雪
目が覚めた時、まず感じたのは気持ち悪いほどの寒さ。
そして、白い息。
時計を見ればAM5:47。
ここで二度寝をすれば確実に寝過ごす。
かといって布団の外には出たくない。
どうしよう……。
毛布をかぶってたら寒くないかな。
まだ牛乳も残ってたし、熱めのココアでも作ろうかな。
……よし、ココア飲も。
毛布をかぶりながらココアをすする。
ふぅーと吐き出した息はさっきよりも白くなった。
まだ太陽は昇っていないようで、電気を消すと周囲は一気に闇に包まれる。
ふとカーテンを開けてみた。
特に理由はない。
ただ、無性に何かが気になって。
少しずつ明るくなっていく空の中に見えたのはたくさんの白い粒。
大嫌いな季節の中で許せるものの1つ、雪。
この様子だときっとすぐ止んじゃうんだろうな。
同じ寒いなら雨よりも雪が降ってほしいと常々思う。
この雪が万が一積もったら、小さな雪だるまでも作ろうかな。
上手に出来たら、あの人は褒めてくれるだろうか。
あの笑顔で、優しく頭を撫でてくれるだろうか。
空になったマグカップ。
身体はすっかり温まった。
けどすぐに朝の準備をする気になれない。
……一旦布団に戻ろ。
二度寝しないように頑張らなきゃ。
「もしかしてココア飲んだ?」
布団に戻るや否や、隣から眠たそうな声。
「さっきまで飲んでた」
「いいなー。身体温まった?」
「ぬくぬくですぞ」
私が自慢げにそう言うなり、身体がココアとは違うぬくもりに包まれる。
「どしたん?」
「ゆたんぽ」
私を抱きしめる手に力がこもる。
「二度寝しちゃったら起きれなくなるんですけど」
返事はなく、ただ安らかな寝息が聞こえるだけ。
しょうがないなぁ。
そう思う私も、案外まんざらでもない。
大嫌いな季節に大好きな人に包まれる、大好きな瞬間。
今日だけは、今だけは、どうか許してもらえますように。
もっとこの人のぬくもりに包まれたくて、もっと触れていたくて。
私はそっと、少しだけ彼に身体を寄せた。