる等すれば食い詰めて夜盗に身を落とす者も少なくはない。


 一般に利用される最速の移動手段と言えば馬車であるらしいこの世界では、一つの街と街を移動するだけでも多大な時間を要する事もあり、村や街を出る事はそのまま夜盗に襲われる事も覚悟しなければならない訳だ。

 加えて、この世界には大型の肉食獣だけでなく、魔物と言う存在も居ると言う。

 得られた情報の限りでは、ファンタジー小説やゲーム等に代表されるモンスターに近しいと予測できるそれらが跋扈する以上、外に出る上で何が最も要求されるかと言われれば、まずもって『武力』になるだろう。


 女性蔑視的な意見になってしまうが、同年代の一般的な男性と女性を比べれば、身体能力的なものは男性に軍配が上がる。

 無論、中には例外が存在する事も確かだが、一般的に見ればその傾向が強いのは確かだろう。

 更に言えば、女性には妊娠・出産と言う時期が存在する為、それらが存在しない男性が外へと言う考えになるのは、ある意味致し方ない事であるのだろう。

 故に、それらの事も手伝ってか、未だこのグリーン・アースでは男は外、女は内と言う一種全時代的にも見える役割分担が成されている訳だ。


 とは言え、それが男尊女卑に直結するでもなく、単なる役割分担として済んでいる所を見ると、地球によるそれよりはまだまともであるのかも知れないが・・・まぁ、これは月狐族の村を見る限りは、と言う前提がつく。

 最も、法や風習と言った物は、理屈はどうあれ時代に迎合している事が最良なので、この世界の法や風習を現代日本的な思想で批判する気はないのだが。


 と、それは兎も角としてファーラ自身、家事仕事を楽しんでいる様でもあるので、俺としては異なる分野で返す事にしようと決めて今日に至る。

 それが彼女の身を護る事以外に、具体的な何を指しているのかはまだ漠然として旨く掴みくれていないのだが、最低限、彼女への感謝と労わりを忘れるべからず、と肝に銘じた上で探していく事になるだろう。


 そうやって思考を進めている内に、洗い物を済ませたらしいファーラが戻ってくる。

 そのまま真っ直ぐ俺の所へ歩を進めると、極自然な様子で俺の膝上に横向きで腰を下ろした。


 いつぞやの宴会で、未だ手足をまともに動かせていなかった彼女を横抱きに座らせていたのと同じ体制である。


 あの時僅かに懸念した通り、ソファーに座る俺とその膝に座るファーラと言う構図は、ある意味日常のものとなってしまっていた。

 元々、接触を含むコミュニケーションを好んでいたファーラの性格もあるが、日常生活に支障がなくなるまでの二週間近くをこうして過ごしていた事が原因だろう。

 流石にリハビリで疲労したファーラに、自分で座って自分で食え、とは言い辛い故、必要であれば食事を手伝ったりもしていたのだが、その際にファーラはこの体勢を望んだ。


 彼女曰く『安心する』らしいのだが、こうしてグリフォンの私室等で行うなら兎も角として、村で食事する際にもこうだった為、俺としても既に恥かしいと言う感覚は通り過ぎてしまっている。


――・・・全く、こんな状態であれば村の連中が囃し立てるのも自然、と言う訳だな。


 あの宴以来確定されたかのようであった、俺とファーラが恋仲であると言う村での見解も、事ある毎にこうしていればそうなるのも極当然の帰結だろう。


 今更ながらではあるが、苦笑するより他にない。


 親子は勿論、兄弟姉妹であっても一定の年齢が来ればそれなりの距離を置くにも拘らず、血の繋がりもない年頃の男女がほぼゼロ距離で密着しているのだ。

 自ら噂を助長したようなものである。


 そう思って苦笑を浮かべる俺に、ファーラは小さく小首を傾げた。


「? どうかしたの?」


 予断ではあるが、この距離感――立っている時に比べ、顔の位置が近い事もまた、ファーラがこの体勢を好む大きな理由の一つでもある。


 ファーラの身長はポッドの計測によれば154cm。

 対して俺はメディカルルームのデータを見る限り192cmと、ゆうに40cm近い差がある為、並び立つと俺の胸辺りにファーラの顔が来る事になる。


 まぁ、これはあのゲームのキャラクターメイキング方式によるもの、とも言える。

 昨今のMMORPGの例に漏れず、あのゲームもかなり細かいレベルまでのメイキングが可能だったが、身長等は数値入力ではなくモニターに移る『素体』と呼ばれるキャラクターシルエットを見ながら、コントローラーの上下キーで調整する形になっていた。


 その際、比較対象となるものが一切無いため、大体この辺だろう、と判断すると実はオーバーしていた、と言うプレイヤーは俺に限らずかなりの数に上る。

 そう言った理由もあって、あのゲーム内での身長差はかなりのものがあったもの事実。

 俺の様に180台を狙った積もりで190越えた男性キャラクターもいれば、小柄にしたかっただろうが、130を割ってしまう様な女性キャラクターも居た。


 それぞれメイキングを終えた後、マイシップに登録されているメディカルデータを見て予定した身長とのギャップに驚く、と言うのはあのゲームに置ける一種の洗礼的な出来事であった訳だ。


 俺の身長に関してはこう言った理由ではあるが、ファーラの場合は特に小柄と言う訳でもないらしい。

 と言うのも、月狐族の村人達は総じて身長は低め――と言うのも語弊があるが、現代日本で言えば少々昔の平均身長に近いだろう。

 女性で言えば160を越える者は殆ど居らず、大体が140後半から150半ばと言うのが一般的で、男性であっても170後半と言うのは殆ど居ない。

 大体が160台の内だ。


 もっとも、これが月狐族の種族的なものなのか、それともこの世界での平均なのかは解らないが。


 ともあれ、苦笑の理由を誤魔化すには都合の良い話題なのは確かだ。

 別段、素直に話したところで問題はないとも思うが、流石に少々照れ臭い部分もある。


「何、街とやらでは身を屈めずに済むのだろうか、とな」


 そう言った俺に、ファーラはクスクスと小さな笑みを漏らした。


「笑うのも解らんではないが・・・俺としてはかなり気になる所なんだが」


 まぁ、それも事実だ。

 月狐族の村は嫌いではない――と言うより、個人的には好きな部類に入るのだが、村人の平均身長に合わせて作られた家屋は、俺からすると少々窮屈な部分もあったのだ。


 何しろ、ドアを潜る度に多少とは言え身を屈めねばならないし、ベッド等俺が身を横たえれば足が出てしまう有様だ。

 ファーラのリハビリもグリフォンで夜を過ごした理由だが、あちらでは少々過ごし難かった、と言うのも正直な所である。


 これから先の町でもそうだと言うのであれば、それこそどこぞに家でも構えでもしない限りは窮屈な思いをし続ける事になる。

 そんな俺に、ファーラは少し笑った後再び口を開いた。


「ん~、どうかな? 私は村から出た事無いから・・・。お姉ちゃんなら、知ってると思うんだけど」


「・・・姉? 初耳だが、姉が居たのか?」


 尋ねる俺に、ファーラはキョトンとした表情を浮かべる。


「え、うん。3つ上のお姉ちゃんが一人。・・・あれ? 言ってなかった?」


 不思議そうなファーラに、首肯を一つ。


 村でジャニア以外にファーラの家族を見かけない事は気になってはいたが、俺の方から尋ねる事はしていなかった。

 何しろ、文明レベル的にも環境的にも、死亡率が高いのは間違いない世界だ。

 そんな状況下で下手に尋ねるのも、少々気が引けたと言う訳だ。

 下手に尋ねて「既に亡くなった」と言う回答が来た場合、こちらとしても対応に困る。


 よって、言い出さないのであればと尋ねなかったのだが、・・・今の反応を見る限り死んだどうこうではなく純粋に忘れていた様である。

 ・・・まぁ、出会いから先、色々と変化が重なったので無理からぬ事とは思わないでもないが。


「あ、あはは・・・ごめんね、デュラン。もう言ったつもりになってたみたい」


 苦笑交じりに謝ってくるファーラに、別段怒っている訳でもないので「気にするな」と返す。


「うん、ありがとう。えっと、お姉ちゃんなんだけど、今は領主様の街に居るの。ほら、この村って自治を許されてはいるけど、領主様の領地って事には変わらないでしょ? だから何でもかんでも好き勝手にって訳にも行かないし、領地の義務として参加しないといけない事も出てくるから、村から最低でも一人街に出して村との繋ぎ役をする様にってなってるの」


 成る程、一種の領事の様な役目と言う事か。


「それで、今その役目に着いてるのはお父さんなんだけど、将来の勉強の為にって事でお姉ちゃんも一緒にいってるのね。基本的にその役目に着くのって村長の家系って決まってるから」


「あぁ、実地研修と言う事か・・」


「うん、それで・・」


 出立を翌朝に控えた前夜、いつもに増して尽きぬ話題を交わしながら俺とファーラは夜を過ごす事にしたのだ。


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