23、状況から始まる会議(1/2)
遅くなって本当にすいません。色々リアルでやっていたのはそうですが、ただの言い訳にしかならないのでいいです。
ですが、また書き始めました。これからもよろしくお願いします!
……なぜだろう。減ると思っていたお気に入りが増えてる。まぁそれが気力になっているんですが!
「彼女の名前はフィリス。国の参謀として動いていただき、私よりも賢明な彼女に敬意を評して、イスメネ・フィリスと言ってる」
俺とパレイア王女、そしてエミリーがこの場にはいた。具体的に言えば城内の廊下を歩いており、ゲーマーの話をしている。セレーナは動物たちのところへ行くと言って足早に城を後にしていた。ここはメイドといった使用人も多いし、不愛想な騎士などがいることもあって居心地が悪いのであろう。彼女の性格上仕方がない。
「聞いてる?」
「あぁ悪いな。で、イスメネだっけ。どういう意味だ?」
「古い言葉で……あなたたちの言葉で言い表すなら『賢者』かな」
フィリスという言葉を聞く限りヨーロッパの人なのだろうか。しかしゲーマーとしてこの世界に来てから、今のような地位に就くとは彼女の人生が気になるというもの。俺なんて最初は泥棒扱いされていたのに。
しかしだ。そう思うと、自分が今このような場所にいるのが場違いな気がしてくる。高そうな鎧が並べられた美術品に、赤いカーペットの上を堂々としながら歩ける日が来るとは。世の中は全く持って何が起こるか分からない。まぁこの世と定義していいのかわからないけど。
「なにそのぽけーっとした顔。ギルドメンバーとして恥ずかしいからやめて」
「いいじゃないか……。だって高級そうなところで過ごしたいとか、夢を見ることあるだろ? そう思うと、こういうのすげーなーって」
「そうなの、ふーん」
「お前はそういうのないのか?」
「なにそれ。あなた、大人にサンタさんがいるかどうかを聞くの?」
「あぁそうかい。……夢のないやつめ」
さっきからこう何か当たり強くなった気がする。具体的に言えば、自分がこの戦いに出ると決めた辺りからだ。彼女は別に今も悩んでいるという保留を示したのに、なぜこう機嫌を悪くしているのだろうか。
それにしたって、自分だってまだ成人を迎えていない子供だというのに、大人と自称したくなるのはいかがなものかと言いたくなってしまう。まるで自分は夢を打ち砕かれたと言わんばかりの対応だ。
その時、鼻にサワサワした感触が伝わる。柔らかく、香しいものに、思わず一歩引いてしまう。
「あ、すいません」
「こっちこそ、立ち止まってごめんね。目の前にあるのが、図書館」
隣からきつい目線を感じるが、それは無視だ。
どうやら目の前の煌びやかに装飾が施されている扉が目的地で間違いないようだ。王女の説明通りだとすると、ここが図書館ということになる。
「なるほど、静かな空間で落ち着いた話をするには持ってこいな場所だ。城の隅だし」
「いまはローラさんと戦略を練っている。あなたにも話を聞いてほしい」
なるほど。今後の方針についてギルドのリーダーと国の参謀が話し合うのは必要不可欠だ。戦争も差し迫っているこの少ない時間の中で、一体どのような話をしているのだろうか。
「だからですね。最近のストーリー業界では独創性が必要になっていて、その中でキャラの個性というのは重要なファクターだと思うんですよ!」
「いやまぁそうなのかもしれないでしょうけど――――」
「そう、なの、です、よ!! 最近は同人の参入で、星屑のように設定が溢れているのですから。その中でゲーム会社は差別化を図るためにあれこれ模索をし、何時間もかけつつ悪戦苦闘しているのです!」
「まるで会社にいましたと言わんばかりの必死さですね……」
「聞いてほしいのはそこじゃくて、差別化のためにはキャラクター設定が大切なのは間違いないってことですよ! それも最近は差別化をするために設定の付け方がおざなりになりがちで、その中でひどいのが語尾! 最後にとって付けたように『にゃん☆』とか『じゃん』とか付けてキャラ付けアピール! 何ですかあれ!?」
「私たちの話はなんでしたか?」
「分からない人ですね! 世界はにゃんだけで許されることになったこと! これは大きな問題で、そして許さざるべき仕組みです! 確かにキャラ付けには必要ですよー。でも考えてくださいよ! 家族の殺害現場を目撃したときに、『お母さんが死んでるにゃん!』とか言うんですか!? どんだけ家庭環境歪んでたんですかあ!」
そのあとも問答は続いていく。お題、世の中のノベル事情についてだが、まるで浅い知識をひけらかす評論家で、まぁ身も蓋もかけた言い方をすれば聞くに堪えない内容だ。
隣に立つ王女はどうしたものかとこちらを見て苦笑いでごまかしているし、更に一つ隣を見やればまるで『アホな奴がいるわね』的な目線で扉を睨んでいる。
「あー……二人は戦略を練ってると?」
「そのはず……なんだけど……」
先ほどよりの自信に満ちた表情はどこへ行ってしまったのだろうか。とにかくあけてみないと分からない。判断するのはその後だ。
扉を開け放てば、目の前には机を挟んで議論をし合っている二人の姿がいるのだった。机の上には世界地図だろうか、海やら山のイラストが描かれたマップがグリッド状になって書かれていた。
まぁそこまではいいとして、その地図に語尾録なんて書き込んでいるところを気にするべきなのかもしれない。
「あのー……ローラ?」
俺の呼びかけに応じて彼女はこちらを向いてきた。その目を見て、咄嗟に声をかけるべきではなかったかもと後悔してしまう。
「あぁユウマさん、ここで会えるとは本当に奇遇ですね! あなたじゃないと彼女と話が合わせられないと思っていたところなんですよ!」
「……えーっと」
そして大抵嫌な予想は現実となってしまいがちだ。ゲームでもフラグの概念があるというのに、なぜいつも忘れてしまうのだろうか。
「この子もノベルゲームについて分かると言いますか!? 言っておくけど、やっただけじゃ自慢にならないですよ! 私と張り合うなんて早すぎますから」
「やったことはある――――ってか睨むな。怖いから……」
「睨んでません! 目くじらを立てているのです! そういう被害妄想は今後あなたにとって良くないですよ。私のようにしないと」
「あー、はいはい。あぁそうかい……」
情報屋といい、ギルドマスターといい。何でこうゲーマーという人種は面倒な人ばかりが集まるのだろうか。もちろん俺を除いての話ではあるが。
彼女は少しやせ形に見えた。そこは今までの奴らに比べれば弱々しいイメージだ。赤子のような白い肌、肩幅まで伸ばした水色の髪は少しウェーブがかかっている。何に対しても落ち着いていそう目もととビー玉の様な目が幼さから脱しているところと言わせる。
服装は白いレースとロングスカートで全体的に清潔感を出していた。そこに帯を巻いていて、今はローラに詰め寄ったためか、少し乱れている。暖かそうな帽子も被っており、コットンハットでつばには羽のようなものが付いている。
全体的に言わせてもらえばガキだな。しかも見え張るガキと言いたい。
「それで、戦略は立てられたの?」
エミリーが早く終わらせたいと身体で表現している。まぁ自称仕事人だしな。確かにこんな話で時間を割きたくないだろう。大人の対応で事を進めようとしていた。
「そうだった! それを忘れていたよ。でも心配なんてないから大丈夫! ちゃんと相手の情報を聞き出して、パターンを見つけだして、対策を取ろうとしていたところです!」
「……で、実際に今からやることは?」
「相手の名前を知ることから!」
いかん。自称仕事人が舌打ちしている。
「ローラ、こいつを頼るくらいなら神様に頼ったほうがマシな気がするけど」
「なにぃ!? 私よりも神様の方が有能だと言いたいのですか!? 私はノベルゲーマーで、この世界の全てを知っていると言っても過言ではない存在なのですよ!」
「その発言こそ無能の証よ……」
「まぁまぁ。皆さん落ち着いて」
何でこの場面で王女が喧嘩仲介役になっているのだろうか。ローラは何か憑き物が落ちかのようにホッとした顔になっているし。代表者やお偉いさんや参謀といった重鎮の集いとも言えるメンバーなのにまるで協調性がないメンバーです、本当に。
王女が手をパンと叩く。みんなの注目が集まったことを確認すると、彼女は指で一を立てるのであった。
「さて、落ち着いたところで……やるよ」
「その口調。やっぱり王家って感じがするわね」
その口調は今までの温和な話し方ではなく、言葉に重みをもたせたしゃべり方。エミリーの言う通り流石というべきだろう。その一言だけで、みんな喋っていけないという気持ちが伝搬し、顔つきが変わった。
「作戦会議を始めるよ。じゃあまずは相手の情報から考えるから。ローラさん」
「分かりました」
地図の上に投げ捨てられていた資料らしきものに手を取って、彼女は話を始めた。
「まず知っているとは思いますが、相手は私たちと同じゲーマーです。それも戦略ゲーマー。名前はノラン・デュランド。私の見解では彼の補正は信頼、行動力、状況判断といったところでしょうか。とにかく敵である以上、脅威の存在です」
「敵国の情報はフィリスさん、お願い」
「えーっと、兵国の話ですかー。……昔々、あそこは内戦の多い国でした。経済的は貧しいの一言で片づけられてしまう程、潤沢な街は存在しなかったのです。国の代表は何代に渡ることなく、横取りシステム……誰かがやられては誰かがその地位を奪い取るものばかりです。だけどそう言った人は私利私欲が強く、国として安定のしなかった国でした。そして、これを変えたのがその男――――」
「私たちは別に悲壮なストーリーなんていらないから。もっと端的に言いなさいよ」
何も見ることなく、意気揚々としていたフィリスの顔に不満が映る。このフィリスはノベルゲーマーも関係しているかもしれないし、さっきのやり取りでもそうだったけど、喋りたがりなのかもしれない。まぁそれよりも自己主張が激しいガキだと思えるけど。
「ふん。これから話すところですから静かにしてなさいこの単細胞、です。話を戻すと、その男は敵国での改革者となり、烏合の衆であった獣人たちをまとめ、頂点へと上り詰めました。他国への侵略を図ることになったのも、国としての団結あってのことでしょう。まずは小さな街から、冷静な戦略や的確な状況判断から相手を制圧し、傘下とさせる」
「あいつがそんなことするなんてな。最初の印象はただの仮面野郎だ」
「今では5万の軍勢を築き上げました。そして開発として生み出してしまったヴォートルの存在があるために、他国を凌ぐほどになっていますね。更に研国プレジ・エ・リーチェへの協力関係から、勢いは更に増していると思われます」
確かそこは研究によって発展した国だったはず。エミリーに聞いた時は魔法が当たり前の世界の中で、そこは研究をするという、言わば俺たちの世界に近い国だとか。これから行く機会があるのだろうか
とにかくその国との協力関係が何を意味しているのか、彼女に質問をしたところ、食糧支援だと断言した。
「さっきも言いましたが、兵国は食糧難が問題でした。しかし隣と友好関係を持つことによってそれを解消したのです。兵国は研究用の資材を、研国は食糧を交換してお互いの利益となるようにしたのです! つまり今は戦力、経験的にも相手が上ということですね」
食糧といったが、細かい指摘をすればこの場合は兵糧と呼ぶべきなのかもしれない。戦略ゲーマーなら、国内の治安は既に安定化させたはずだ。烏合の衆をまとめたのがその証拠。そして続けて外交も行い不足な面を補ったのちに、戦争の準備のための行動も起こしている。
「何か気づきました?」
「ん?」
王女が俺の顔から何かを読み取った上でそう聞いてきた。その目には期待と信頼の目を見せている。流石優しき王女というべきなのだろうか、日頃やっている気配りがこういった人を見ることに長けているのかもしれない。
その期待を裏切らないように心がけよう。
「実際に聞いてみると、戦略ゲームに適ったやり方をしているなと思っただけだ」
「相変わらずはっきり言わない奴……で、こっちの戦力はどうなの? パレイア王女」
「簡単に言えば、数だけなら私たちの方が上だと思う。でも経験では相手の方がはるかに上だから、やはり現状は厳しいかな」
「いや、それ以外にもあるな」
俺がそう断言すると、フィリスの目がとらえてくる。
「それは何ですか? そして根拠はあるんですか?」
「あぁ」
断言した上で、答えとなる単語を言わせてもらう。
「簡単な話。兵士たちの士気さ」




