道端
いつからだっただろうか。
こんな気持ちを抱くようになったのは。
どうしてだろう。
いつから、世界はこんなに汚くなった。
努力は報われる。
頑張った人こそが幸せをつかむことが出来る。
未来は自分の手で切り開くんだ。
物語の主人公たちはどんな苦難にぶつかったとしても、仲間にさせられて、最後には笑顔で幕を閉じる。
でも、現実はそうではなくて。
最近の世の中ではこんなことを言っても笑われる。
そんなの、当たり前でしょ。
今更何言ってんの。
勝手に夢見て現実に絶望して、悲劇のヒロイン面しないでよ、って。
確かにそう。
私は現実に覚めた目を向けながら、心のどこかで希望を夢見ている偽善者でしかない。
でも、どう言ったって私の自由でしょ。
道行く人は多種多様。
一人で俯いている人、手をつないで歩く親子、未来を語らう恋人達。
どの人も平等に与えられた命だ。
ただ、生まれた育った環境や、出会った人が違っていくだけで。
こんなにも、人生に差が生まれるんだ。
あぁ、ほら見て…。
あんなに頑張って、食いしばって、身体を削って生きているというのに。
彼を掴んで離さない人々は、骨の髄まで彼の全てを吸いつくして。
あぁ、ほら見て…。
必死に自分を保とうと震えているのに。
壊れそうな彼を、我知らずと叩き潰そうとする人々を。
誰として、助けることなど出来なくて……。
ただ、見ていることしか出来なくて……。
法も社会も無に等しい。
誰が彼を守れるというのだろうか。
道端で、今日も一人。
私は冷めた目で道行く人を見つめている。