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ゲーミフィケーション・ゲーマーズ  作者: 夢物語
~2日目~
15/26

15、魔物から始まる別れ

「分かったよ。そっちの件は俺に任せてくれ」


 ノランが頷いて、俺が説明した計画通りに行動してくれることを約束してくれた。

 門番も弓矢を構えなおしている。しっかりと弦を確認して、計画への意気込みを見せてくれていた。

 二人とも、説明した内容にも関わらず冷静だ。


「この村も好きだからな……そろそろ魔物にはご退場願おうか」

「この考え、上手くいくといいんですが……」

「出来ることではある。問題は魔物をそれで倒せるか、だ」


 門番が冷静に、俺の作戦についてを評価してくれた。

 相手が未知である分、このやり方が効果的かなんて分からない。

 しかしここはリアルでもあり、ゲーム的要素もあるのだ。

 それに賭けるしかない。

 先ほど拾ったエミリーの銃を片手できつく握りしめ、そして不安を勇気づけるためにも、倒れているエミリーを見た。


「エミリー……」

「お仲間さんは後で介護の人が来るんだ。今はヴォートルに集中しろ」

「……あぁ」


 やるしか……ないんだ。自分が、この手で。


「じゃあ、一足先に伝えに行くとするよ」


 ノランが先に行動していくことを伝え、村長のところへと向かっていく。

 あっちは多分上手くやってくれるだろう。


「問題は……」


 こっちしかない。魔物の方に目を向けて見てみる。

 迷いのない動きで、畑の中へ突っ込んでは、踏み荒らし、暴れている。

 やはりそこは変わらない。

 相手にとっての情報に変わりはない。問題はそこではなくて、


「本当にあいつを引き寄せられるかだろうな……」


 隣で同じことを考えていたのだろう。門番が弓を手にしつつ、悩ましげな表情でそう悩んでいたのだった。


「大丈夫だ。今回の相手の行動も以前から変わらない破壊行動だから」

「それはパターンとして考えて大丈夫なのか?」

「大丈夫……だと思います」


 どちらにせよ、このままだと動きようもないのが目に見えているのだ。

 そして何より時間があまりない。エミリーや村の状況は悪くなるばかりなのだから。

 それなら、賭けるべきことをしよう。


「まずは、よろしくお願いします」


 頭を下げると、門番は既に弓矢を構えたのであった。


「行くぞ……!」


 弦を最大限まで引き絞らず、緩めた弱々しいモノで抑える。

 彼は歩いている魔物に向けて弓矢を放ったのであった。

 しかし、当然威力もない矢。山なりのようにして軌道を描く矢は、歩く魔物の身体にさえ当たらない。

 そのすぐ横を、駆け抜けるかのように、矢は通り過ぎて行ってしまう。


「これでいいはずだ……」

『グゥオオ!』

「……よかった。やっぱり単純だったな」


 そう。それが良かったのだ。

 ゲームでいう、敵が動く理由。それは相手を認知してから、行動することがAIとしての基本だ。それからどのように行動するかの判断をして、動き出す。

 アクションゲームでもそうだが、オンライン戦とコンピュータ戦で違うのは反応の速さではない。コンピュータ戦での単純さは無くなる。

 相手の出方を予測し、先に行動する。それが大きく違う。

 逆に言えば、コンピュータ相手だと事前や予期といった事が少ないのだ。それが単純なモノだと、なおさら。


「まずは掛かってくれたというところだ」


 魔物はというと、矢をかわすことも、防ごうとした行動もしていない。

 通り過ぎた空間に噛みつくようにして、敵の動きを止めることが出来た。


「まさか……本当にあんなのを攻撃するなんて」

「今までは、対象を認識する前に消えてた。ああすることで、敵は攻撃対象の存在を知れるはずだ」


 とにかく相手にはこれで誘導可能だ。


「次、お願い」

「言われなくても、こいつをとにかく外へ追いやればいいんだろ?」


 にやりと笑って、俺に視線を合わせてきた。

 そしてもう一度、弓矢が放たれる。今度も力ない弓矢が魔物の横を通っていくだけ。

 それでも、魔物は連続性のある攻撃に、敵が近くにいると認識したようだ。

 畑の中にいた魔物は地面を揺るがすような咆哮を上げて、矢が素通りした場所に突進をしていた。勢いをつけ、一気に走っている。

 当然だが、そこに俺たちはいない。

 何も反応のない魔物は、戸惑っているのか、それとも次のターゲットを認識しようとしているのか。

 立ち止まってしまっているのだった。


「村の奥へ向かったのも、どうやら偶然のように見えるな」

「次、早く」


 門番は苦笑いしながら、またも正確な攻撃を仕掛けていた。

 徐々に、魔物は村の奥から先ほどまでいた場所に戻っていく。


「……流石だ」


 伊達に、木の柵でしか村を守れていない門番をしているだけはある。

 今のところ、希望通りの場所に矢は放たれいる。それゆえに相手を誘導出来ている。

 これが相手の目の前に落ちる場合、突進の先には俺たちが待っていることだろう。

 そうなればターゲットを見つけたとして、俺たちを文字通り粉砕してくるのだ。


「このまま、田んぼへと誘導してくれ」

「あいつらは、来てるのか?」


 それはノランがいかに早く出来るかどうかだ。更に言えば、説得出来るかにかかっている。

 とにかくだ。俺たちがこいつを誘導出来ていないと意味がない。


「俺たちも一緒に歩く」


 魔物と距離を保ちつつ、そしてかつ物音を立てないように慎重に歩みを進める。

 家も壊され、遮蔽物もない平地。そんなところで魔物を見ながらの並走。

 いつこちらに向かって襲ってくるか。そんな事も頭によぎる。

 焦って逃げたくなる気持ちを抑えて、歩いているのがやっとかもしれない。

 門番が弓矢で、標的を誘導している間、俺は護身用の銃をずっと握っているのだった。

 そして、目的地である田んぼに着く。

 ゆっくりと移動していた先を見て、門番は口角を少しだけ釣り上げていた。


「さすが、俺たちの村……」


 魔物とは田んぼを挟んでの対面の縁。俺たちから見れば右手。

 そこに並べられたおよそ50人程度の天人、人間、獣人が真剣な面持ちや、恐れているような表情で待っているのであった。全員が自警団でもない。農民だった人、老人だっている。

 村のほとんどをかき集めたのだろう。村人たちの守りたいという強い意志を感じられた。

 そしてど真ん中で腕組み、こちらに笑い掛けている人物がいた。


「……お前の仲間は、偉く堂々としているな」

「仲間じゃないんだが、まぁ自分で上出来だとか思っているんだろう」


 とにかく最後の一矢だ。そう目で伝えて門番に伝える。


「これで、行け!」


 力の籠った声掛けの割には力のない矢がまた飛んでいく。

 魔物は何度となくされてきたことを、同じように繰り返す。

 ……そう思っていた。


『ウウゥ……』

「ん?」


 いつもなら構わずに攻撃のための突進をかましていたことだろう。

 しかし、田んぼを目の前にしてその足は立ち止まってしまう。


「どうした……早く突っ込むんだよ……!」


 お願いをしても聞いてくれない。ここに来て勇み足となり、動いてくれなかったのだ。


「どういうことだ?」

「分からない……何かを恐れているというのか?」


 まさか策略に気付いたといった直感的なものではないはず。そうであれば道中に方向転換して攻撃されていただろうから。

 なら、水のあるものに何かかわそうとする処理でも組まれていたのか。


「まさか、そんな……」


 これでは上手くいかない。

 あいつを田んぼに入れなければこの計画に意味はないのだから。


「くそがぁあ!」


 自警団の人達が危険だと感じたのかもしれない。

 村の人達を庇うためか、それか田んぼに突っ込ませるためか。

 田んぼを回り込んで、攻撃を仕掛けに行こうとしていた。そして他の自警団も釣られるように動き出す。


「おい、やめろ!」


 ジルディアの言葉に耳を傾ける人がいない。それだけ距離が離れていたのもあるだろうけど、何より自警団の険しく、恐れ、引き攣ったような顔が全てを語っていたような気がした。

 魔物はターゲットを認識してしまう。こうなってしまえば魔物は全てを壊すまで次のターゲットに移ってくれない。

 戦闘不可避。田んぼを迂回するようにして、目の前で攻防が繰り広げられようとしていた。


「くそぅ! 想定外だ……」


 まさかそんなところでバグが存在するとは思わなかった。

 とにかく次だ。次の工程を創り直さないといけない。

 その前に、あの人たちをどうにかしないといけない。


「状況は悪化だ……!」

「……あの馬鹿野郎どもが!」

「おい!」


 隣でジルディアがそう吐き捨てて、駆け出していた。

 何か策があるわけでもないのに、味方を助けようと必死になる姿。

 何という蛮勇だろう。


「攻撃が!」


 自警団は敵と対立するように槍を前に出して、構えている。

いつか見た光景。どう考えても、それでは防ぎきれない。

 それもお構いなしで、ヴォートルは飛び掛かろうと土を蹴り上げようとしていた。

 自警団を庇うように、直進して割って入ろうとするジルディア。


「どうしようもない……のかよ!」


 エミリーの時と変わらない。ただの繰り返し。

 自分では、やっぱり無理だったのだろうか……。


『アァァ……!』

「……え、今度は何だ?」

『グアァアアァ!!』


 まただ。また相手は呻き、苦しんでいるように見えた。

 真ん中に立ち、ジルディアが両手を広げて攻撃を受け止めようとしていたにも関わらず、敵は飛び掛かろうとするのを止めて身体を揺らしているのだった。

 まるで何かを、抑えているようにも見える。


「コロロ!!」


 その時である。

 名前を呼ぶ声。それは幼い舌足らずな声。それも若干震え、泣き声にも聞こえてしまいそうな呼びかけだった。


「もう、もう……やだ! コロロはそんなこと、怖いことしない!!」


 声の場所は自分たちの対面に位置する。村人も急に現れた人物に目を丸くしていたのだった。

 小さな体躯。遠いため、更に小さく、7、8歳の子供に見えるのだった。

 華奢な身体は布きれのようなマントで隠され、顔を隠すよう被っている。

 黄色のスニーカーは土で汚れ、心なしか、両手は奮い立たせるように強く握りしめられているのだった。


「やめてよぉ! コロロぉ!!」


 そんな彼女が必死に叫んでいると、魔物の方に動きがあった。


『グァ……』


 先ほどよりも大きな挙動、制御の利かないロボットのように足元がおぼつか無く、そして不安定な体勢ばかり取っていた。

 少女はその間もずっと叫んでいる。

 呼びかけるように、悲願するように、ずっとだ。


――――ザバーン


 ヴォートルはよろめいた拍子に田んぼのとなる場所で足を滑らせたのだ。

 田んぼに突っ込み、身体の半分が水の中に入る。

 皆が息を飲み、そしてほぼ全員がこちらを見てくる。


「ユウマ!」


 どうするべきかなんて分かりきっている。


「お願いします!!」


 村人の人達はその言葉をきっかけに動き出す。

 両手を前に出し、目を閉じる。ある者は田んぼの水面に触るようにして、ある者は立ったまま何かを念じるように。

 そしてすぐに、水の表面に変化が起きる。

 田んぼの縁。そこの近くの水面が白く、凍っていく。

 それは波紋のように広がっていき、やがて田んぼ全体を覆う形となって、固まったのであった。まさにあっという間の出来事。

 これがリアルの現象を用いて、そしてあり得ることのないファンタジーで出来た魔法。

 そう、氷の魔法攻撃。

 刺々しさはなくとも、相手を苦しめるのに十分な威力を持っているはず。


「すごいな……」


 しかし、これが正法と思い知らされた気がした。ゆっくりと時間をかけて出来上がる水の凍結をここまで早く出来るなんて。

 エミリーとお湯を作る際の話を思い出してしまう。

 やはり水に干渉することで可能だったか。物を媒体に何かを派生させる。

 その力こそが正法なのだろう。


『ガ、ガ……』


 ヴォートルはと言うと、セメントで固められたかのように固定されてしまって、動けないでいたようだった。身体は横向きで、顔だけは何とか出した状態。

 何より回復の膜はかなり薄くなっていた。もはや黒い靄が消え、茶色の毛並みが見えていると言ってもいい。

 自警団たちのいる場所まで歩くと、隣から肩を叩かれる。


「やったな、これで終わりだ」

「……あぁ」


 いつもならフラグなのだろうけど、今回はこれで終わりだろう。


「まさか、本当に膜が消えるなんてな」

「今は怪我をしたことでその回復に追われていることだろうな」


 普通の魔法なら、これでダメージとして計算されるだけで後処理がない。ただここが現実でもあるように、後遺症として、凍傷とった怪我をしてしまう。

 そして、それは外部の影響でしかない。

 零度を下回ることはないが、急激な体温変化は身体にとって毒だ。

 それは毛や魔法で固められた動物だろうが、直接干渉されては同じ。今頃は回復の膜も、一生懸命だろうが、身を守ることなく、己の体力削られているだけだろう。

 現実的魔法。この攻撃はそう表現したらいいかもしれない。


「時間がないからな。早くした方がいい」

「分かっている」


 後は自分の手に持っているエミリーの銃で撃てば確実に殺せる。膜を突き通し、息の根を止めることが出来るだろう。

 だからこそ、だった。

 俺は引き金を引かずに、ヴォートルの遠い先を見つめる。


「……あの子は?」


 先ほどまで必死になっていた少女だ。

 ずっと叫んでいたのに、ヴォートルが凍らされてからは一言も発していない。

 ただ黙って成り行きを見ているだけ。


「あいつ……! やっぱりここに来ていたのか!」

「……あいつって?」

「セレーナだよ! 村にヴォートルを連れてきて、前回も襲ってきたんだよ! くそったれ! 前回よりも酷ぇからな……」

「……そうなのか」


 村長が言葉を止めてしまった内容、今なら分かる気がする。

 そして大体分かった。彼女がどういう存在かということも。

 ならばこそ、引き金を引くか否かについて、迷いはない。

 スケートリングのように変化した田んぼの上を歩いて、彼女のもとへと向かった。


「……う」


 明らかに警戒をし、いつでも逃げ出せるように若干姿勢を落としている。

 そんな彼女のために、二、三歩程度の距離を開けておく。


「最後に、話さなくても大丈夫か?」

「……ぇ?」


 小さな声。驚きと不安を噛みあわせたような声で、彼女は顔を上げたのだった。

 七、八歳ではなさそうだった。マントではよく見えないのだが、クリッと丸い目は純心さと共に、少しだけ考える意思を持ち合わせているように見えた。

 今も目を伏せ、落胆の色がその瞳には映っている。

 それに下唇を軽く噛んでいるし、何か葛藤があるのかもしれない。


「あいつ……ロココって言うんだろ。友達だったんじゃないのか?」


 彼女は俺と後ろにいるロココというヴォートルを交互に見て、それからコクリと縦に振った。


「……ぅん」

「だったら話して来たらいい。大丈夫だよ、何かあれば助けるからさ」

「……そうよ。アニマルゲーマー」


 この言い方、しゃがれたような声になり、力ないが聞き覚えのある声。

 それでも信じられず、振り返ってもなお、少し信じられずにいた。


「エミリー! もう大丈夫なのかよ?」

「以前に……言ったでしょ? やられた数は四、五回しかないのよ」


 それはゲームの話だろうと言った野暮な突っ込みは止めておく。

 村長の肩に支えられ、腕をだらしなく垂らしているだけの彼女は立っているだけでも奇跡に近いのだ。

 気丈に振る舞っているならそれに合わせていこう。


「それよりも……アニマルゲーマー。いえ、セレーナさん」

「……」


 両手を胸の前で組んでいるだけで何も言わない。


「話すのなら、早くしなさい。私は待たされるのが、嫌いだから」


 片手に持っていた銃の感触が消える。光の粒子となって消えたのだ。

 そして次の瞬間には彼女の使える手の方に握られていた。


「どうするの?」

「……」

「わしも、そうすればいいと思うぞ」


 ここで、今まで黙っていた村長が想いを吐露する。


「セレーナ。お前はとても優しい子だよ。そして分かっているはず。今、あいつはとても寂しがっているのではないかの」

「……ぅん」


 セレーナと呼ばれた少女は、小さく頷いた。


「なら、分かるはずだろう?」

「…………うん」

「さぁ、行こう」


 少女は村長の言葉に従うようにして、田んぼの上を歩くことを決めてくれた。

 そのまま四人で歩き、ヴォートルの下へと向かう。

 その際、村長が村人全員へ離れるように指示を出していたのも、少女への配慮だと分かる。それは門番、自警団でも同様だった。


 そして辿りついた先にぽつんと取り残されたヴォートルは、既に弱っていた。

 水の急激な変化、そして体温を奪われ続けているためか。もう息は少なく、最期の瞬間ともいえる。


 光を見なくなった者は、やがて身体が光を不要と感じ、その耐性がなくなっていく。もしかしたらこのヴォートルも同じか。

 外部からの攻撃全てを回復させるようになってしまった反面、内部での攻撃には弱くなってしまった。そんなところなのかもしれない。


 怪我といった外傷部分以外の回復が出来ずに、意外なところからの攻撃で終わってしまう。先ほどまで見せていた強い眼光も、いつの間にか消えてしまっているのだった。


「コロロ……」


 少女はヴォートルの頭を撫でる。

 先ほどまで、逆立っているように見えていた毛も、静かになっていくのが見えたような気がした。何故だろう、ヴォートルであるはずなのに、その目は穏やかな目をしていた。

 そして口の端から漏れた声でヴォートルが呻く。

 それを、彼女は何度も頷いて話していたのだった。


「ごめんね。今回は助けられなくて……」

『ガァ……』

「寒いの?」

『クゥ……』

「そう……眠いんだ」


 彼女はゆっくり頭だけを抱き寄せた。


「じゃあ、お休み……」


 大切なモノを抱えるようにして、温めるようにして、ギュッと強く。

 忘れないようように抱きしめていた。

 やがて、ヴォートルは静かに目を閉じる。それからは今まで同じ、消えゆく瞬間である。

 ただ一つ、他のヴォートルと違うのはこの子がいること。

 たった二、三個しか言えなかった言葉でも、聞いてあげられる子がいたこと。

 だからだろうか。

 消えゆくその時まで、ずっと抱きしめられたヴォートルは、落ち着いているように見えていたのだった。


「……さよなら」


 消えて無くなったその空間を、少女はジッと見つめている。


「さて……感傷に浸るのは、それぐらいでいいわよね?」


 エミリーは銃を消し、改めたように言っている。

 少女も分かっていたのだろうか。ゆっくりと立ち上がって、こちらへと振り返るのだった。


「……」

「悪い。俺たちはある事を確かめに、ここまで来たんだ」

「……はい」

「アニマル盗難事件、君がやったんだろ?」

「……はい」

「じゃあ……何でそんな事をしたのか、それにどうやっているのか。それら全てを、教えてくれるか?」

「……」


 彼女はコクリと頷いて、そして近いから聞き取れるぐらいの小声で喋るのだった。


「……ぅん」

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